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3.破れる

 昼休みに席をがたんと、くっつけて友達とお弁当を食べる。よくある、授業が難しいとか、あのテレビの誰々が〜とか、お弁当美味しそうだね〜とか、そんな話をしていた。

「……そういえば、晶子のさー、幼馴染__」

「あー」

「え?なにかあったの」

明るく、テニス部で友達も多い佐藤(さとう) 朱里(あかり)と、優しく、スポーツ万能で、結構にぶいところがある花風(はなかぜ) 稟月(りつき)、このクラスで知り合った仲の良い友人である二人。


 友人の多さや本人の人柄や興味の影響で、情報通の朱里と、おそらく病気や怪我などの心配をしているであろう稟月。なにも知らない稟月に朱里が雑談の調子で、丁寧に説明をしている。この軽い感じ、楽しいのよね。

「ふむふむ、なるほど」

一通り説明は終わったらしい。そこまで話あったかなぁと、私は全然話は聞かず、食事を進めていた。

「いやーさっき、()クラスの友達から聞いたの。彼女の子が幼馴染の晶子とさ、もう会うな〜みたいなこと言ってたらしいって」

この手の話をしたがらない私に、朱里は話を切り出した理由を説明するかのように溜め息混じりに言う。きっと言いづらさの溜め息だろう。

「それは知らないねぇ」

「ん〜、でも、そうねぇ…。不安なのかなぁ。二人って仲良いから」

朱里は黙っており、肯定も否定も入れない。私は「さあねぇ」と返した。

 昨日の今日でこんなに話が進むとは、恋愛って凄いんだねぇ。……生まれてきてから何十年の仲が、ぽっとでもぽっとでに負ける、配慮するってのはなんか変な気が、まぁどうでもいいが。


 時間も進み、昼食も食べ終わり、次は歯磨き__となるのだが、私たちの話は続いていた。


 すると、教室がなにやら少し騒がしくなる。が、昼休みだそういうこともある、と見ない気でいたのだが、ともに食事をする二人が私の後ろ、騒ぎの方を見ている。なにかと、振り向ければ__馨らしい。

 静かに、ごく当たり前のように、ずんずんとこちらに向かって来ていた。こちらは座っていて、あちらは立っているためにそう感じたのだった。

「別れた」

「……? そう」

なんで?とか、早すぎる……などの気持ちより、納得感があり、まあそんなもんかと思う。にしてもだがと、馨を見る。朱里は邪魔しないようにと手を口に当てており、きっと当てていなければ、なにかしら口から飛び出していたであろうことは明白で、稟月は「おや」なんて声に出していた。周りは、なにやらざわざわ話しているようだ。他クラスの人が教室に来たからだろうか。

 いや、ちがうか。そんなにこいつの恋愛事情のどこが気になるんだ。

「なんでか聞かないの?」

「いま?」

馨はそうだと言うようにこちらを見ている。

「聞かないよ」

面倒くさい。なにが理由であれ、ここで話せば私が関わってしまう。面倒ではないか。

「……まあ、そんなもんか」

「……うんって言いたいけれど、一ついいかな」

なんだろうという顔をしている馨。

「なぜ、ここに?」

「なぜって、別れたから」

……色々言いたいことはあるが、まあいいや。もう、どうせ伝えるには場所が合わない。あとにしよう。

「わかったー」

適当な呆れた返事をしたのも、つかの間、ある女性が、かこんかこんと音でもするのではないかという足取りで教室に入ってきた。

「も、もう!やはり、ここ」

誰だろう。ああ、一組の。これは勝手な偏見だが、才色兼備みたいな人だ。そういえば、馨と同じクラスだったなと思い、私はちらりと目を馨に向ける。えー、なにその態度。馨は面倒くさそうにしたあと、晶子に目を合わせた。えー、これは、全部私にやってもらおうとしている。んー。


「なぜ、貴方達、そんな距離で、ち、近すぎます!」

距離感?私は文字通り、頭にはてなを浮かべる。

「な、なんですの?」

思ったより、お嬢様みたいな話しかたをする人だ。なんですのとはこちらの台詞でもあるぞ、お嬢様。

「えー、馨の元……付き合っていた方ですか?」

言い回しを考えたところ、思ったより堅くなってしまった。


 一組の嶋田(しまだ) (らん)は言葉を失っている。あー、言いたいことあっただろうに。決めながら、歩いてきただろうにねぇ。この二人、こういうの共有しないからな〜と朱里はその様子を観劇のような気分で見ていた。先ほどの稟月への説明では、このことは言わなかったし、言っていても晶子は聞いていない可能性の方が高かっただろう。


「し、知らないのですか?」

急に小動物みたいに……例えるなら、濡れたハムスターのようだ。

「ご、ごめんね?」

あまりの弱々しさに私は謝った。

「なにに対してですの」

「知らなかったこと」

晶子は確かに嶋田蘭の目を見ていた。蘭はたじろぐ。馨はどこか誇らしそうという異様といえば異様で、想像の範囲の結果となっていた。それはこの三人を知っているならば……の話なのだが。

 嶋田蘭は一見、華やかさを感じる少女だが、今まで真正面から捉えられたことがないのか、正面からが弱い少女であった。

「な、なぜ……」

あ、まずいなぁ、泣くかも、この方。あー。

「こっちきて」

「え?」

晶子は蘭の手を取って、教室から出た。その姿はさながら__

「……あ」

「さながら王子様ね」

「どーするのさ、馨ちゃん」

馨、稟月、朱里と続けて発した。

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