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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

人魚姫とクーデター

作者: 稀代のホープ
掲載日:2026/01/24

昔々、あるところに、人魚姫がいました。

その名の通り、人魚の姫だった彼女。でも、中身は人間の思うような、お淑やかな人魚ではありません。

「私、いつか人間の国に留学して、帝国学を学んで、世界征服をするのよ」

 家庭教師のガートルードに、将来の夢を聞かれると、姫はいつもこう答えます。

 そして、ガートルードの返事も、いつも同じです。

「お嬢様、世界征服はすべからく時代遅れになっていますわ。今の流行りは、ポップスと人工食料、地球温暖化対策でしてよ」

 そう言って、幾何だの、古典だの、語学だのをガートルードは姫に教えるのでした。

 でも、姫は世界征服を諦めていませんでした。その思いは、特に興味もないポップスを聞かされるたび。世界の食糧の人工化についての記事を渡されるたび。地球温暖化による人魚の苦悩に関して、作文を書くように言われるたび。

 姫の思いは、どんどん強くなっていきました。

 やがて、姫は具体的な世界征服の計画を立てることにしました。


 手始めに考えたのは、人魚の国の征服。

 姫は唯一の王様の子どもでしたので、王位継承権はダントツの1位です。つまり、いつかは王様になります。

 でも、実際に王位を継承できるのは、何百年も先のこと。王様は至極健康でしたし、人魚の寿命は、人間の100倍はあるのです。

 でも姫は、じっと待つのは大嫌いでした。即断即決の性格でしたし、歳をとって丸くなったら、世界征服をする気がなくなってしまうかも。

 今すぐの行動が、求められます。

 王様の隠居以外で、王位を手に入れる手段は、一つしかありません。

 王位の簒奪です。

 でも、人魚一匹だけで王位の簒奪をするのは、大変難しいことを、姫はよく理解していました。

 そこで姫は、他の国に協力を求めることにしました。

 まず考えたのは、隣の雪人間の王国。

 高い製氷技術と、戦闘力が持ち味の国です。

 でも、雪人間の国の王は、人魚の国の王様ととても仲良しで、協力してもらえるようには思えません。

 次に考えたのは、深海のタコ人間の王国。

 美しい容姿の若者が多く、エンターテイメントと観光業で栄えています。

 でも、彼らには戦力がありません。人魚の国を征服するなら、ある程度の軍事力を持つ国と協力したいところ。

 最後に思いついたのが、人間の国でした。

 人魚や雪人間、タコ人間とは交流はなく、軍を持ち、何より姫が行ってみたい国ナンバーワン。

 この国しかない、と決め切った姫。翌朝、ガートルードからの誕生日プレゼントである、とっておきの発煙筒を持って、王様のところに向かいました。

「お父様、私この国を征服するために、人間の国と同盟を結ぼうと思うの」

 王様は首を傾げます。

「この国は、私によってすでに支配されているのだが……」

 姫はこくりと頷きました。

「そうよ。私は今からクーデターをおこそうとしてるんだもの。私以外の誰かが支配していないと、クーデターにはならないわ」

 王様は姫の言葉をよくよく考えました。そして秒針が一周したころ、ふむ、と頷きました。

「なるほど。其方は世界征服の手始めに、この国を選んだのだな。私が王の位を譲るまで待ちきれず、他の国と同盟を結んで、私を王の位から追い落とそうとしているということか」

 さすが親子。意思疎通はバッチリです。

 姫は「ええ。」と頷きました。

「同盟先は、もう人間の国に決めているの。だから、私は今から彼方へ留学するわ」

 王様は考え込みました。姫の留学先には雪人間の国を考えていましたが、人も雪人間も大した違いはないでしょう。姫による王家簒奪の計画も、姫にいつかは譲られる王の位ですから、大した問題はありません。それに、姫が小さい頃から追いかけている夢を叶えるのは、いいことです。王様はそばに控えていた大臣を呼び寄せました。

「何でしょう、陛下」

「姫が人間の国へ行くそうじゃ。陸への航水チケットをとっておいてくれ」

 ははっといって、大臣がスマホを取り出すと、慌てて姫が止めました。

「ダメよ、お父様。私はクーデターのために人間の国へ行くのだもの。誰にもバレないように、非合法な手段を用いなくては」

 王様は一人反省しました。姫の言う通りです。クーデターを起こす高貴な姫君が、公的な航水手段を使っていいわけがありません。でも、王様は反省すると同時に、心の底から感動しました。姫は、クーデターというものを、王様よりもわかっているようです。姫のクーデターは、必ず成功するに違いない。そう思うだけで、王様の胸はいっぱいになりました。

「そうじゃの。それでは私も、クーデターされるに相応しい王として振る舞っておく」

「ありがとう、お父様。次に会うときは、お互い軍隊と一緒のことを願うわ」

 そう言って、姫は王様のほおにキスをし、手に持っていた発煙筒を投げました。

 王様と大臣が、ゴホゴホと咳をしている間に、姫はあっという間に王宮から去っていきました。


まあ、人間の国って、暑いのね。

 マフィアを通じて、航水機の荷物に忍び込むのに成功した姫は、陸に着いたとき、初めて感じる「空気」に驚きました。

 水中とは違って、腕や足は軽く早く動かせます。一方、空を目指してみようとしても、上には一メートルほどしか泳げません。

この足ってやつも、不便ね。きっと、足のせいで上には泳げなくなってるんだわ。

 姫は、たった今飲みほしたばかりの、タコ人間の国で買った足生え薬を見つめました。

 パッケージには、「三日間、メキメキ生えます。注 刺すような足の痛みあり」と書いてあります。

「お前の声をくれたら、この薬をやろう」と言ってきた、太ったタコおばさんの店は避けて、正解だったな、と姫は考えました。

旅先は、お土産屋さんだと割高だから、騙されないよう気をつけるようにって言っていた、ガートルードは正しかったんだわ。ドラッグストアでは、貝殻十五枚で、この薬を売っていたもの。あのおばさん、今流行りの「アシエット詐欺」のやり手だったのね。全く、クーデターを成功した暁には、ああいう手合いは撲滅させないと……。

 そんなことを考えていると、一人の男が、声をかけてきました。

「そこのお嬢さん、ちょっと手伝ってくれますか」

 どうやら、大きな荷物で前が見えないようです。人魚は、彼の持ち物を半分持ってやりました。

「ありがとう、お嬢さん」

 すると、通りすがりの女の子が、「どういたしまして」と言いました。

 荷物を持った男は、女の子の方を向いて、言います。

「ありがとう、君が荷物を持ってくれたんだね。お礼に、王子たる僕と結婚しよう」

 まあ、と通りすがりの女の子は、頬を赤らめました。

 呆れ返った姫が、声をかけます。

「ばか、荷物を持ってあげてるのは、私に決まっているじゃないの。腕力どころか、視力も思考力もないわけ?」

 王子は驚いた顔で、女の子と姫を見比べました。女の子は、何も持っておらず、「やっちまった」という顔をしています。姫は、荷物を持ち今にも王子に噛みつきそうな顔をしています。王子は姫の荷物を覗き込みました。ライフル、リボルバー、戦車のミニチュア……。間違いなく、王子が持っていた荷物です。

 王子は手を二回叩きました。

 その途端、黒い服を着た二人組の召使が、音もなく現れました。

「この荷物を持たない可愛らしい女性を、詐欺師として連れて行ってくれ。裁判は明日で、判決は無期懲役だ」

 二人の召使のうち片方が、女の子をお姫様抱っこしました。もう一人が、隣で即席の逮捕状を読み上げました。

「午後2時35分、現行犯の詐欺容疑で逮捕する」

女の子は、「あの勘違い王子が悪いんじゃない!」と悪態をつきました。が、すでにお姫様抱っこされてしまっている以上、もうどうしようもなく、大人しく連れて行かれました。

 女の子と召使をにこやかに見送ると、王子は姫の方を向き直りました。

「さて、君が僕の荷物を持ってくれた人だね。お礼に、王子たる僕と結婚しよう」

 姫は、首を横に振りました。

「お礼には、結婚より軍隊が欲しいわ。私、クーデターをするつもりだから」

 王子は少し考えました。

 国境騎士団は、今は熱帯雨林にツチノコを探しに行っています。五十年前とは違い、現在は徴兵制度が廃止されてしまっているため、農民兵軍はありません。残っているのは、近衛騎士団だけです。でも、王子の近衛は、今では一九人しかいませんでした。

「近衛騎士団ならいるけど、今は十九人しかいないんだ。それでも構わないかい?」

 姫は眉根をギュッと寄せました。

「最低でも二十人は欲しいわ」

 王子は悲しい顔で頷きました。

「お礼をすると約束したからね。仕方ない。僕が近衛騎士団の一人として、軍隊の中に所属しよう」

姫は礼儀正しく「ありがとう」と言いました。

王子はその日のうちに、近衛騎士団を集め、主人が王子から姫に変わることを伝え、仕立て屋に王子の着るための近衛服を仕立てるよう依頼しました。

 

 翌日。

 姫は手に入れた近衛棋士プラス王子とともに、人魚の国へ向かいました。

 本当は、さまざまな人間の国の習俗を見てまわりたかったのですが、クーデターをするには早ければ早いほどいいという事を、賢い姫君は知っていたのです。

 王宮に着くと、王はすでに自分の軍を用意し、クーデターされるに相応しい王となるために、税率をマイナス五%から、186%に上げるよう、大臣に命じているところでした。

 姫は、王様の悪王ぶりに感心しながら、近衛棋士とともに玉座へと近づきました。

 王様は姫が王の首に剣を突きつけるまで、姫と近衛騎士に気づいていないふりをしました。

 大臣もマナーを気にかける礼儀正しい人でしたから、王様に従って、姫と近衛騎士の一軍から、目を逸らしました。

「悪王よ、其方の時代は終わった。これはクーデターだ!」

 王様の目の前に辿り着いた姫が、勇ましくいうと、王はさめざめと泣きだしました。

「命だけは、命だけは!」

「よかろう」

 姫は鷹揚に頷きました。

「我々はお主とは違う。寛大な処置をしてやる。おい、近衛隊長。王を、いや元王を牢屋まで連れて行け!」

 近衛隊長となった、人間の元王子は頷きました。

「かしこまりました、陛下。おい、元王、どこに牢獄があるか教えろ!」

 そう言って、王子はクーデターの軍隊長に相応しい言葉遣いと振る舞いで、王の案内に従い、牢獄へ向かいました。

 姫はまだ温かい玉座に座り、辺りを見渡しました。

 いつもの見慣れた光景ですが、一つだけ違う点があります。それは、この景色の持ち主が、姫であるという事です。

「新王よ、これからどうされますでしょうか」

 大臣が、恭しく姫、いや王に言いました。

「そうね」

 姫は言いました。

「まずは、税率をマイナス5%に戻してちょうだい

なぜこれを書いたんだろう?と思いましたが、勿体無いのであげます。

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