必要なのは決意だけでした。
〈前回までのARASUZI〉
クリスタの思いを知り、互いに励まし合いながら2週間が経ち、受験会場にきていた一行。そこで【契約】コントラ・フェアトラークと対面し、その実力差を思い知った。なんやかんやで筆記試験が終わりどちらも好成績で通過。さて、次は実技試験だ!
コントラ様の案内で実技試験の会場についた。
することは至ってシンプルだった。
【万空】様によって作られた一人一人の空間があり、その中に設置された計20体の魔物を制限時間30分以内に倒しまくること。30分以内に倒しきれた人はかかった時間で倒し切れなかった人は30分までに倒せた魔物の数で評価されるそうだ。
さっそく、魔法使いの受験生は各々空間に入っていった。
空間に入っただけで分かる【万空】様の圧倒的な実力、どうやったって壊せそうにないし、そもそも込められてる魔力量が尋常じゃなかった。
ティアも思わず俺の体から出てきて「芸術的です…」と声を漏らした。多分、この空間の構造についてだろうと察した。
そして、先程と同じようにコントラ様の合図で戦いの火蓋は斬られた。
「我、龍王より力を授かりし者より汝に命じる。真の力を解放し、我が力の媒体となれ!」
毎回の如く詠唱をし、ティアを巨龍にした。
この2週間の中で力を流す際の詠唱はある程度省略できるようになったがティアの変身に関してはそもそも省略してはいけないらしい。
「【炎龍・イグニス】!」
炎の咆哮を放ち、魔物を爆撃した。そして、煙によってできた死角から俺は魔物に急接近をして【雷龍・ボルセイア】の力で思いっきり魔物を殴った。
これは2週間の調査の中で色々ティアの使い方を模索した中で得た産物だ。ティアを拳に入れて龍の力を流すことで可能にした芸当だ。
そして、思いっきり魔物を殴った俺の隙をついて魔物が攻撃してこようとしてきたが、手から出てきたティアの尻尾の薙ぎ払いで一掃した。
「残りは5体ですよ、主様。2体は上空を飛行し雷魔法のチャージをして、2体はそこの草むら、そして一体は潜伏魔法を持つ魔物ですね。見えませんがそこにいますね。まだクリア者は出ていません。ただ、筆記試験1位の方がもうすぐ倒し終わりそうです。」
「まったく、相変わらず頼りになりまくるな、ティアは。」
「身に余るお言葉ですよ。ご飯一回奢りで十分ですよ。」
「そんなちゃっかり!?」
この2週間の間で俺達は大分仲良くなり、ティアも冗談を言うようになっていた。
「さて、雑談はここまでにしましょう。」
「ああ、そうだな。【龍王・シーラ】」
その瞬間、その空間内はゆっくりになった。
【龍王・シーラ】の能力は〈時間加速〉〈時間鈍足〉
今は〈時間加速〉で俺の速度を極限まで速くした感じだ。
そして、俺はティアを拳に入れて残り5体を全員グーパンした。
「受験者リュウキ、タイム5分27秒!」
試験官の声が響いた。それに続いて筆記試験1位のやつも空間から出てきて
「受験者ハルモア、タイム5分45秒!」と言われていた。
本当にギリギリだったんだなーと思っているとコントラ様と目が合った。だが、コントラ様はすぐに目を閉じた。
「力のの制御、心配だったけど何とかなって良かった。」
「練習の賜物ですね。主様。」
「クリスタは大丈夫かな…?」
「主様。きっと大丈夫ですよ、彼女なら。」
一方その頃、クリスタはというと…
「はぁ、はぁ、やっと5体。もう15分は経ってる。急がなきゃ。」
クリスタは火の魔法を10連発した。しかし、10発も外してしまった。
「く、当たれば1発で倒せるのに全然当たらない…どうして…」
彼女の脳内にいくつもの記憶がよぎった。
「このクリスタ家の恥晒しが!!」
「新しいご子息様、魔力が少し多いだけだそうよ…。」
「え、この家に生まれてそんなのって誰得なの〜。」
「お前のような一家の面汚し…さっさと消えてしまえ!!」
クリスタは涙を流しながら何度も魔法を使った。
【ヘルメアの三要素】の一つ[魔法操作力]、これは術者本人の精神状態が影響することが多いという。クリスタはこれまでの仕打ちにより精神が不安定でこれが自然と落ちていた。
「なんで!なんで!なんで!私は結局一人じゃ何もできないの?誰でもいい…誰でもいいから…私が必要だって…この世界にいてもいいって言ってよ…。」
そこでクリスタの脳内にある記憶が流れ込んだ。
「俺は短い間だったけどクリスタのことを近くで見てきた。俺は貴方を尊敬している。だから…負けるなよ…。」
その記憶が頭に流れたときクリスタははっとなって涙を拭いた。
「そうだ、私を必要としてくれる人がこんな私を尊敬できるって言ってくれた人がいた。他の全員が敵になったっていい!!
私はただ目の前の一人の言葉で立ち上がってみせる。リュウキ…私、絶対に…負けないから…」
そしてクリスタは火の魔法を10発放った。その魔法は全て敵に命中した。残りの5体の魔物も雷の魔法であっという間に倒した。
そして、クリスタは空間から出てきた。
「受験者コイノン、タイム26分15秒!」
俺はその言葉を聞いた瞬間、クリスタに駆け寄った。
「やったね、クリスタ!やっぱり君はすごいよ!」
「そんなことないよ…それから…リュウキ…」
「ん?」
「ありがとね!」
俺はなんのことかさっぱりだったが
「どういたしまして!」と返した。
するとティアは「何のことですか?クリスタ様」と言いかけたので俺は思いっきりティアの口を塞いだ。
そして、俺達は結果が発表される2日後まで今まで出来なかった分、思いっきりマジカリアの街を堪能した。
出てくる食事は現世では見たことないものばかりだったが、どれも美味しかった。少し味は薄いと感じる人が多い気もするが俺は元々薄味派なのでそこまで問題はなかった。
それ以外にも、ティアが普通に外を飛べるようにいい感じに龍の翼を隠せる物も探したりした。しかし、翼を隠して角もそれっぽいケモ耳で隠したティアはもはや白猫のように見えて猫派の俺は大歓喜だった。
そして2日後、コントラ様の口から50人の合格者が告げられた。実技で良い結果を残した俺とどちらも優秀だったハルモアという人物は特待生として他の魔法使いがなるEランクより一つ上のDランクになった。
クリスタも無事合格したということで一緒に飲みに行った。
もちろん、こちらの俺は未成年のようなのでお酒は飲めなかった。そもそも酒をそこまで飲むタイプでもなかったが…クリスタももちろんジュースだった。
「これから私達は違うランクだから別々になっちゃうけど、お互いに頑張ろうね!」
「ああ、俺も【万空】様に会えるように頑張らないとな。クリスタ、俺に色々教えてくれてありがとう。受かったことの大半はクリスタのおかげだな。」
「そんなことないよ。リュウキが一生懸命頑張ったからよ。それに私もリュウキがいなかったら合格出来なかったと思う。」
「それじゃ、お互い様ってことで褒め合いはここでやめようぜ。少しこしょばいからな。」
「あはは、私は平気だけどリュウキがそういうならね。」
俺達は2時間くらい飲み食いして話したりした。
そして、取っておいた宿に行った。今までは金がなかったからクリスタと野宿してたので、久しぶりのベッドに心を躍らせていた。そして、ティアも俺から出てきたベッドで横になっているとすぐに寝てしまった。
俺は外に風を浴びに行ってふと言葉をもらした。
「結局、俺はこうやって人と関わるのか…なぁ、晴夜。俺はお前にちゃんと罪滅ぼし出来てるのかな?」
第4話を読んでいただきましてありがとうございます。
今回で物語全体の導入部分〈魔法教会試験編〉は終了です。
次回からは第二章〈デーモン・デザイア編〉に入ります。
クリスタ推しの皆様がいたら申し訳ないですが…多分、当分はあの子の登場はないです…スミマセン




