昔の傷は癒えぬまま
〈前回までのあらすじ〉
ヨネルナの力とアレテイアの過去を知ったリュウキは宴会を堪能し、一夜を過ごした。
そして、宝玉を取るための試練に赴いた。
昔から周りに合わせて笑って生きてきた。
俺が思い悩んで少し暗い顔をしていると、親は決まって
「こっちも暗くなるんだよ!!チッ、腹が立つな〜!!」
と言ってくる。
そうやって過ごしてきたから「自分は笑わないといけない。」
と思うようになっていた。
でも、笑うのはそんな楽なことではない。
どれほどのいじめを受けて辛くても苦しくても笑うしかない。
そのたびに心は荒んでいき、心がただただ薄れていった。
でも、笑うのを止めるのは尚更、簡単ではない。
ずっと笑っていたから急に真面目な顔になるのは無理だ。
顔に張り付いた仮面をそんな簡単には外せない。
だって、怖さは拭えないから…
でも、運命の出会いで変われる人もいる。
………
高校生の時だった。
俺は学校の近くの公園のベンチで座っていた。
いつもはそこそこ賑わう公園だが、今日は風が強く人はいなかった。
俺は風が強い日が好きだ。この風によって飛ばされる塵のように消えれる気がしたから。
ベンチに座って目を瞑っていると隣に誰かが座った音がした。
俺が目を開けると、その隣に座っていた人は俺を除き込んでいた。
俺が目を開けたことに気づくと話しかけてきた。
「やっほー!僕の名前は晴夜よろしくね、生徒会長!」
そう、当時の俺は生徒会長だった。
俺も”笑って”挨拶をしようとしたが…晴夜は手を俺の頬に当て
「無理に笑わなくて大丈夫だよ、そのままが好きだから。」
と笑顔でいった。
俺の思い悩んでいたことをすぐに理解して話しかけてきた晴夜に俺は同じ学年ということもあり、すぐに打ち解けた。
俺達は放課後に毎日屋上であっていた。
日を重ねるにつれ、俺は晴夜を知っていき、一ヶ月もした時はもう素の自分で話せていた。
晴夜と屋上で話すのは他愛もない雑談と悩んでいることの愚痴だった。
晴夜も大きな悩みを抱えていて、話は思いのほか弾み、俺は毎日がどんどん楽しくなっていた。
[昔は何をしてもダメだったこと]
[小学校の先生に煙たがれたこと]
[中学校でいじめを受けたこと]
[みんなと仲良くなるため努力したこと]
[今度はみんなが自分に謙遜して離れたこと]
全部全部、晴夜には言えて弱音も吐けた。
そんなある日のこと…
「ねぇ、龍希。本当は一人称違うんじゃない?」
晴夜はちょっと意地悪そうな表情をして言ってきた。
「気づいた?元々、”僕”だったんだけど、みんなに合わせて
”俺”に変えたんだ。」
「やっぱり?僕の前では普通の一人称で話してくれてもいいのになー。」
「久しく言ってないから逆に不自然だしやめとくよ。」
「そう?まぁ、言いたくなったらでいいよ。」
「それより、もう閉門の時間だね。そろそろ帰ろうか。」
俺達は校門の前に行った。
「さよなら、晴夜。また明日。」
「バイバーイ!!あ、龍希。」
「ん?どうしたの?」
「幸せになってね。」
「え?それってどういう…」
俺は聞こうと思ったが晴夜は走って帰って行った。
その次の日、俺はいつも通り生徒会の仕事を終わらせて屋上に向かった。
いつもなら、既にいる晴夜だが今日はまだいなかった。
何か用事があるのだろうと思い、勉強をしながら待っていた。
しかし、閉門時間近くになっても来ないので俺は諦めて帰ることにした。
少し残念に思いながら、下駄箱を出て雨が降っていたので傘をさして帰ろうとした時、視界の左端に赤いものがあることに気づいた。
俺はその赤いものを見ると言葉を失った。
なぜなら…それは…間違いなく死んだ晴夜だったから…。
俺は晴夜に近づいて抱き抱えて泣き叫んだ。
それを聞いた教師も校舎から出てきた。
俺は職員室に連れて行かれ、事情聴取をされた。
幸いにも俺の話は信じてもらえ、今日は帰るよう言われた。
俺は傘をさすのも忘れ、ずぶ濡れになりながら帰った。
後日聞いた話によると投身自殺だったそうだ。
………
「なんで…晴夜がここに…?」
「久しぶり、龍希。何年ぶりかな?今では君の方がよっぽどお兄さんだね。」
俺は何も言えずに経っていた。
「僕は逃げることを選択した。
でも、君は逃げることからも向き合うことからも目を背けた。僕との時間は無駄だったのかな?」
「ち…違!!」
「何が違うのさ、それは君が一番わかってることじゃないか。君の行動が僕を殺した。分からないの?」
晴夜がそんなことをいうはずがないと知っていた。
でも、晴夜が言っていることは正しい…いや、少なからず俺は正しいと思っている。
俺が晴夜を殺した。俺が晴夜に余計なストレスを与えたから。
「それにしても、まだ笑って人と接してるんだね。
そりゃ、そうか。君の本当の姿は君の今まで築いてきたものが全部壊れてしまうかもしれないんだからね。」
「や…やめ…」
「君は関わってきた人達を笑顔という名の嘘で騙し続けているだよ。」
「やめて…」
「この…大嘘つきものが…」
晴夜の横にガラス状の板が出てきた。
そこには、ヨネルナ様とアレテイア様とクリスタの姿があった。
「お兄ちゃん、そんな人だったなんて…」パリン!
「お客人、嘘とは紳士の風上にも置けない…」パリン!
「リュウキ…信じていたのに…」パリン!
ガラス状の板はどんどん割れた。
俺は涙を流しながらその場に崩れ落ちた。
「俺は…俺…は…」
もうこのまま晴夜に殺してもらおうと思った。
その時——
「お兄ちゃんは優しいからね。」
第14話を読んでいただきありがとうございます。
第二章は後1話か2話です。最後まで読んでいってください。




