年賀状は届かない
……僕は友達が少ない。
だからお正月は少し悲しい。
兄あての年賀状がたくさん届いているのを見ると、どうしても比べてしまうからだ。
それでもお正月は好きだった。ごろごろできて、勉強しなくてよくて、おせちも美味しくて。
炬燵に入りながら僕あてに届いた数少ない年賀状を手にとって。
スマホを片手にお年玉番号を一枚ずつ確かめる時間が、僕は静かで好きだった。
気づけば年の終わりが近づいていた。
僕は久しぶりに紙と向き合う。
久しぶりに年賀状を書こうと思いたったんだ。
……誰あてにしようか。
友達の顔は思い浮かばない。
悩んで悩んで、……結局、兄の名前を書く。
――誠一郎。
「セージ!何を書いているんだ?」
背後から声がして、僕は振り返った。
「手紙だよ」
「変な書き方だな。せめて封筒に入れないと」
「いいんだ。これはこういうものだから」
紙の上には、日本語と、記憶を頼りに描いた門松の絵。
切手もないし、誰も読めない。
お年玉の番号もデタラメだ。
何桁あったかすらもう思い出せなくて、適当に並べた。
それでも、僕は丁寧に書いた。
書かずにはいられなかった。
「それ、誰に渡すんだ?」
「渡さないよ。届くわけもないから」
そう答えて、僕は空を見上げる。
赤い月が二つ浮かぶ空の下、石畳の街を魔法の灯りが明るく照らし、鐘の音が響いていた。
それでも僕は、いつか。
──どうかいつか、元の世界に。




