木枯らしで舞踏会
ミニスカートから覗いた足を冷気が刺す、11月。学校帰り。いつもの、イチョウ並木。
ぽーん、と道端に転がった小石を蹴り飛ばした。綺麗に弧を描いて飛んでいく石は、数回跳ねてイチョウが広がる黄金のカーペットの上に落ちる。そこまで歩いていって、石を見下ろすと、自分の履いているローファーがイチョウの中に浮かんで見えて、私は笑顔を浮かべた。
「ねぇ!イチョウにセーラー服って似合うと思わない?」
顔を上げて振り返り、纏った紺のセーラー服を見せびらかす。後ろからカラカラと音を立てながら自転車を押して歩いてくる柊斗は、そんな私に呆れたような笑みを浮かべた。
「はいはい、可愛い可愛い」
「あーもー、また適当!」
柊斗はいつもそんな調子だった。私の言って欲しい言葉をくれるけれど、それはたぶん、妹のわがままに付き合っているくらいのもので。私ばっかりが柊斗を意識して、舞い上がってる。
柊斗の反応にむくれて見せると、それにもまた柊斗は呆れた笑みを浮かべた。自転車が追いつく前に、私は踵を返してイチョウの絨毯の上を駆け抜ける。ぱらぱらとローファーに蹴りあげられたイチョウが舞う。
「ねぇ、柊斗。すごく綺麗じゃない?」
「はいはい、秋音は綺麗ですよ」
「私がじゃなくて、このイチョウ並木が…」
そこまで言いかけて、柊斗の方を振り返った時だった。不意に後ろからざぁっと木枯らしがふきぬけて、私はミニスカートを押さえる。黒髪が宙を舞い、強風にそっと目を開くと、目の前に見えたのは舞い上がったイチョウたち。ぱらぱらと太陽の光を透かしながら煌めくイチョウに、私は手をかざしながらくるりと回った。私が回るのに合わせて、足元でイチョウが踊る。私のステップに合わせて、ターンする黄金。
「ねぇ、柊斗!見て見て、イチョウと踊ってるみたい!」
自分でも子供みたいだと思いながら、自慢するように柊斗を見た。けれど、その顔を見たところで私は思わず足を止めた。イチョウも踊るのをやめて私の足元に舞い落ちる。
「…柊斗?」
私の言葉に柊斗はハッとしたように目を見開いて顔を逸らした。そうして再び歩き出し、私の横に並び立つ。
「…うん、綺麗だね」
その言葉に、私はちょっと驚いて、それから嬉しくなって。
「でしょーー!!」
柊斗の頬が赤く色づいていたのに、気が付かないふりをした。




