無数の自分
小説のプロト。
僕は今年で45歳になった。
独身で彼女はいない。
以前、20代後半の時にお付き合いした同世代の女性と結婚の話までしたものの、
些細なことで別れてしまい、一人になった。
時々風俗へ通ったり、アプリで知り合った女性と遊ぶが、特定の恋人は作らないと決めたが・・・やはりさみしいと思う時はある。
久々に仕事が早めに終わって、晩ご飯を作るのは面倒なので自宅の最寄り駅の近くにあるファストフード店で軽く食べることにした。
適当なセットを頼み、カウンター席に座った。
スマートフォンを見ながら買ったセットを食べて、何も考えないようにした。
「お隣に座ってもいいですか?」
若い女性が僕に話をかけた。
普段、声かけられることはあまりないので、少し身構えた。
「どうぞ、もうすぐ出ていくので」
警戒しながら笑顔で答えた。
「ありがとうございます」
女性は僕の隣に座った。多分は二十歳ぐらいの年齢だと思った。
彼女に対して、何故か妙な親近感が沸いた。
僕の知っている誰かに似ている気がした。
女性は僕を見て、笑顔を向けた。
「高橋幸一さんですね?」
「何故知っている?」
親近感が消え、警戒心がマックスになった。
「驚かせて、ごめんなさい・・・怪しいものじゃないの」
「おもいきり怪しいッ!!」
「落ち着いてくださいね」
「知らん人に名前言われるとあらゆることを考えるわッ!」
「私の名は高橋沙織・・・あなたと血縁関係があるの・・・正確に言うと別のあなたとね・・・」
「新たな詐欺かッ?!」
「違うの、そうじゃないの・・・証拠として周りを見てください」
僕は店内を見た。
すべての動きが止まっていた。
人もものも、そして大きな窓から見える外の世界。
「あり得ない・・・」
「はい、そうです・・・実は私が別の世界のあなたの娘なの・・・」
「はあ?・・・」
「信じられないのは分かるけど・・・助けに来たのよ」
「娘?助け?・・・なんのことだ?・・・信じられないッ!!」
「私と一緒に来てください・・・あなたを殺しくに来るものがもうすぐ現れるのよ」
「僕を?冗談じゃないッ!!僕はしがないリーマンだ!!」
「私のお父さん・・・私の世界のあなたを殺したものがあなたを殺しに来る」
「信じられんッ!!」
「時間がないの・・・私のお母さんがあなたを助けるため、私を送ったの」
「お母さん?」
「私のお父さんの妻で私の母・・・串山・・高橋智恵美・・・」
僕はその名前を聞いて、妙に納得した。
別の僕の娘を名乗るこの女性から感じる親近感、どこかで見た雰囲気。
元婚約者にすごく似ていた。
「まさか・・・」
「行きましょう・・・もうすぐポータルが開かれる・・・逃げないと・・・最悪のアイツと鉢合わせするはめになるの!!」
「最悪のアイツ?!!」
「多元宇宙に多数いるあなたを殺しまくっている・・・滅びていく世界のあなた・・・」
「ええッ?!」
僕は間抜けな返事しかできなかった。
その時、大きく光るポータルが現れた。
「ポータルだわ・・・逃げるのよ!!」
別の僕の娘と名乗る女性が僕の右手を掴み、ポータルへ引っ張った。
構想できているが、反応は気になるので短編として投稿。
よろしくお願い申し上げます。