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第七話



 武闘会当日。

 予定はかなりタイトである。

 全8箇所で行われるバトルロワイヤル。

 そのうち一つの会場に来ていた。


 「結構人がいるんだな。」


 眺める限りの人、人、人。

 みんな見てくれが訳ありっぽい感じである。

 いかにも戦い慣れてそうな奴や、その場には似つかわしくない、場違いな風体の者。


 「野郎どもおおお!!!」

 「「「オオオオオオ!!!!」」」

 「「「「ワアアアアアアアアア!!!!」」」」


 突然透き通るような男の声が発せられると、合わせるように参加者が雄叫びを上げる。

 それに追随して観客も叫び出す。

 ちょっと、心臓がビクってした。


 横で急な叫ばないでくれ。


 「アイツ、絶対初参加だぞ。」

 「ちげぇねぇ。」


 俺の反応がわかりやすすぎたらしい。

 周りの数名に目をつけられてしまったらしい。


 「これより、ルリヤ武闘会を開催する!!!!」

 「ああああああああ!!!」


 会場が震えている。

 なんというか、プロの試合に来たみたいな気分だ。

 あの熱気に近い。

 

 「お前らああああああ、準備はいいかああああ!!!

 カウントダウン!!!」


10

9

8

7

6

5

4

3

2

1


 「スタアアアアアアアトオオオオオオ!!!!」


 皆が一斉に構えていた武器を手に取り戦いが始まる。


 「悪いな初心者! 死んでも文句言うんじゃねぇぞ!!!」


 『剛体化Ⅰ』を使って体を固定、縦を前に出し剣を正面から受ける。

 金属同士のぶつかり合う音が耳を叩く。

 

 剣を振りかぶった、、、特徴のない男が腕と耳を押さえている。

 どうやら腕に振動がいったらしい。


 「いってええ」

 「隙あり!!」


 俺たちの戦いを見ており、漁夫の利を狙っていたであろう人物が特徴のない男を背中から槍で突き刺す。


 「うわあああああああ、こ、降参だよ!」


 特徴のない男から致命傷を受けた男にジョブチェンた男はその場で治癒され移動していった。


 「盾使いか。この槍は、なんでも貫く槍なんだ。」

 「そうかい。だったら俺の盾も貫けるのか。」

 「余裕だ!」


 そういって距離を詰めて槍で突きを放つ。

 『加速Ⅱ』で回避して背後を取り、盾で後頭部を殴る。


 「くあ」


 よろめきながら俺から距離を取る漁夫の利男。


 「避けるなんて卑怯な!!」

 「いや、最初からぶつかるなんて言ってないですよ。」

 「小僧!!」

 「今度はこちらから行かせてもらう。」


 前に飛び込み、『剛体化Ⅰ』を起動。そして『加速Ⅱ』を使用して突撃する。

 やりすぎると交通事故みたいになるのでそんなに速度のでない大型動物に衝突されたくらいに調整する。


 「わああああ!!」

 

 空を舞って槍を手放す男。

 このまま地面に落ちたら衝撃が全て内臓に行くな。


 「こうさ」

 「時すでに遅し」


 ドスンという音共に男が地面と衝突する。

 息もできていないだろう。あれは、結構苦しいんだよね。

 受け身もうまく取れなかったようだ。

 地面にうずくまって悶絶している。

 

 「っ!」


 左手の甲にクナイのような物が刺さっている。

 さらに飛んでくるのを振り返り盾で防ぐ。

 

 「なかなか素早いではないか。」

 「、、、」


 手の甲からは血が流れている。

 貫通しており左手は握ることもできない。

 こんなタイミングで怪我をするなんて。

 しかし、それでも本気でやるわけにはいかない。

 痛いのを堪えて右腕を強く握り、『加速Ⅱ』を可能な限り引き出して距離を詰める。


 「っなんて速さ!!」

 「らああああ」


 直前で剛体化しクナイ男の顔面をぶん殴る。

 そして衝突直後に『加速Ⅱ』を減速させる。

 2人して慣性にのって転がっていく。

 『剛体化』を使っていない男は漫画みたいな転がり方をしながら壁に衝突した。


 壁から体を抜き出す。

 振り返ると俺を狙う影が。

 急いで『剛体化Ⅰ』を起動して攻撃を受ける。

 そして『加速Ⅱ』を使って右肩でタックル。

 

 「ぐぼっ」


 そのまま体勢を崩した斧を持っていた男の股間を蹴り上げる。

 俺もこんなことをしたくはなかったが、仕方ない。

 局部を抑えながら泡を吹き倒れた。


 「魔術!」

 

 眼前に迫っていた炎が俺に直撃する。


 「悪く思わないでくれよ。

 ってはあ?」


 「くっそあち!」


 すぐに剛体化したが、着ていた鎧は熱々だ。

 急いで脱いで、というかぶっ壊して無理やりパージする。

 

 そのまま火炎放射で数秒俺を炙ってくれやがった男の胸をおもっきり掌底で突く。

 骨の折れる男がしたあたり、胸骨はいったと思う。

 ていうか、肋骨もいってそう。


 そのまま後ろ蹴りで胸を叩く。


 涙を流しながら治癒しようとしているが『加速Ⅱ』で距離を詰める。


 「わ、悪かった! 降参だよ!」


 さらに悶絶しており蹴りやすい位置にいたのでサッカーボールを蹴る要領で胸に一撃入れてやろうと思っていたが、すんでのところで降伏。

 

 足を止める。

 

 辺りを見渡すと、すでに残っているのは4人だけか。


 棘だらけの棍棒を振り回す巨漢の男。

 明らかにやんごとなき身分でありそうな装備を身に纏った、、、性別はわからん。でも多分男。

 そして、、、背の低いハンマーをもった男。

 

 ハンマーを持った男は、エルノーラが言っていた亜人族のドワーフって種族だと思う。


 「そこのガキ、おいらと遊ぼうぜ。」


 棍棒には血がベッタリとついている。

 趣味が悪いな、と思った。

 

 「うら」


 巨漢に似つかわしくない素早い動きで距離を詰めてきて一振り。

 盾を構えて受け止めるが、盾は壊れて衝撃が右腕に響く。

 

 「へぇ、随分と頑丈じゃねぇか。

 俺の一振りで傷一つつかねぇか。

 こりゃ殺す気でやらねぇとだめそうか。」


 「今度はこちらの番だ!」

 

 出し惜しみしてる場合ではないかもしれない。

 必殺技のお地蔵さんアタックをお見舞いする。

 そんな技怖くないと思っているのだろう。

 棍棒を横に構えて、バントのように開けようとするが粉砕する。

 明らかに表情が歪んだ。

 そこにオーバーヘッドの要領で下から顎を蹴り上げる。

 

 「おご」

 

 数センチ空中に浮いたところを逃さず右腕を力一杯握りしめて、『剛体化Ⅰ』と『加速Ⅱ』の重ね合わせで腹を鎧ごとぶん殴る。

 

 「ぐああああ」

 「スマアアアアアアアアアアアアッシュウウウウウウウウウ!!!!!」


 棍棒の男(棍棒なし)が吐血して意識を失う。

 流石に意識のない相手を攻撃するようなスポーツマンシップにかけるようや真似はしない。


 振り返ると、すでに決着を受けていたのかやんごとなき装備マンがドワーフを下して立っていた。

 左手のひらを俺に向けてくると、拳大サイズの岩を生成し、プロ野球選手顔負けの速度で放出する。

 

 急いで横に回避して距離を詰めようとする。

 

 しかし、相手も距離をとりながら魔術を連発してくる。

 それをすべて回避しながら前へと進む。

 なんて奴だ。剣だけかと思っていたが魔術も使えたのか。


 ある程度距離を詰めると無駄と判断したのか左手を地面につく。


 「?」


 考えるままなく、地面が凍りつき始める。

 俺の足を捉えると、身動きが取れなくなった。

 そんな無茶苦茶だ!!


 今度はこちらに火球を放出しながら右腕で剣を振りかぶり距離を詰めてくる。

 火球をこちらは『剛体化Ⅰ』でバレない程度に防ぐ。


 距離を詰めてきていたやんごと鎧マンは高く飛び上がると俺の背後を捉える。

 大きく振りかぶって


 俺は隠していた『土魔術・初級』をつかって地面を隆起させる。

 勢いよく地面から飛び上がると鎧マンを空中から殴り飛ばす、寸前のところだった。


 「参った!!」


 そう言われたから『剛体化Ⅰ』と『加速Ⅱ』の加速度操作と加速度合成で位置をずらして受け身をとりながら着地する。


 「「「「あああああああうわわわあああああああああああ!!!!」」」」

 「予選を見事突破したのは、エントリーNo.308!

 レオだあああああああああ!!!!」


 「まさか負けるなんて。本当参ったよ。」

 「ありがとう。さすがに足を凍らせられた時は、肝が冷えたよ。

 君も強くて、ギリギリの戦いだった。」


 差し出された手を取り握手する。 

 俺たちの握手に会場は大盛り上がりだった。


 ***


 「お疲れ様ああああ!!!」

 「おう。エルノーラ、なんとか予選突破したよ。」

 「よかったよかった。手の怪我先に治すよ!」


 そういうと、エルノーラは俺の左手のひらに自分の手を重ねる。

 

 「ヒール」


 そういうとみるみるうちに怪我が治っていく。

 おおおお、すげええええええ。


 「なんなんだよそれは!!」

 「別に治癒魔術だけれど。知らないの?」

 「知らないの!知らない! すごいなそれ!!」

 「世間知らずとかって次元じゃないな。」


 左手の感覚が蘇る。

 グッパ、グッパしてみる。

 うん、正常に動いている!!


 「いやー、一時はどうなることかと。

 左手の時もそうだし、デカい男と戦ってる時も、最後の鎧の子と戦っているとかも。

 なにはともあれ勝ててよかったよ!!!」

 「そっちはどうなんだ?」

 「ふっふっふ! それは私の自室にて!!」


 *


 本戦にはまだ時間があるのでエルノーラの家で昼食を取ることにした。

 

 「えっっぐいなこれは!!」

 「私もこんな金貨の山はみたことないよ!!」


 「一生遊んで暮らせるんじゃない!!」

 「な、なにを言っているんだい君は!!

 こ、これは、そんなことのために、あるんじゃ、、、」

 「で、でも、少しだけなら、、、」


 2人して誘惑に負けそうになるが振り返る。

 ダメダメ、淵上やエルノーラ妹の命と人生はこんな金より安いわけない。

 大切に持っておかなきゃ。


 「どうだった? 俺はうまくやれていたと思うか?」

 「そうだね、本気で戦って、なんとか予選を勝ち抜いたってイメージはついていると思うよ。」

 「そうか。そりゃよかった。」

 「ていうか、ここのブロック以外は割と圧勝気味っぽかったらしいよ。」

 「へー、そりゃ、また。」


 ハイレベルな戦いなんだろう。

 

 「最初の対戦相手は、魔術士のようですよ。それとかなり強い。」

 「魔術士か。うーん。」

 「なにか思うことがあるんですか?」


 魔術士で強いって言ったら、『雨女』発動時の淵上が思い起こされる。

 あれは俺がどうこうできる相手なのか。

 

 「本気でやらなきゃ負けるかもかなって。」

 「それで賞金の均衡が崩れたらどうするんですか!!!」

 「いや、その前に負ける可能性もあるわけでだなぁ。」

 「そんな始まる前から弱気になってどうするんですか!」


 魔人族を殺せるだけの実力者と見ておくべきだろう。

 そんな相手に出し惜しみなんてしていられるだろうか。


 俺の中で二つの考えがメトロノームみたいにどっちともとらず傾いては離れてを繰り返している。

 センワヤを殺せる相手だとすれば、やはり本気でやらなきゃいけないだろう。

 しかし、仮にそうした場合賭け金の還元率が悪くなるのもよくない。


 「これは、、、、難しいところだなぁ。」

 

 コンコン、、


 「誰だろう。」

 「さあ? うちに誰か来るなんて変な話だし。」

 「借金でもしてるのか?」

 「集金じゃねぇよ!!」

 「居留守するか?」

 「そうしよっか。」


 コンコン、、コンコンコン!!


 結構しつこい奴だな。

 エルノーラは机にばら撒いていた金貨を袋に詰め始める。

 そして自分の部屋から出て妹の部屋に持って行った。


 「一応ね。」

 「一応な。」


 まさかとは思うが、突撃とかされた時のために2人でお金を隠しておく。


 コンコンコン、、、キィィィィ、、、、、


 「開けてきやがった」

 「おいおい嘘だろ。」


 コソコソボイスで2人呟く。


 「あのー、レオ殿!!!」


 ん? あの声は。


 「次の対戦相手について話がしたくて!」


 「ちょっと見てくるよ。」

 「バカ! 今部屋を出るな!」


 「いないのか。後を追って、この建物の中に入るのが見えたけど。」

 

 「い、いるよ、ちょっとお花を摘みにいってて」

 「そ、そうだったか。」


 やはり、あのときの、やんごとなき鎧の男だ。


 エルノーラの反対を押し切り、エルノーラ妹の部屋からでてリビングに出る。

 よし、多分俺だけだと思われて


 「2人でこの家に来ていたように見えたが、、、友達は?」

 「ああ、ちょっと人見知りだから!

 隠れちゃったのかも。」

 「そうなのか? しかし安心したまえ。私は取って食ったりしないから」

 「あーとストップ。彼はちょっと重度の人見知りだったや!!」


 「むむ?」

 「そうそう、知らない人を見ると破裂してしまうらしいよ! 

 驚きで心臓が。」

 

 「ならなぜまだ生きて」

 「わやわやわやわやわやわやわやわや」

 「、、、まあ、いいけれど。」


 エルノーラは亜人族だ。

 人の前に出たがらないだろう。

 それに、俺たちが繋がっているとバレるのはあまりよくない。


 「それで、どう言ったご用件で?」

 「ああ、次の君の対戦相手なんだが、彼、、、ウロルガは元宮廷魔導士でな。

 不祥事でその職を追われたが、実力は本物だ。彼本人の性格もあって残忍な戦いを好む。

 本当は私の手で切り伏せてやりたかったのだが。」

 「ちょちょちょちょっとまって」


 なになになに?

 切り伏せたかった?

 突然物騒!!


 結果盛んすぎてちょっと引いちゃうわよ。

 ほら、わたしもオネエ口調になっちゃうざますわよ。


 「切り伏せるっていうのは、比喩とか」

 「ではないわね。」

 「さようでございますか、、、」


 本気だ。

 そんなウロルガって人な憎しみを持っているのか。

 なにやったんだよウロルガさん。

 

 これから俺たち戦う相手が元宮廷魔導士ってだけでも嫌になるのに。

 多分ソイツ、センワヤとかに魔術戦で勝ったらするタイプだろ?

 

 せめて無限回復みたいなことがなければなんとかなるかもしれないが。

 異世界での天井がどこかわからないからな。


 「それで、君に彼を倒して欲しいんだ。」

 「それは、あなたの代わりにということでしょうか。」

 「そういうことになるわね。」


 は、はひ〜。

 この場合は殺せって意味か?

 いや、そこまでは言ってないだろうけど殺しても文句は言わない、むしろ褒め称えられそうだ。


 このやんごとなき鎧の男は、たぶんウロルガって人の友人かなにかなんだろう。

 性格には、だったと見るべきか。

 

 そのあたりは首を突っ込みすぎたくはないが。

 ただ、こんな田舎まで流れるくらいだからとんど犯罪者なんだと思う。

 大罪人なら、心置きなく殴れる。


 しかし、どこまでボコられるかって話しも捨てられない。まとわりついてくるわけで。


 「俺は、あなたにもどうにかこうにか勝てたわけで。

 その元宮廷魔導士相手に戦って勝利をつかみ取れるかどうか。」

 「大丈夫だ。君ならきっと勝つことができる。」


 その自信はどこから湧いてくるのだろうか。

 きっのその仮面の下は満面の笑みなんだろう。

 俺の顔?

 げっそりしてるんじゃないか。


 「防具も燃やされましたから、正面から戦っても」

 「しかし、驚異的な防御力があるのは私も目にしたぞ。」

 「しかし、元宮廷魔導士の攻撃を防げるだけのものなのか、、、、」


 さすなにメインスキルだし、貫通はされないだろうが。


 ただ、センワヤや魔人族の使う不思議な魔術のこともある。

 念の為、『無反応性化』を使うのはマストにしよう。

 

 「大丈夫だ。きみだって魔術を使えるじゃないか。」


 ま、そうだけど。厳密にはもう無理だと思っている。

 あのとき出力全開で『土魔術・初級』を使っただけで今日はもう魔術を使える気がしない。

 恐ろしい俺の魔力適性の低さ。


 次使ったら立っていられるかどうか。


 『剛体化Ⅰ』と『加速Ⅱ』が頼りだな。

 

 センワヤに指摘された通り、俺は武術に心得があるわけでもないし、絡め手を使われるのに弱いのも事実だ。


 どこまで自分の技が通用するか、、、。


 そうだ。


 「もし俺がウロルガ、、さんに勝ったら」

 「あのゴミは呼び捨てでいいぞ。」

 「ウロルガに勝ったら、あなたの剣を教えて欲しい。」

 「、、、? それは構わないが。」

 「よかったです。なら、私がウロルガ、打ち倒して見せますよ。」


 別にただで引き受けてもよかったが。

 技術を拝借できるならもらうに越したことはない。


 これを機会に剣の心得なるものを磨く。

 そのチャンスとしよう。

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