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第三話



 「これは前回の換金分、で、これが今回の〜」


 ここでしばらく暮らし、わかったことが少し。

 ここはガロネシアの首都パルスという場所のようだ。

 

 そして山の上に聳え立つのが俺が召喚されたケルニヒス宮殿。

 山を降りて平野を少しすると別の街もある。


 かなり距離もあり、かつ魔物も出るため今の俺が歩けるような場所じゃないな。


 そして、魔物を殺した時に得られるポイントだが、あれは人間を殺した時には発生しないと聞いている。


 聞いているってのは情報屋に教えてもらった情報だから、著しく信用に欠けるためだ。


 普通の人でも魔物を殺すとポイントを得られるが、それを俺たち異世界人のように好き勝手分配できない。


 ポイントが貯まると自動的に振り分けられるようだ。

 その話を聞いて、俺もポイントは溜めすぎないようにすると決めた。


 武器や防具は不要であることに気がついた。

 『剛体化』と『加速I』の相性が割といいらしく、システムのいう適性は本当らしい。


 ただ、サブスキルやユニークスキルが機能していないんだよね。

 完全に死にスキルと化しており、これはなんとかしたい。


 『演算』は、計算能力か上昇するというくらいしかないんだよね。


 「あなた、さっきの」


 異世界で数学する瞬間なんてこないし、当面お支払い専用スキルだな。


 「あの!」


 背後から肩を掴まれる。

 ここ数日絡まれることもなかったが、誰だろうか。


 「なんだ? って」

 「えっ、あんた八神、、、」

 「淵上、、、俺はもう行くから。」

 「ちょっと待ちなさいよ。」

 「やだよ離せよ。」

 「離さないわよ。」

 「なんでだよ」

 「ちょっと話がしたいだけでしょ」 

 「そりゃそうかい。ただ、俺も色々あるんで、それより俺なんかと関わってていいのかよ。

 女脅してたんだろ?」

 「もうどうでもいいのよ」

 「はぁ?」


 彼女の表情は暗い。どうでもいいって、そりゃどういう了見だ。


 「なにかあったのか?」


 含みを持たせた言い方されれば聞き返しもする。


 「、、、、」



 ***


 彼女が話してくれたのは、俺があの場を去った後の話だった。




 私、淵上(ふちがみ)環奈(かんな)はスキルに恵まれなかった。

 みんなと話していてわかったが、どうやらハズレを引き当てているようだった。


 「環奈はなに引いたの?」

 「え、いや、それはねー」

 「それはー?」

 「内緒かなー。」

 「それはダメだよ。」

 「あ、あかね?」

 「こんな世界に来ちゃって、みんなで力を合わせて行こうって時に、得た力がわからないんじゃどうするの。」


 皆がみな自身の得たスキルについて申告していく。

 本格的に理解した、皆ちゃんといいスキルを手に入れているんだ。


 もちろん、私と同じように、、、私ほどひどくはないが、普通のスキルを持つ人はいるけど。

 

 「環奈の番だよ!」

 「、、」


 私の得たメインスキルは『雨女』、サブスキルは『ショートスリープ』、ユニークスキルは『健康維持』、そう伝えるとクラス中は爆笑の渦と化した。


 「ええ、雨女って、なにそれ」

 「ショートスリープに健康維持って、めっちゃ体に気を使うじゃん。」

 「健康維持って、今から老後のこと考えてるのかよ。」

 

 男子は爆笑、女子には少し距離を置かれているような気がした。


 今にも泣きそうだったが恥ずかしいのを必死に耐えた。


 「ぜ、全員のスキルについては申告し終えたかな。」


 これからの方針として、グループに分かれて行動することになった。

 必然的に、クラスでのグループや、スキルの優勢劣勢で班が作られていく。


 「瑞希!」「ちょっと、、」

 「凛花!」「うーん、、、」

 「美弥!」「そのスキルはねぇ、、」

 「茜、、」

 「環奈ちゃんはちょっと厳しいよ。他の子と組んだら?」


 元いたグループのみんなは誰一人として、ハズレスキルを引いた私には手を差し伸べてくれなかった。

 元いた世界ではあんなに、付き纏ってきたくせに。

 

 都合が悪くなれば捨てるのか。


 「星斗くん、うちらといこー!」


 彼氏を捨てて、まあ捨てられて当然のことしたから当然っちゃ突然だけど、乗り換えるの早いなー。


 もともと茜は男好きだなとは思っていたけれど、ああも隠さないとね。


 仕方ないので別のグループの女の子を誘っても全て拒否。

 なんでよ。とは言えなかった。


 男子は知らないかもだけれど、女子同士では結構人間関係は複雑で、簡単に変えられるものではない。


 DQNグループの奥山たちに誘われたが、あいつらだけは何があってもあり得ないと思った。


 目がいやらしくて気持ち悪かったし。


 宮殿を拠点に活動してもよいと言われたが、周りの空気に耐えられず出ていった。

 

 *


 「そりゃあ、災難だったな」

 「、、」

 

 彼女の話を聞くに、茜がゴミであることしか入ってこなかった。

 絶対俺のこともスキルで切り捨てただろ。


 あいつが好きなのは自分だけだ。

 自分が一番可愛くて強くないと気が済まない。

 だから強いやつと弛むことで自分を満たしている。


 学校での俺も、彼女の自己承認欲を満たすための道具でしかなかったのだ。


 「ねぇ」

 「なんだよ。」

 「女子が寂しそうにしてるのに、慰めの言葉もないの。」

 「あいにくと俺は最低の男だからな。」

 「拗ねてる、、、」


 拗ねるだろ。

 根も歯もない話で半ば追い出されたんだぞ。

 いなくなった先で色々言われてるんだろうな。

 スマホは回収してきたが、どうせ使えないのでシャットダウンしている。


 「まず制服なんとかしろよ。目立ちすぎだ。」

 「あんたこそ、服装だけでちょっと浮いてるわよ。」

 「そっちよりマシですー。」

 「服選び一緒にいこ」

 「、、、俺と?」

 「他に誰がいるの?」

 「いや、、、俺でいいのかと思って」

 「もうどうでもいいのよ。あんたに襲われようがどうなろうが」


 それはどうなんだ。自暴自棄になってる。

 

 「それは、ダメだよ。あんまり自分を安くみちゃ」

 「そ、、、」


 *



 「どう?」

 「淵上は何着ても似合うよ」

 「そーおー?」


 スタイルいいしな。

 昔付き合っていた、、、汚点だが、茜とはまるで全て違うしな。

 

 「これとこれ、どっちが似合う?」

 「うーんこの右の〜」


 彼女の表情は硬いか。


 「いや、左も悪くない。左のにしなよ。」

 「だよね〜、買ってくる〜。」


 めんどくせ。


 「そう言えば、あんたはどこに泊まってるの?」

 「なんだよ、」

 「私野宿だから」

 「ええ、なぜ、」

 

 東京の終電無くした人みたいなことしてるってこと?

 大丈夫かな。

 

 「同じ宿取る?」

 「おねがーい」


 彼女に宿を取らせる。

 一人でバタバタととった部屋まで走っていった。


 「ボス」

 「ん?」

 「俺は今日付けでここを出ようと思う。」

 「そうかい。今まで毎度どうも。」

 「こちらこそ、いろいろ助かったよ。」


 淵上と長居するのも変な話だしな。

 ちゃっちゃと部屋片して移動しよ。


 ちょうど、ギルドに隣町までの乗り合い馬車が明日来るらしいし。

 それに乗って移動移動。

 

 「八神〜」

 「どうしたの?」

 「八神はこのあとどうするの?」

 「俺は、そうだな」


 本当のことを言う、、必要はないな。


 「日も傾いてきたし、飯でも食って寝ようと思ってるけど。」

 「ちょうどいい! 一緒にご飯いこ!」

 「、、、」


 *


 「なあ、一つ聞きたいんだ」

 「ん?」

 「俺みたいな男、怖くないのか?」

 「んー、別に普通かな。

 例の件でちょっとないなって思ったけど。」


 「でも、まだ実害出てないし、いいっしょ」

 「そうだよね。」


 元クラスメイトともここまで、



 

 と思っていたんだが。


 「なんで俺がパルスを出立すること知ってるんだよ。」

 「宿屋のオーナーが教えてくれたし、てか、なんで置いていこうとするのよ。」


 別に関わる必要ないだろ。

 こうして乗合馬車で顔を突き合わせることになるなんてな。

 

 一応名目上護衛と言われているが、俺は誰かを守れるほど強くない。個人プレーでしか戦ったことないし、それに淵上が強いとも思えない。


 「そう言えば、八神は能力値どんなもんなのさ」

 「淵上そういう話嫌なんじゃないのか?」


 スキルが弱くて追い出されたんだから、そんな話したくないと思っていたが。


 「んー、弱いもの同士だから?」

 「ナチュラルに弱いやつ扱いか」

 「でもそれで捨てられたんでしょ」

 

 捨てられたんですよね。

 そうなんだよ。

 ん? 


 「何言ってんだ。」

 「まさか、茜が言ってたことほんとなの? 茜のいつも嘘だと思ってたけど。」

 「な、!?」


 「最初はびっくりしたし、ないわーとも思ったけど、追い出されてよくわかった。

 八神くんも同じなんだろーなーって。」

 「そりゃ、そうだな。」


 「おい、魔物だ!」


 「淵上、魔物倒しにいくぞ。」


 馬車を降りると馬型の魔物に乗った魔物。

 他に乗り合わせていた冒険者たちが戦っているが、今ひとつ決定だにかける。


 そこで、俺は新たに編み出した、ってか流用した必殺技。


 「ライダーキィィィィックゥゥゥゥ!!!」


 高く飛び、加速、剛体化で止めをさす。

 一撃粉砕。

 

 そのまま勢い余って地中に潜っていく。


 「減速! 減速減速!!」


 急ブレーキをかけて停止する。

 慣性なのかなんなのかいまだに原理はわからないが扱いづらい。

 そもそも地面の中に落下なんてどんな理屈だよ。本当。


 落ちてきた穴をよじ登ると、穴を何人もの人が覗き込んでいた。


 「えっと、八神くん。」

 「勢い余って。」


 こうなるのが嫌だから、普段はお地蔵さんアタックにしている。

 今回は、ちょっと、人前でお地蔵さんアタックは恥ずい。


 女子がいるからカッコつけたかったとかではないよ。


 「他の魔物は?」

 「あのリーダー? みたいなのが、死んだのを見て逃げていったよ。」


 指さした先には緑の小人が項垂れている。


 流石にグロいな。


 「慣れないなー。」

 

 淵上もあまり見ないようにしているのか、下を見つめている。

 人型の魔物をころすのだけはどうしてもキツい。


 「馬車にのろっか」

 「うん。」


 馬車に揺られて移動して、時々魔物と戦った。


 どれだけ戦っても『逆転』はお気に召さないらしい。

 まじでポイントは全く貯まらない。

 

 「みてみて!」

 「ん?」


 淵上が手のひらから水球を生み出してみせた。


 「え、魔術使えるの!!」

 「すごいでしょ。」

 「すげぇ、俺なんて魔術適性ないんだからなー」

 「適性?」


 もしかして、適性のある魔術をポイントで、魔術を手に入れる時は注意書きがでないのか。

 だったら、彼女は魔術適性アリアリなのか。


 「なんで水魔術?」

 「んー、兼ね合い?」

 「何の。」


 俺も魔術使えるようになりたいな。

 

 *


 「俺はこの後南に行ったカニーユって村に行こうと思うんだが。」


 パルスから10日でついた「ハノ・ハイ」という商業都市に来ていた。

 ハノ・ハイから南に行ったカニーユ村があり、そこでは最近魔物の活動が活発なのだとか。


 「そこってどんなところ?」

 「そうだね、ちょっと田舎かな。魔物が多いらしいし、そこでスキル鍛えようかなって。」

 「別に強くなってどうするのさ。」


 彼女が話してくれた話はクラスメイト以外にもあった。

 この世界では魔物が人間に攻撃することが多々あるらしい。

 魔物の系譜を辿れば魔人族というものに連なるらしく、魔人族と人は戦っているそうだ。

 

 どうして戦ってるかなんて俺は知らないけれど。

 召喚された転生者は強力な力をもつ。

 そのため魔人族との戦いには参加する義務のようなものがあるらしい。


 彼女はやる気がないのだろう。

 強くなることには興味なさげだ。


 俺も魔人族とか人とか、そんなものの争いに蚊ほども興味はないが、このまま弱いまま生きていくのは、舐められっぱなしは納得いかない。


 不器用なら不器用なりにやってやる。


 「この世界は不思議なことが多い。

 こっちに来られたなら、元いた世界に帰る手立ても見つかるかもしれないだろ。」

 「たしかに!」

 「だろ? 別にそれが全てじゃないけどさ。」

 「帰っても犯罪者扱いされそうだもんね。」

 「冤罪だっての、、、、」


 



 カニーユ村に着いたのは、ハノ・ハイについてから3日後のことだった。

 

 「どこまでついてくるつもりだよ。」

 「ん? 考えてない。」

 「適当だ。」


 淵上と共に行動しているのはちょっと変な気もしていたが、数日で慣れてしまった。

 慣れてしまったのか。


 「宿取ってくるよ。」

 「この村ってギルドあるのかな。」

 「さあ、なかったとしても魔物と戦うだけだよ。」

 「お金はどうするのさ」

 「しばらく暮らしてからくらいの金はあるよ。」

 「私のよ」


 それは知らないですよ!

 それくらい自分で工面してください。

 

 「一緒になんとかしよっか。」

 「うん。」


 ここまで一緒にきたんだ。今更捨てるのも忍びない。

 

 「一緒に魔物と戦おっか。」

 「!! うん!!!」


 これがパーティに誘うってことか。

 ずっと一人だったから複数人戦闘は大丈夫かな。


 フォーメーションは単純。

 俺が前衛で淵上を守り、淵上が魔術で魔物を倒す。

 

 淵上の戦っている相手は『逆転』の好まない相手ばかりでまったく成長してる気はしなかった。


 ただ、彼女は成長しているようだ。


 パーティを組む、と承認してから、彼女の能力値が、彼女の任意であると言えども見ることができるようになった。

 例の如く集中すると。


 「見てみて! 能力あがったの!」


 <<<フチガミ カンナ 16歳

 体力   E→E+

 筋力   E+

 防御力  C-

 魔力   C+→B-

 魔法防御 C-→C+

 瞬発力  D→D+


 メインスキル  『雨女』

 サブスキル   『ショートスリープⅢ』

 ユニークスキル 『健康維持Ⅱ』

 コモンスキル  『氷結』→『氷結Ⅰ』

         『寒さ耐性』

         『暑さ耐性』

         『発汗量調整』

         『魔術耐性』

         『火属性特効』



 魔術  『水魔術・初級』→『水魔術・中級』

     『風魔術・初級』

     『結界魔術・初級』>>>


 全体的に強くね。

 あと、なんか色々多くね?

 

 参考までに俺のをドーン


 <<<ヤガミ レオ 16歳

 体力   D

 筋力   C-

 防御力  E

 魔力   E-

 魔法防御 E

 瞬発力  C


 メインスキル  『剛体化』

 サブスキル   『演算』

 ユニークスキル 『逆転』

 コモンスキル  『加速I』>>>


 魔術欄、ありません。そんなもの。

 淵上と戦っていて思ったことは色々ある。

 もちろん魔術適性が高いことは分かっていたが、俺はE-。ちょっと前までFだったし。

 しかも結構比重高めでポイント振ってたのよ。


 才能的な要素は間違いなくあるだろう。

 俺も魔術使いたいんだけれど、適性ないっぽいんだよね。


 習得にも挑戦しているが、失敗することが多い、てか一度も成功してないからなにも魔術欄ないのだけれど。


 彼女が魔物一体倒すのと、俺の百体はイコールだからな。

 伸びが100倍も違うと数日でステータスに差が出始めている。

 こりゃ勝ってるところもすぐ追い抜かれそうだ。


 ***


 いつもの如く、村外れで魔物を探しているが全く会わない。

 なにか異様だ。


 「なんか変だよね。」

 「うん、そんな気がする。」


 魔物は腐るほどいて、倒しても倒してもキリがないと思っていたのだが。


 「お前たち、ギルドのもんだろ!」

 「は、はい。」

 「おーい、そっちどうだ!」

 「ギルドの方いたぞー!」


 「あの、俺たちになにか?」

 「頼む、魔物を追い返すのを手伝ってくれ。

 村の男たちだけでは、、、」


 話を聞くとこうだ。

 魔物が現れなくなる。これは群れを形成して近くの集落や人の多いところへ攻撃するために準備している証拠だという。


 そんな知性的な生き物だとは思えないけど。


 「わかりました。できることなら協力させてください。」

 「ありがとう、助かるよ。」


 ***



 本当に来たのか。

 カニーユの村で暇を持て余していると、地響きが聴こえ、いつのまにか村は魔物に囲まれていた。

 

 なにも準備していなかったわけではないが、これだけの数が集まると少し怖気付く。


 「俺たちは、いつも通り戦おう。」

 「うん、、、、」

 「どうした?」

 「あの、ちょっと天気が」

 「こりゃ降りそうだね。戦闘中に雨なんて勘弁してくれよ〜」

 「、、、、」


 

 

 魔物の数は異常だった。

 俺も恥ずかしいからと封印していたお地蔵さん攻撃を解禁する。


 「お地蔵さんアタック!」 

 「お地蔵さんアタック!」

 「お地蔵さんアタアアアアアック!!!」


 淵上はというと、村の人たちと協力して魔術で応戦していた。


 「やめてくれぇぇぇぇ」

 「させるか、喰らえ、お地蔵さんアタック!!!」


 襲われかけている村の人を、ギリギリで駆けつけて救う。


 「あ、ありがとう。」

 「また来ますよ。お地蔵さんアタック!」


 

 <<<ヤガミ レオ 16歳

 体力   D→D+

 筋力   C-→C

 防御力  E

 魔力   E-

 魔法防御 E

 瞬発力  C→C+


 メインスキル  『剛体化』→『剛体化I』

 サブスキル   『演算』

 ユニークスキル 『逆転』

 コモンスキル  『加速I』>>>


 能力が戦闘によって少し伸びる。

 『剛体化』が進化して『剛体化I』になったが、正直違いはわからない。

 エネルギーが失われなくなったとか説明されたが、そもそもエネルギーが失うとかそんな概念も知らないし。


 「はぁはぁ、流石にキツいな。」

 

 戦闘は長期かしていたが、収まるところを知らない。

 

 「お地蔵さんアタック!」

 「お地蔵さんアタック!」

 「お地蔵さんアタック!」


 みたことない魔物とたくさんあり、強敵とも対峙している。

 ただ、『逆転(ギャンブル)』が発動される気はしない。


 人数不利であるのに、格上相手でもあるのに。


 まったく、困ったわがままスキルだよ。


 「負傷者をこちらに。」

 「頼む応援を!」

 「ダメだ手が足りない!!!」


 だんだんこちらにも被害が出てきている。

 このままでは全滅するぞ。

 

 何か対処法はないのか。

 

 「街からの応援がきたぞ!」


 頼んでいたという兵士たちが駆けつけた。

 ありがたい、ただ、これじゃあ延命しただけに過ぎない。

 

 俺一人なら生き残れるかもしれない。

 ただ、村の人たちは。


 「お地蔵さんアタック!」

 「お地蔵さんアタック!」

 「はぁはぁ、淵上、大丈夫!」

 「魔力が、」


 もうずっと戦っている。

 疲れが出てきてもおかしくない。

 

 「きゃー!!!」

 「淵上、すまん、助けに行ってくるから何とか持ってくれ!!」


 遠くで聞こえた子供の声に、『加速』を使って猛スピードで駆けつける。

 そして駆けつけ


 「お地蔵さんアタック!」


 「大丈夫?」

 「、、、」


 首をこくんと頷いてくれた。

 しかし、うまく歩けない様子。

 抱き抱えて飛んでいく。

 

 「ん?」


 目の前から飛んでくる光線をモロに直撃した。


 ***


 「おい、何だあれは。」


 空に浮かぶ人型の、魔物?

 

 高く飛び上がった八神くんと、彼に抱き抱えられた一人の女の子。

 その二人に向けて指差すと、赤い光線を放った。


 「危ない!!!」


 辺りが閃光に包まれる。

 直撃を受けた八神くんは空中からゆらゆらと落下する。


 「八神くん!!!」

 

 急いで彼の元に駆け寄る。


 「お、おい、うそだろ。」


 彼は腕の中で丸焦げになった子供に語りかけている。

 彼自身は無事そうだ。ただ、彼はその方が辛いのだろう。


 「死んだ、、、?」


 空を見ると、こちらをみてニヤついている。


 ピトン。


 「水魔弾!!」


 あの魔物に向かって魔術を放つが、なにも効いていない。

 こちらに視線を向けて、例の光線を放つ。


 「あぶない!」


 私と光線の間に割って入る八神くん。

 嘘でしょ。


 「があああ」


 八神くんの『剛体化』が貫通された、、、?


 背中を真っ赤にしたまま意識を手放している。


 ピトン、ピトン。


 「雨が、振ってきた。のね。」


 遅い、遅い遅い遅い。


 私のメインスキル『雨女』は雨が降っている間戦闘能力上昇が付与される。

 

 ピトンピトン、ピトン、ピトンピトン。


 強くなっていく雨。


 「絶対許さない、、。」


 ***


 背中が、あつい。


 「おい、大丈夫か!」


 この人たちは、村の。


 背中が痛い。俺は剛体化を使っていた。

 まさか、貫通したってのか?

 いや、ありえないだろう。だったらなんだ。

 別の何か原因が。


 雨が背中に染みる。


 「すぐに手当てを!」


 「はぁはぁ、みんなは」

 「上を見てくれ」

 「ん?」


 言われるがまま頭を上げると、そこにはあの魔物と、別次元のオーラを纏っている女。



 集中しろ!!


 


<<<フチガミ カンナ 16歳

 体力   E+→A+

 筋力   E+→B

 防御力  C-→S-

 魔力   B-→S+

 魔法防御 C+→S

 瞬発力  D+→A+


 メインスキル  『雨女』

 サブスキル   『ショートスリープⅢ』

 ユニークスキル 『健康維持Ⅱ』

 コモンスキル  『氷結Ⅰ』

         『寒さ耐性』

         『暑さ耐性』

         『発汗量調整』

         『魔術耐性』

         『火属性特効』



 魔術  『水魔術・中級』

     『風魔術・初級』

     『結界魔術・初級』>>>



 なんか能力が、爆盛りしてないか!!


 「あれは淵上ですか!?」

 「ええ、なにか別の人のように。」

 「別の人だろ、、、」


 なんか見たことない角とか、髪も伸びてるのか?


 ラスボスみたいなみてくれじゃないか。

 ステータスSってなんだよ!

 

 「いって」

 

 「まだ動いちゃだめだよ。」


 あの化け物みたいな魔物を圧倒している。

 あれが、『雨女』の力。

 俺の『剛体化』は彼女の『雨女』よりはマシだと思っていた。


 だが違う。あれは紛れもない大アタリだ。

 スペックが違いすぎる。


 「トドメだ。」


 高圧縮された水撃が魔物の体を貫いた。


 それからだ、彼女が村を攻める魔物を蹂躙していった。

 圧倒的で、一人で全て薙ぎ倒していった。


 俺が回復して戦いに戻る頃には、もう魔物は残っていなかった。

 

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