第二話
逃げるように飛び出してきたが、実際のところ、この世界について俺はほとんど何も知らない。
クラスメイト、、、に聞くきにもならない。
まあ、聞いても答えてくれないだろうし。
どこか、どこか情報が集まる場所へ行こう。
*
活気があって人の集まる場所といえば、商店立ち並ぶストリート!!
なんて気分じゃないが、背に腹は変えられん。
「すみません。」
「どうかしたのかい?」
「このあたりで泊まれる宿とかってあったらしますかね。」
*
「取り敢えず宿は借りれた。」
ぼったくられてはないと思う。
いつまでも制服というわけにもいかない。
金のあるうちにそれなりになっておかないと。
宿屋のボスに色々聞くか。
「すみません、この辺りでならず者でも働けるような場所ありませんかね?」
ボスは俺の身なりを見ながら怪しい視線を向けてくる。
そりゃ、この世界の文明レベルからは逸脱した格好してる男がならず者でも働ける場所なんか聞いたら、そうなるか。
「訳ありかい?」
「やっぱりそう見えますよね。」
「別に、俺に迷惑かけねぇなら勝手になんでもすればいいさ。兄ちゃんにできるかしらねぇが、魔物討伐なんてやってみたらどうだ。」
「ほー、それはならず者でもやっていいのか?」
「バカか。もっとぼったくればよかったぜ。」
ぼったくられてたのね。
「ならず者しかやってねぇよあんな仕事。
誰もやりたくないだろ、命かける仕事なんか。」
それはそうだな。そう考えると軍人さんとか覚悟がすごいよね。
俺は銅貨を一枚だして机に置く。
「魔物討伐ってのはどうすればできるんだ?
金は稼げるのか? 稼ぎ方は?」
ボスは銅貨を一枚、チラリと見ると少しニヤついた。
「ここは城下町だ、そんなところにゃ魔物討伐できる場所はねぇよ。ちと北にいったところの門をでて、そこからは地図があると説明が簡単なんだけどなぁ。」
俺は銀貨を机に一枚置いた。
「そうだそうだ、あそこに保管してたんだった。」
そういうとボスは地図を持って出てきた。
それから色々話を聞くと魔物討伐は下請けのようだ。
ギルドっていうのが仲介業者みたいな感じであるらしい。
そのギルドって組合? ギルドが組合なのかよくわからないがそこに所属すれば下請け仕事ができるらしい。
資本主義をとっているのかとも思ったがそうでもなさそうだった。
「この地図ってもらえるか」
「、、、、」
「この地図ってもらえるか?」
机に銀貨を2枚出す。
「ああ、これはお前さんにくれてやるよ。持ってけ。」
「ありがとう、助かるよ。」
借りている宿に戻り地図を開く。
服屋がそこで、武具、防具がそこか。
一通り怪しくない程度に揃えるか。
*
匂いは気になったが、中古の方が舐められず、かつ不審に思われないかと思いそちらにした。
「うんうんなかなか様になってるじゃない。」
その格好に変えると奇異な視線はなくなった。
ギルドはかなり閑散としていた。
「あら? こんな時間にどちら様ですか?」
「すみません。魔物討伐ってどうやってやるんすかね。」
*
受付の人は親切だった。正直喧嘩ふっかけられるもんだと思ってたからこんなスムーズにことが進んでびっくり。
それに、身分証もない俺が簡単に身分証(ギルド会員証)を作れていいのか?
とも思ったが、聞かないことにした。
防具は買わなかった。
メインスキル『剛体化』がすでに鎧みたいなもんだしね。
武器は一番安くて中古の短刀を買った。
刃こぼれしているが、ないよりマシだろう。
よくわからない依頼? 城壁外にでて、そこで魔物討伐しろってことらしい。初心者でもできる弱いやつらしいが、あいにく俺のユニークスキル『逆転』のせいでまともに戦えないことが予想されるので依頼は無視して強敵を目指すことにする。
*
「ここであったが100年目!!!!」
「ァア?」
俺より体がデカく、俺よりも臭いトラと遭遇。
みんな知ってる? 無闇あたりに動物に襲い掛かられることはない。
「アアアアアアア!!!」
「ご、剛体化!!!!!」
メインスキル『剛体化』を発動する。
なんでだよあの臭臭ドラ猫。
俺まだなにもしてないんですけどー。
名乗りを上げる前に攻撃しないでくださいよ。
虎にのしかかられ、爪を立てて攻撃されているがなにも感じない。
星斗、、、成田に攻撃された時もそうだが、この『剛体化』中はなにもできなくなるらしい。
お互い不干渉。
そのせいでさっきから大猫のおもちゃみたいになってるんすけど。
しばらく俺で遊んでいると、飽きたのか隙を見せた。
「隙あり!!」
背中から飛びつき虎に剣を突き刺す。
「剛体化!!!」
腕をホールドする。これでこの切れ味の悪い剣は首から抜けなくなった。
悶えているが、暴れるほど傷口が広がる。
ふふふ、隙を見せたのが運の尽きよの、、、。
*
あれからしばらく格闘した。
しばらくってか、日が傾く頃まで暴れていた。
「いったいいつまで、お、力尽きたか?」
「とうとつ、臭臭虎はぐったりと項垂れた。」
ピコン!
<<<ヤガミ レオ 16歳
体力 D
筋力 D+
防御力 E
魔力 F+
魔法防御 E
瞬発力 C-
メインスキル 『剛体化』
サブスキル 『演算』
ユニークスキル 『逆転』
コモンスキル なし
ポイントが余っています>>>
なにポイントって。また知らない概念。
、、、、。多分格上のこの虎を殺したことで、経験値、修練値、成長値、のどれかがもらえたのかな?
そんなバイトみたいなもんなのかな。
ポイントってのは、、、色々できるのか。
割と万能で、スキルを育てるも、新しいスキルや魔術を習得するも。好きに割り振れるらしい。
俺は魔術ってのが使いたい。
あのあれ、廣川がやってたみたいな。
火魔術火魔術〜♪
は?
《適性が低いですがよろしいですか?》
え、適性って、そんなパイロットみたいな選考基準まであるの?
他に、どれが適性あるのさ、、、
加速か、早く動けるようになる。
でも俺剛体化したら何もできなくなるんだよなぁ。
ただ、加速が一番適性あるっぽいし、信じてみるか。
<<<ヤガミ レオ 16歳
体力 D
筋力 D+
防御力 E
魔力 F+
魔法防御 E
瞬発力 C-
メインスキル 『剛体化』
サブスキル 『演算』
ユニークスキル 『逆転』
コモンスキル 『加速』>>>
加速って魔術じゃなくてスキルだったのか。
てかよくよくみると俺の魔力ひっく。
そりゃ魔術適性ないわな。
だってあんまり基準よくわからないけど、たぶんAが高いとかでしょう?
Fって、、、笑
こりゃ、しばらくは魔術はお預けかな。
「シャァァァァ!!」
「!!」
瞬時に判断して剛体化する。
背後に衝撃を感じるが、特に特段変わった様子もない。
ただ、何がいるかよくわからないので剛体化は解かない。
するするすると体に巻き付く感触がある。
もしや、、、
ヘビか、、、。
ヘビってどうやって倒すの?
てか、『逆転』がすごい嫌そうなオーラ出しておられる。
格下なのね。
だったら殺してもしょうがない。
見逃すか。一瞬剛体化を時、ヘビを強く握る。瞬時に剛体化しなおす。
彼? 彼女? わからないが大暴れしているが逃げられないよ。
これで、加速を付与して、どっかいけぇぇぇぇぇ!!!
蛇がおとなしくなったタイミングで解除して投げる。
我ながらよく飛んだ。
*
虎を抱えて街まで戻る途中、また嫌な視線を感じた。
「すいません、討伐対象が、見つからなかったもんで、これは換金できますかね。」
「え、、、、と、これはお一人で。」
「そ、うですね。でも、弱っていたところに止めを刺しただけ。」
「そうですか? にしては傷口が少ない、、、、」
これ以上詮索されたくないな。
「あの、換金は、」
「ああ、手元にあるもので足りるかわからないので、分割譲渡でよろしいでしょうか。」
「それでお願いします。」
取り敢えず、収入は入るのか。
一安心一安心。
ただ、あまりにも非効率な戦い方だ。
やめたらすぐ死ぬんだが、、、、
考えなきゃだな。
ギルドを出る前に、腕を掴まれ引き止められる。
「よお新入りぃ。」
新人いびりか?
「はぁ、」
「あれはお前がやったのかい?」
臭臭猫を指さして言う。
顎を引く。
「一人でか?」
「ええ」
「ほぉ、、なかなか、やるじゃねぇか。」
「恐悦至極に存じます。」
「てめぇ今バカにしやがったなぁァァァァ」
「???」
なぜ、このおっさんはキレているんだ。
俺バカにしたようなことしてないやろがい!
わけもわからず刀を振り抜き俺に切り掛かる。
剛体化!!
バチンと音がなると刃は振動し、おっさんの腕がびくびく震えていた。
「いっっつ」
右腕をブンブンと振りながら悶絶している。
襲われることはないだろう。剛体化を解除する。
「あーあ、あほだねおっさん。」
「いつものことじゃん、酔っ払って」
いつもこんな感じなのか。
ギルドは昼とは違い活気に満ちていたし、食事を楽しんでいたっぽいので、辛気臭い空気にしてしまい申し訳ないな。
周りも、臭臭猫を討伐した俺だからおっさんなんかに負けないだろうと思ったのかな。
だれも間に入ってはくれなかったが。
ちょっとだけ、寂しかったなその扱いは。
ほんと、ちょっとだけだが。
「えーと、レオくん。」
「なんでしょうか。」
「初心者用依頼は出さない方がいいかな?」
「そ、う、ですね。ある程度の難度でもおそらく問題ないかと。」
むしろ、高難易度じゃないと成長できない体でしてね。
可哀想でしょ。
*
難度高めの依頼、【ケイスタイガー】の討伐!
あの臭臭猫、ケイスタイガーっていうらしい。
まあ、俺の中じゃすでに臭臭猫だから臭臭猫って呼ばせてもらう。
以外にも、臭臭猫は人気のない依頼らしく、腐るほど溜まっていた。
ちょっとずつ解決しますか。
*
*
*
少し倒して、臭臭猫は『逆転』が煙たがる格下になってしまった。
かといって能力が伸びたわけではない。
原因不明。まさか、同じ敵ばかりで飽きたとか、、、いや、このハズレスキルならありえる。
割と自我あるっぽいし。
ポイントは『加速』や『剛体化』に振り分けている。
ていうか、今のところ『演算』や『逆転』が活躍した瞬間がない。
『加速』のおかげで移動がスムーズにできる。
かなり便利だ。
また、『加速』は『剛体化』と違って自分以外にも適応される。
そういう面でちょっと利便性高め。
ただ、スキルは成長させられるらしいし、『剛体化』のこれからに期待だね。
戦闘、、、というか卑怯な戦法で戦ってるから言わないけれど、かなり成長してきた。
<<<ヤガミ レオ 16歳
体力 D
筋力 D+→C-
防御力 E
魔力 F+→E-
魔法防御 E
瞬発力 C-→C
メインスキル 『剛体化』
サブスキル 『演算』
ユニークスキル 『逆転』
コモンスキル 『加速』→『加速I』>>>
伸びたのは、、、筋力、魔力、瞬発力!!
これは当然と言えば当然なことで、剛体化がそもそと防御力最大みたいなものだし、防御面は育ててないんだよね。
それと、『加速』は成長が早いな。
『剛体化』に割り振り比重傾けてるんだけれど、なかなか上がらない。
これも、メインスキルとコモンスキルとの差とかなのかな。
*
「すみません、臭臭、、、ケイスタイガーより強力な魔物討伐依頼とかって、、、ありますか?」
「あなたまだギルドに来て3日目よね」
「っすー、ね。」
「はぁ、強いのはわかるけれど、そうやって危険に足突っ込んでばかりだと命が簡単に飛ぶわよ」
「、、、、」
正論だな。
正論すぎて耳が痛い。ただ、そうでもしなきゃ成長できないんだよ。
このハズレスキルは扱いに困る。
「あ、カンナちゃん、レオくん、ちょっと待っててね」
カンナちゃん? 気のせいか。クラスメイトにもそんな名前のやつがいたような。
いやいやないない、あいつらがこんなところにいるわけない。
俺をあんな、思い出しただけでも怒りが湧いてくる。
茜は『聖女の芽』っていうメインスキルを持っているようだ。
話によれば嘘がつかない。
ただ、俺だけがわかるが、あの話は嘘だ。
どんな手品を使ったんだろうか。
正直、もう関わりたくないのでさっさとこの街も去ろうと思っているし、適当に金稼いで出発の準備でも整えておこう。
*
戦いの中で常に俺は進化し続ける。
そして、新たな技を体得した。
名付けて、『お地蔵さんアタック!!』
今こう思いましたね、どんな技だよふざけてんじゃーんって。
まあまあ、これを見てから言ってくれよ。
「獲物発見!!!」
目標補足、距離は多分10mから20mくらい。
要するにわからん。
そしてジャンプ!
『加速I』かつ『剛体化』!!
一定の速度のまま目標に衝突、そして、『加速I』によって新たに手に入れた加速度操作により、減速し、剛体化解除。
相手は悶絶。そして止めダァァァァァ。
ふふふ、目標へ頭突きを食らわせてやった。
どうだい、サッカー部のヘディングは。まあ、おでこよりむしろ後頭部か頭頂部のどちらかが多いんだけど。
おれはお地蔵さんアタック以外にネーミングできないでしょうよ。
かなり回転率が上がったと思う。
ただ、ネックなのが助走が必要であることと、一平面上でしか動かないことだ。
三次元に生きてるのに、一平面運動しかできない。
サイよりも自由の効かないバカになっている。
不意打ちが失敗すればやがて重力で地面にめり込む。
これはちょっと外に出るのがめんどくさいので、他になにか攻撃スタイルを考えなければ。
当面の課題は機動性だね。
剛体化中の体の自由が効かないってのは一番なデメリットをどう乗り越えていくのか。
新しいスキルや魔術を習得できるまではひたすら成長だな。
*
「淵上、、、あいつ一人で何やってるんだよ。」
なぜか一人で城壁外、魔物が跋扈する地域に出てきている。
淵上は茜、、長谷川と同じグループで、しかもリーダー的な存在であった。
そんな人物が一体絶対どうしたって理由でこんなところに、しかも一人で。
魔物と戦う姿はとても心配になるものだった。
一方的にボコボコにされている。
しかし、まじで何してるんだろう。
なぜ剣で戦ってるっぽいけど、非力で攻撃が通っているようにも見えない。
魔術やスキルは使わないのか。
相手は初日に勧められて、『逆転』が興味を示さないような存在だぞ。
淵上を徐々に追い詰められていった。
これは、俺は助けるべきなのだろうか。
以前の俺なら真っ先に助けに入ったんだろうな。
ただ、あいつも俺のことを、話も聞かずに悪だと決めつけて謗ってきた。
助けたって文句言われるだろうし、、、
「はぁ、、、ぁはぁ」
まてよ、どうして淵上は一人なんだ。原点に立ち返って考え直せ。
だっておかしいだろ。グループのリーダーがこんなところで。
俺と同じなのか。追い出されたのか。
だったら、同じ被害者か?
いや、はやとちりの可能性もあるだろう。
へんな情に流されるな。、、、、
「くっそ、それじゃ死ぬぞ」
助けるわけじゃない、狙った獲物が同じだっただけだ。
「くらえ、お地蔵さんアタック!!!」
緑の小人に向かって猛ダッシュ、加速、剛体化。
一撃で粉砕する。
「きゃっ」
淵上は全身怪我をしている。
ただ、今すぐ治さないと命に関わるようなものはない。
「あ、あの」
なんで話しかけてきたんだよ。いや、まだ俺だと気づいていないだけか。
バレていない間にさっさと逃げよう。
『加速I』で空中に飛び、『剛体化』、そして加速向きを変えて飛んでいった。