第十五話
戦いから1日が経ち、俺はエルノーラとは別行動を取ることにした。
ポラトヴィアが故郷だということはわかっているし、どこかで会えるだろう。
元クラスメイトから、ある情報を聞いた。
『眞鍋 桜と重岡 仁がヘレニアに、魔人族関連でヘレニアへ向かっている』
という話。
なんでも、魔人族のその特異な体質の研究の協力に向かっているとのこと。
5人も聞いてはいなかったが、戦っていてあの再生能力についてだろうと思うとのこと。
眞鍋と重岡はどちらも覚えている。
ぼっちだったはず。衣笠もぼっち、ていうかあいつは天才だからちょっと浮いてたというか、孤立してたというか、そんなだけど。
異世界に来てまでぼっちって、あの2人はすごいな。
ま、異世界に来てぼっちになった俺が言えることじゃないんだけど。
セレナさんがその場で紙? みたいなのを書いてくれた。
水戸黄門のあれみたいな奴だと思う。
この紋所が目に入らぬか!!
みたいなね?
しばらく1人だな。
問題なく国境を通過させてもらえ、ガロネシア以外の国に発上陸。
アドリアノヴァとか言ったか。
正直、あまりガロネシアといた頃とあまり違いはわからないな。
とりあえずヘレニアに行けるルートを考えなきゃな。
「なあ、ここからヘレニアに行きたいんだが、どうやったら行ける?」
ギルドはどこにでもある。
世界支部的ですごいな。どれだけ大きな組織なんだろう。
それともガロネシア周辺でしかないのか。
どっちでもいいけど。
「陸路と海路のどちらで向かわれますかね。」
「あまりよくわからないんでね、詳しい説明お願いできませんかね。」
「はい、それでは、現在地がセレスティア省のステラリウム。ここから陸路ですとヴァントゥーラ省からバルカニアに入国し、さらに南下してヘレニアへと向かいます。
対して海路ではテラノヴァ省のポルテまで向かい、そこから海路でヘレニアへ向かいます。
安価で安全、しかし日数がかかるのが陸路ですね。
海路は高価で危険も伴う。ただ、最速で一日のうちに着くのでお金があるのであればこちらをお勧めします。」
どうしたものか。
急いで向かう意味があるのかどうか。
金に余裕があるわけではないしな。
思案していると話しかけてくる。
「商人の護衛として商船に乗って移動される冒険者さんもいらっしゃいます。こちらで探してみましょうか?」
「ありがとうございます。お願いします。」
金ももらえて移動もできるならそれが一番だ。
少し待つと受付の人は4日後にポルテへ出航予定の商人がいると教えてくれた。
護衛期間は三日間。
途中いろんな都市に寄ったりするようだ。
***
四日間することもなく、何もしないのも違うと思うので街へ繰り出すことにした。
商業連邦国というだけはある。街は活気に満ちている。
貿易で物が集まるのか、ガロネシアにいた頃にはみたことないようなものばかりだ。
中世ヨーロッパってこんな感じなのかな。
「そこのお兄さん!!」
「どうしたんですか?」
「ちょっとお願いがあるんです。変な人に追われてて、僕は右角に行ったてことにしてくれませんかね。」
痩せた子供にお願いをされる。
おいおい、何しでかしたんだ。
ちゃんと罪は償わないといけませんぞ。
俺の返事を聞く間もなく、少年は物陰に隠れてしまった。
暫くすると、少年が言っていたであろう兵士がぞろぞろと現れる。
本当に何したんだ。
「すみません、こちらに私の胸くらいの背の高さの少年が走ってきませんでしたか?」
嘘をつくのは、、
「あの右角を曲がりましたよ。目を迸らせながら、こんなところで捕まるわけにはいかないんだと叫びながら肩で息してました。」
奥で物音が。
「聞いたか、こんなチャンスまたとないぞ!
ご協力感謝します!」
兵士たちはまたぞろぞろと右角を曲がっていく。
暫くして、少年はひょっこり顔を出した。
「嘘つき」
「売られなかっただけマシだと思え。何やったんだよ。」
「、、、、なにもしてないよ。」
「っなわけ」
面倒ごとな気がするので関わらないように、そそくさとその場を離れようとすると、少年が俺の腕をしっかりと掴み離さない。
腕をぶんぶんと振ってみるが、しがみついて離れない。
遠心力で吹き飛ばしてやろう、腕を掲げて回転させても離れない。
「なんなんだ!!」
「訳アリなんだろ!
金は出すから助けてくれ!!!」
訳アリはどっちだよ、と突っ込みたくなる衝動を抑え、少年の瞳を見据える。
金はある。と。それ綺麗な金か?
マネーロンダリングってやつに利用されかけているのか?
それ犯罪だろ。
「なにしてほしいか具体的に説明してくれ。」
「ついてきてくれ!!」
「だからそのための理由を」
言われるがまま、腕を引かれて走り出す。
こんな少年1人振り切ることも可能だが、なぜ俺はそれをしない。
自分の行動に疑念が生まれた。
連れてこられた場所には、木の上で降りれなくなっている少女。
その理由は気が高いからなどではない。
少女の下、あれは魔物か。
「あとで説明しろよ。」
『剛体化I』と『加速Ⅲ』の併用コンボでサルを殴り飛ばす。
ウキーと言いながら山を転がり落ちる。
「猿のくせに木に登らず、少女が降りてくるのを待つなんて悪趣味なこった。」
仲間と思われるサルが襲いかかってくる。
近くにあった石を手に取りそれで殴ろうということらしい。
長い腕を掴んで地面に叩きつける。
「石は殴るより投げることに使いな!!」
別の仲間が背中に飛びかかり、木の枝を刺そうとするが、それを『剛体化I』で防ぐ。
木の枝の方が折れたことに驚いたサルの首根っこを掴み、そのまま別のサルへと投げる。
「こいつら、、、趣味が悪いんじゃなくて頭が悪いのか?」
「ウッキー!!」
「うおおおお!!!」
いつのまにか少年が目に傷のあるサルに殴りかかっていた。
しかしそのサルはなんともない様子。
少年の腕を掴むと何度も高速で殴り始める。
「っく!」
戦っていたサルを放置し、少年の元へと向かう。
そのまま目に傷のあるサルへお地蔵さんアタック。
「馬鹿野郎、なにやってんだ。」
「だって」
「だってじゃない。」
言い残し、残りのサルを掃討する。
俺1人で十分対処できる相手だ。
数は多いが問題ない。
「こんなもんか。」
山のように積み上がったサル。
殺すのはどうかと思い、強めに殴る程度に留めておいた。
跳び上がり木の上から少女を下ろす。
少女が少年に飛びつく。
「うわああああああ」
少女は号泣。少年はそんな少女に抱きしめられて恥ずかしそう。
「泣くなって。」
「わあああああああ」
少年には一言二言、余計なことするなと説教しようと思っていたが、やめとこうか。
この感じだと俺が余計な人間になりそうだし。
「っふ。」
少女が泣き止むと、少年はこちらへと駆け寄り、血だらけの顔面を下げた。
「少女とおれ、、、、ぼくを助けてくれてありがとうございました。
必ずお金を払うので、、、」
「いらないよ。」
「でも、冒険者を雇うにはお金が必要だって。」
「大切な人は守れたか?」
「え? はい。」
そりゃよかった。
大切な人が、会えなくなったり話せなくなることは辛いよ。
守れてよかった。
「だったら問題ないな。」
そうだな。今日は暇な一日になると思っていたが、少し元気をもらえた気がする。
不思議な表情をした少年と、不安そうに少年の後ろに隠れる少女。
「そんな、僕、申し訳」
子供のくせに変なこと考えて。
「だったら今度は助ける番になれ。
君はまだ弱い。けれど、きっと強くなれる。
強くなった時、今日のことを思い出して、それで、おんなじように困っている人がいたら、迷わず手を差し伸べてやってくれ。
その時、金を取るんじゃないぞ。それがお代ってことで受け取っておくよ。」
随分と、キザなことを言うようになったな俺も。
異世界に当てられたか。
少年の瞳が大きく開かれたような気がした。
ところで、なぜ兵士に追われていたのか。
なぞは深まるが、そこは敢えて突っ込まないことにした。
***
「そう言えば」
溜まりに溜まったポイントの分配でも、この気を活かしてやっておこうかな。
これは、こう。こっちはこう。
<<<ヤガミ レオ 16歳
体力 D+
筋力 C→B-
防御力 E+→D
魔力 E
魔法防御 E→D
瞬発力 C
メインスキル 『剛体化Ⅰ』
サブスキル 『演算Ⅰ』
ユニークスキル 『逆転』
コモンスキル 『加速Ⅲ』
『無反応性化』
魔術 『土魔術・初級』>>>
くそ、まるで成長しないな。
ステータス欄はまた1人になってしまった。
寂しさと、失った怒りが同時に込み上げてくる。
落ち着こう。
冷静に。
「にいちゃん、ゲームやってかないか?」
テーブルにカードが何枚か。
「何してるんだ?」
「クラッキングだ。」
ルールはブラックジャックまんま。
強いて違いがあるなら19を目指すってところか。
10とエースが出れば上がれる。
日本と違うところは賭けが前提にあるということ。
数字は1から17まで5種類のマークがある。
「暇だし、いいぞ。」
***
八神玲央が連れた。
俺はこの辺りでよそ者相手にイカサマクラッキングで金を巻き上げているだけの善良な詐欺師。
「にいちゃんどこから来たんだ?」
「俺か? ガロネシアだよ。」
へえ外国か。
このなりならごっそりと絞れそうだ。
「ガロネシアってことは、最近来た口だな!」
「そうだな、お、また俺の勝ち。」
ギャンブルのことも詳しくなさそうだな。
最初は蜜を吸わせて、途中で負けを増やし、少しづつ絞って、引くに引けないところまで持っていく。
「ん?」
「どうしたんだい?」
「いや、確率的に、、、そんなことあるのかなって。」
「な、なんのことだよ。」
なにを言ってるんだコイツ。
この長年詐欺で生きてきたが、こんなに早く異変に気づくやつは初めてだ。
確率って、適当言ってんのか?
「さあな、やっぱりなにが起きるかわからない。」
そろそろ、絞り始めていくとしますか。
イカサマ、本格始動。
のはずなのだが。
「やり!」
「っぐぬぬ。やるねぇにいちゃん。」
おかしい、なぜイカサマ、それもクラッキングというディーラー有利のゲームで勝てない。
「にいちゃん強いね〜。何かコツとかあるのかい?」
「コツか? そうだな、今まで出たカード引き算して、そこから可能性? を計算してる。」
なにを言っているんだコイツ。
すでに60枚はいってるぞ。
その全てを覚えているとでもいうのか。
「ただ、やっぱり数字が6回も出たり同じカードが何回も出るのはおかしいと思ったから、最初から枚数は正確だとみなして計算してないな。」
だったらどうしてそんなに勝てるんだよ!!
このガキ、インチキ使ってるのか、、、?
金が、どんどん、どんどん溶けていく。
小僧と目が合う、なんだ、なんだ、その馬鹿にするような目つき。
まるで俺を馬鹿にするような。
絶対、絶対有金全部吐き出させてやる。
「また勝ち〜。おじさん弱いな〜。」
「は、はは。そろそろ本気を出してみようかな〜。」
平常心、平常心だ。
大丈夫、まだイカサマに気づいているようではなさそう。
カードを覚えているわけがない。
そんなのは人智を超えている。
適当なことを言って俺を撹乱させようとしている、罠だ。
「大丈夫? スカンピンになる前に引くのがギャンブルだぜ?」
「大丈夫!!! この程度でのこと、今までの人生で何度も乗り越えてきたんだよ!!!」
クソガキは「そうか? でもやめたくなったらいつでも言えよ。俺はどうやらギャンブル強いらしいし。」なぞと抜かしやがった。
ギャンブル初心者でもこの実力っ!
天が味方しているとしか思えない。
それか、コイツも、、、
「にいちゃん、イカサマしてるのか!?」
「え?」
「お前、イカサマはよくないだろ!」
「は? 何言ってんだ。」
「何言ってるのはお前だ!
こんなに俺が負けるわけないだろ!
おかしいだろ!!」
「いや、最初明らかに負け続けたのはあなたじゃん。引けないようにいい気にさせようとした結果。
自業自得っすよ。」
「はぁ!?
俺が悪いって言いたいのかぁ!?」
イカサマした上に、それを素直に認めず逆ギレだとぉ!?
「あなたが最初に負け続けてなかったら、最初の勝率は五分五分だったと思いますよ。
序盤のカードの出方計算して、このゲームが最初からまっとうな確率じゃないことはわかってましたし。
全部負け続けてるのは、マジで自業自得っす。」
「なにを、、、、!?」
コイツ、コイツ、コイツ!?
なんだ、俺がわざと負けていた間に残りのカードの種類を予想して、そこから確率を導いていたとでもいうのか!?
ありえない、俺がやっていたイカサマは枚数だけじゃない。
常にカードを確認して、最後の方はお前は弱いカードばかり行くようにしていたのに。
なのになぜお前は強いカードを出し続けられたのだ。
「また勝った。まだ続けるんですか?」
「いや、もう、ない。」
くそ、くそ、くそ、くそ。
正当に、負けたのか。なんて、強運。
「頼む、そのイカサマを教えてくれよお!
俺も知りたいんだ!」
「だから何もしてないんだって、、、。」
***
「金が、増えたなぁ。」
<<<ヤガミ レオ 16歳
体力 D+
筋力 B-
防御力 D
魔力 E
魔法防御 D
瞬発力 C
メインスキル 『剛体化Ⅰ』
サブスキル 『演算Ⅰ』→『演算Ⅱ』
ユニークスキル 『逆転』→『逆転Ⅰ』
コモンスキル 『加速Ⅲ』
『無反応性化』
魔術 『土魔術・初級』>>>
おっさんと遊んだおかげで、なぜか演算と逆転のスキルが伸びた。
にしても、イカサマバレなくてよかったあああ。
途中から自分で引いていた過去のカードを再利用しまくってたんだけど、『逆転』が謎の智将ぶりを発揮して負けることはなかった。
「逆転、普段なにもしないくせにこういう時だけ以上に指示してくるんだよな。」
ゲーム中、うるさいくらい指示が飛ばされた。
これは捨てろ。これは大金かけろ。
演算、さっさと計算しろだの。
ちとは別のことにその能力を割いていただきたい。
そんな力があるのに、俺はイカサマにしか使えないなんて、、、、。
まあ、相手だってイカサマしてたわけだし。
別に、問題ないよな。




