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4話:御前試合①


  迷宮都市への任務まで少しの間、準備期間が設けられた。

 神祖の用意したレクリエーションを達成して、任務を共にする仲間としての意識を育むのが目的だ。しかし、クレアはそれを拒否した。


「貴方達と一緒に任務をやる意味が分からないわ。二人の戦力があれば私は要らないじゃない」


 その言葉にルーファスは苛立ちを覚える。


(こ、この女。神祖様の話を聞いてなかったのか? お前の役目は黒龍の反応を共鳴させて、研究組織リユニオンを発見する探知機だろう)


 心で思った事をそのまま言うわけにはいかない。理想の騎士の仮面を被りながら、優しく説得する。


「クレアさん。俺たちにはそれぞれ役割があり、得意不得意がある。戦力として十分だとしても、それ以外の役割がクレアさんには期待されているんだ。だから協力してもらえないかな?」

「私は魔剣騎士よ。力こそ全て。なのにその力が必要ないなんて……神祖様も何を考えているのか」

「クレアさん、神祖批判は目に余る」

「あら、怒った? 悪いわね。貴方は神祖のお気に入りだものね」


 露骨な挑発に、ルーファスはぶん殴りたくなるが、それを抑えて、ため息を吐く。代わりにアラが前へ出て、ルーファスの肩を叩く。

 前に出てきたアロラに、クレアはじろり、と睨む。


「なに?」

「もしかしてクレアちゃん、怖がっている?」

「なっ! そんな事ないわ!」

「でも、圧倒的な格上の私達が同行する任務に否定的よね。それって、上位層での戦いについていけなくて死んじゃうから怖がって、任務に否定的なんじゃないのかしら?」


 魅惑的に笑うアロラ。それに顔を赤くしてクレアは反発する。


「違う? クレアちゃん」

「怖いなんて思ってない! でもミッドガルから出るのが嫌なだけよ。手間のかかる弟がいるから世話をしてあげないといけないの!」

「ふーん。焦燥。ああ、そういう感じか……確かに黒龍はメンタルに影響を及ぼすし、クレアちゃんもそういうタイプかな」

「なにをひとりで勝手に納得して」

「クレアちゃん、魔力不調でしょ。体に痣や、割れるような疾患があるとか」


 その言葉に、クレアは大きく動揺した。


「やっぱりね。神祖様はこれを見越して私とクレアちゃんを引き合わせたのか。見た目は子供だけど、やっぱり神と言われるだけあるわ。ルーファスくん、今からクレアちゃんを治療するから服を脱がせる手伝いをして」

「は?」

「え?」


 呆然とする二人に、アロラは素早く指示を飛ばす。


「早く!」

「了解!」


 ルーファスはクレアを押し倒し、服に手をかける。


「ちょ、ちょっ、ちょっ! 強姦魔!! 鬼畜畜生!! 許されないわよこんなの!!」


 叫ぶクレアを無視して、アロラはクレアの胸に触れて、魔力を流し込む。するとクレアの体が風船のように膨らみ、音が鳴る。骨や筋肉がぶつかり合い、臓器などが移動している音だ。

 ルーファスは思わず、顔が引き攣ったが、そこは神祖の演技指導の賜物で表情は大きく崩れなかった。そしてクレアは元の形に戻った。見間違えるほど血色よく美しくなっていた。


 アロラは、元気よく頷く。


「よし、治療完了」


 ルーファスは驚きながら、クレアの上から退いてアウロラを賞賛する。


「流石ですね。魔力を用いた技術ではあるのでしょうが……これほどのものは見たことがない」

「ふふ、これでも魔力に関しては得意なの」

「心強い」


 ルーファスとアロラに対して、クレアが突っ込んだ。


「私に何をしたの!?」


 アロラは言う。


「貴方は黒龍の血によって魔力不調を抱えていた。そんな状態で危険な任務へ赴けば弟を残して死んでしまう可能性が高い。だから私たちに冷たい態度を取って任務から外すように進言するように誘導しようとした。違う?」

「悔しいけど合ってるわ。魔力不調は魔力暴走が近づいている証。そうすれば処分される。そうすれば弟が残されてしまう。だから直接言い出せなかった。ありがとう、助かったわ」

「いえいえ。でも、これでわだかまりはないわね?」

「あと一つ、あるわ」


 アロラは首を傾げる。それにクレアはルーファスを指さす。


「そこの神の使徒様に、乙女の服を剥いだ罰を受けてもらうわ! 私と勝負よ!」


 それにルーファスは素直に答える。


「普通に俺が圧勝すると思うが、大丈夫かい?」

「その傲慢ムカつく! ぶん殴ってやる」

「ま、まぁ、その程度なら幾らでも構わないが。では模擬戦をやろうか」


 そこでアロラが手を挙げる。


「なら私もやるわ! クレア側で参戦する!」

「いいわ、認めましょう」

「なんでだ。君の力を示すことが目的じゃないのか」

「貴方の顔を凹ませられればそれで良いのよ!」

「こ、この女……!」


 という流れで、親睦会と称した模擬戦が行われることになった。

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