e8:リョウの衝撃記事
アキトは、リョウの記事によって、かつての爆弾少年としての過去を暴かれ、激しいバッシングにさらされた。
メディアはアキトの過去をセンセーショナルに報道し、彼を「テロリスト崩れの政治家」と揶揄する者もいた。
支持率は急落し、議員辞職を求める声も上がる中、アキトは記者会見を開き、自らの過去と向き合い、謝罪と説明を行った。
しかし、世間の目は厳しく、アキトの政治生命は風前の灯火となった。
一方、ユウタは、リョウの記事を見て愕然とした。
彼は、リョウの行動がアキトを追い詰めることを理解していたが、同時にリョウの心の奥底にある苦悩も感じ取っていた。
リョウは、爆弾少年時代から常に冷静沈着で、グループの頭脳として活動していた。
しかし、その裏には、社会に対する深い絶望と怒りが渦巻いていた。
ユウタは、リョウがアキトを攻撃することで、自分自身を傷つけているようにも思えた。
ユウタは、リョウに連絡を取った。
二人は、かつて共に音楽を作り、夢を語り合った仲間だった。
しかし、今は互いに異なる道を歩み、それぞれの信念のために生きていた。
ユウタは、リョウとの再会を切望していたが、リョウはユウタからの電話に出ることはなかった。
諦めきれないユウタは、リョウがよく訪れていたという海辺のカフェに向かった。
夕暮れ時の海辺で、リョウは一人、物思いにふけっていた。
「リョウ…」
ユウタの声に、リョウはゆっくりと顔を上げた。
「ユウタ…なぜここに?」
リョウは、驚いた様子でユウタを見つめた。
「お前と話したくて来たんだ。なぜ、アキトを攻撃するような記事を書いたんだ?」
ユウタは、まっすぐにリョウの目を見つめた。
リョウは、しばらく沈黙した後、ゆっくりと口を開いた。
「俺は、ただ真実を伝えただけだ。アキトは、過去を隠して政治家になった。そんな奴が、平和を語る資格があるのか?」
リョウの声は、怒りと悲しみに満ちていた。
「だが、お前はアキトを傷つけた。彼は、本気で平和を願っているんだ」
ユウタは、必死にリョウを説得しようとした。
「平和? そんなものは幻想だ。現実は、弱肉強食の世界だ。アキトは、それを理解していない」
リョウは、冷たく言い放った。
「リョウ、お前は変わってしまったのか? 俺たちの夢はどこへ行ったんだ?」
ユウタは、諦めずにリョウに語りかけた。
「夢? そんなものは、もう捨てた。俺は、現実を生きている」
リョウは、そう言って立ち上がり、ユウタの前から去ろうとした。
「リョウ!」
ユウタは、リョウの腕を掴んだ。
「俺たちの音楽を忘れたのか? 俺たちは、音楽で世界を変えようとしていたじゃないか!」
ユウタの言葉に、リョウは足を止めた。
彼は、ユウタの言葉を噛みしめるように、ゆっくりと振り返った。
「音楽? そんなもので世界は変わらない。現実は、もっと残酷だ」
リョウの瞳には、深い絶望が浮かんでいた。
ユウタは、リョウの腕を掴んだまま、言葉を失った。
かつての仲間との溝は、深く、そして広かった。
しかし、ユウタは諦めなかった。
彼は、アキトを救うために、そしてリョウの心を再び開くために、ある決意をする。
ユウタは、ギターを手に取り、新たな曲を作り始めた。
それは、アキトへの応援歌であり、リョウへのメッセージでもあった。
ユウタは、自らの想いを音に乗せ、世界に向けて発信しようとしていた。
最後まで読んでいただきましてありがとうございます!
ぜひ『ブックマーク』を登録して、お読みいただけたら幸いです。
感想、レビューの高評価、いいね! など、あなたのフィードバックが私の励みになります。