e4:反逆の旋律
街の空は灰色に沈み、低く垂れこめた雲がビル群を覆っていた。
アキトたち「爆弾少年」のライブがニュースで取り上げられると、瞬く間に若者の間で話題となった。
学校の教室やカフェ、地下鉄のホーム――どこでも彼らの名が囁かれ、スマートフォンの画面には「爆弾少年」の映像が再生されていた。
だが、光が強ければ影も深い。
大人たち、特に政治家や一部メディアは、若者たちの熱狂を快く思わなかった。
〈暴力的な表現〉〈秩序を乱す存在〉として、彼らに目を光らせる者が現れ始める。
ライブ後、アキトはリョウとユウタと共に屋上に座った。
街のざわめきと、遠くの高架を走る電車の音。
夜風が髪を揺らし、アスファルトの匂いと混ざり合う。
「俺たちの音、もう止められないな」
リョウの目が鋭く光る。
ユウタは唇を噛み、言葉を選ぶ。
〈でも、止めようとする連中も出てくる〉その予感が胸に重くのしかかる。
翌日、SNS上ではライブ映像の拡散が加速していた。
コメント欄には熱狂的な支持者の声が溢れる一方で、批判や誹謗も増えていた。
「若者を煽動する危険なバンド」
「公共の秩序を乱す」
新聞記事はセンセーショナルな見出しで彼らを追い詰める。
アキトの心はざわついた。
〈音楽で人を変えたいだけなのに…〉
そんな中、学校での出来事も重なった。
授業中に教師が、「あのバンドは社会に悪影響を与える」と口を滑らせた。
友人たちの視線が一瞬痛く刺さる。
けれど、アキトは静かに拳を握った。
〈誰の目も、俺たちを止められない〉
数日後、次のライブの告知が街中に貼られた。
「若者の力で、未来を変える――爆弾少年、再び!」
会場にはこれまで以上に観客が詰めかけた。
初めて来る者、熱狂する者、ただ好奇心で来た者――人々の目は様々だが、音楽が生む共鳴は確かに存在していた。
ステージのライトが落ちる。
アキトは深呼吸し、ギターの弦を撫でる。
観客のざわめきが、胸の奥に波紋を広げる。
リョウがマイクに向かい、低く言った。
「俺たちは音で語る。言葉よりも、拳よりも、届くんだ」
ギターの轟音が空気を裂く。
アキトの指が弦をかき鳴らすたび、音はまるで街全体を揺さぶる力を持った。
観客たちの胸が高鳴り、思わず拳を突き上げる者もいる。
だが、ビルの高層窓の向こうで、冷たい目が彼らを見下ろしていた。
行政の監視、警察の警告、メディアの批判――
「この若者たちの熱狂は、いつか暴走する」
その予感は、アキトにもあった。
ギターをかき鳴らしながら、〈この音が誰かを傷つけることはないか〉と、少しだけ恐怖が胸をよぎる。
ライブの最後、アキトは力の限り弦を弾き、リョウとユウタと共鳴した。
爆音の余韻の中で、会場全体が一つになった瞬間、彼は確信した。
〈音楽は戦うための武器だ。そして、希望も生み出す〉
観客たちの歓声が、街の夜にこだました。
しかしその裏側で、見えない闇も確実に広がり始めていた。
アキトは夜空を見上げる。
灰色の雲の隙間に、微かに星が瞬いた。
〈俺たちはまだ、始まったばかりだ――〉
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