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青空と爆弾  作者: 108
4/10

e4:反逆の旋律

 街の空は灰色に沈み、低く垂れこめた雲がビル群を覆っていた。


 アキトたち「爆弾少年」のライブがニュースで取り上げられると、瞬く間に若者の間で話題となった。

 学校の教室やカフェ、地下鉄のホーム――どこでも彼らの名が囁かれ、スマートフォンの画面には「爆弾少年」の映像が再生されていた。


 だが、光が強ければ影も深い。

 大人たち、特に政治家や一部メディアは、若者たちの熱狂を快く思わなかった。

 〈暴力的な表現〉〈秩序を乱す存在〉として、彼らに目を光らせる者が現れ始める。


 ライブ後、アキトはリョウとユウタと共に屋上に座った。

 街のざわめきと、遠くの高架を走る電車の音。

 夜風が髪を揺らし、アスファルトの匂いと混ざり合う。


「俺たちの音、もう止められないな」


 リョウの目が鋭く光る。

 ユウタは唇を噛み、言葉を選ぶ。

 〈でも、止めようとする連中も出てくる〉その予感が胸に重くのしかかる。


 翌日、SNS上ではライブ映像の拡散が加速していた。

 コメント欄には熱狂的な支持者の声が溢れる一方で、批判や誹謗も増えていた。


 「若者を煽動する危険なバンド」

 「公共の秩序を乱す」


 新聞記事はセンセーショナルな見出しで彼らを追い詰める。

 アキトの心はざわついた。

 〈音楽で人を変えたいだけなのに…〉


 そんな中、学校での出来事も重なった。

 授業中に教師が、「あのバンドは社会に悪影響を与える」と口を滑らせた。

 友人たちの視線が一瞬痛く刺さる。

 けれど、アキトは静かに拳を握った。

 〈誰の目も、俺たちを止められない〉


 数日後、次のライブの告知が街中に貼られた。

 「若者の力で、未来を変える――爆弾少年、再び!」


 会場にはこれまで以上に観客が詰めかけた。

 初めて来る者、熱狂する者、ただ好奇心で来た者――人々の目は様々だが、音楽が生む共鳴は確かに存在していた。


 ステージのライトが落ちる。

 アキトは深呼吸し、ギターの弦を撫でる。

 観客のざわめきが、胸の奥に波紋を広げる。


 リョウがマイクに向かい、低く言った。


「俺たちは音で語る。言葉よりも、拳よりも、届くんだ」


 ギターの轟音が空気を裂く。

 アキトの指が弦をかき鳴らすたび、音はまるで街全体を揺さぶる力を持った。

 観客たちの胸が高鳴り、思わず拳を突き上げる者もいる。


 だが、ビルの高層窓の向こうで、冷たい目が彼らを見下ろしていた。

 行政の監視、警察の警告、メディアの批判――

 「この若者たちの熱狂は、いつか暴走する」


 その予感は、アキトにもあった。

 ギターをかき鳴らしながら、〈この音が誰かを傷つけることはないか〉と、少しだけ恐怖が胸をよぎる。


 ライブの最後、アキトは力の限り弦を弾き、リョウとユウタと共鳴した。

 爆音の余韻の中で、会場全体が一つになった瞬間、彼は確信した。


 〈音楽は戦うための武器だ。そして、希望も生み出す〉


 観客たちの歓声が、街の夜にこだました。

 しかしその裏側で、見えない闇も確実に広がり始めていた。


 アキトは夜空を見上げる。

 灰色の雲の隙間に、微かに星が瞬いた。


 〈俺たちはまだ、始まったばかりだ――〉

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


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