漆黒の勇者一行とギルドマスター
「な、何でお前が生きてんだ!」
「ワイバーンに食われたんじゃ!」
「馬鹿な!」
「嘘だろ! 化けて出てきたのか!」
彼等は死んだと思っていた人間が出てきてビックリしている。ただ、その拍子に自分たちが不利になるような言葉を漏らしちゃってるなー。
しかも、何か1人だけダリアを本当に幽霊だと思って顔を真っ青にしてビビってる人もいて面白い。
「そうです。あなたたちに殺された怨みをはらすべく、あの世から蘇ってきました」
あ、その幽霊設定は使うんだ。
どうやら彼女は彼等の反応を見て遊ぶことにしたみたいだ。
「嘘つけ! 幽霊なんて居てたまるか!」
「ヒィィィィ!」
「ごめんなさい!」
「悪霊退散! 悪霊退散!」
リーダーっぽい人を除いて泣き叫んでだり頭を抱えたりとメンタルが大変な事になってる。
「冗談は程々にして、ダリアさんからもお話を伺っても良いですか?」
このままでは事態の収拾がつかなくなると感じたのか受付嬢がストップをかける。
「はい、大丈夫です。私はワイバーンが見えた瞬間に戦えるよう準備に入ったんです。ですが、そこの彼等に背後からいきなり攻撃されてダメージを負ったんです」
「つまり、彼等が言っている事は嘘で、本当は背後から奇襲した上で囮にして逃げ帰ったと」
「違う! この女は嘘をついてるんだ!」
そう言われた彼等のリーダーは顔を真っ赤にしながら反論するが、この展開でそれは無理があるのでは?
「あなた方が嘘を報告して、私が生きている事が何よりの証拠だと思いますが?」
「くそ! 何で生きてるんだよ! 大人しく死んでおけば良かったものを!!」
ダリアに反論されたリーダーは悔しそうに手を握りしめながら言い放った。
そのセリフはもう自白しているのと同じようなものだと思うけど。
「何が勇者一行ですか。名前とのギャップがありすぎて滑稽ですね」
いいドヤ顔してるなダリア。まぁ、生贄にされたら誰だって怒るし、やり返したくなるよね。
僕だったら絶対に仕返しをしてやろうと思うし。
「馬鹿にするな! お前が大人しく死んでおけば良かったんだ!!」
そう言って興奮したメンバーの1人がダリアに攻撃をしようと動き出した。
ダリアはまさかこの状況で攻撃されるとは思っていなかったのか硬直状態になっている。
なので聖剣を召喚してダリアを殴ろうとした相手の右腕を斬り落とす。
「ぐぁぁぁぁ!! 俺の右腕が!!!」
「大丈夫?」
「はい、ありがとうございます。レン様のおかで助かりました」
まぁ、明らかに大丈夫じゃないのは腕を斬り落とされた奴だけど。
まったく、酷いことをする奴もいたもんだ。
「何事だ!!」
騒ぎを聞きつけたのか、いきなり熊のような体格をしたおじいちゃんが慌ただしく出てきた。
きっと、あれがここのギルドマスターなんだろう。
あの見た目と登場の仕方で何でもないモブだったら面白すぎる。
「ギルドマスター!!」
やっぱりギルドマスターか。
いかにもって感じの見た目だね。
出てきたギルドマスターは受付嬢に事情を聞いているようだ。
「それでワイバーンは?」
一通り話を聞いたギルドマスターがワイバーンについて尋ねてくる。
「私は彼に危ない所を助けてもらいました。ワイバーンも彼が討伐してくれたんです」
そう言ってダリアが僕を紹介してくれた。
「なるほど、ちなみに討伐した証は何か持っているか」
まぁ、口だけで真実だと断定は出来ないよね。実際に討伐系のクエストでも剥ぎ取った部位を持って行かないといけないし。
「これです」
ワイバーンの死体をアイテムボックスから取り出す。
「な! 収納魔法が使えるのか!!」
ギルドマスターはワイバーンが丸ごと出てきたことよりも収納魔法が使える事に驚いていた。
ワイバーンも体が大きいからこの場所で出したら大分インパクトがあるのに。
もしかしたら、収納魔法は使える人材が少ないのかも知れない。
だからって隠す気は無いけど。だって、収納魔法便利なんだもん。
それこそ、こういう物を出さないといけない時に直ぐに出せて楽だ。
収納魔法を人前で使えない事でのストレスの方が大きそうだし。
「おい、アイツ収納魔法が使えるみたいだぜ」
「っていうか、ワイバーンを倒したのかよ」
「この前のオーグを殺った新人じゃねぇか」
「ワイバーンが討伐されたのは良く分かった。君たちはまた明日ギルドに来てくれ。」
そう言ったギルドマスターは漆黒の勇者一行を連れて奥に消えていった。
ついでにワイバーンは冒険者ギルドに買い取ってもらう事にした。
・・・
あれから1日が過ぎ、今日はダリアと冒険者ギルドで待ち合わせをしている。
昨日の事についてギルドマスターからお呼ばれされているからね。
「おはようダリア」
「おはようございます」
「じゃあ、行こっか」
「はい、行きましょう」
冒険者ギルドに入ると受付嬢に呼ばれて、ギルドマスターが待っている部屋に案内された。
「来てくれたか」
多分ギルドマスターの部屋なんだろう。ソファーや机なんかが置いてある。
「失礼します」
「あぁ、来てくれてありがとう。座ってくれ」
ソファーに座るように促されたので、遠慮なく座らせてもらう。対面にはギルドマスターが居て、横にはダリアが居る。
なんだか三者面談のような感じだ。
ちなみに、ソファーは座りやすくて居心地が良さそうだ。
「それじゃあ、昨日の件について話すとするか」
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