ワイバーンと自己紹介
「そんな……」
ワイバーンが飛んでくるのを見た彼女は諦めたような表情した。
「大丈夫だよ、安心して。僕が戦うから」
しかし、僕がそう言うと先程の表情とは違い、覚悟を決めたような顔つきになった。
「ありがとうございます。先程は傷のせいで上手く発動させる事も出来ませんでしたが」
そう言った彼女は力強い顔つきで両手を合わせて祈るような仕草をした。
「おー、何かいつもより力が湧いて来る気がする」
まぁ、鑑定をしているから彼女の持っているスキルの事は知ってるんだけど。
「それは私のスキルの効果です。あまり人に知られたくはないので内緒にして下さいね」
そう言った彼女は人差し指を立てて、口の前に持っていき、口と鼻に当てるポーズをした。
うん、凄く可愛い!
これなら何でも言うことを聞いちゃうよ!
「うん、絶対に誰にも話さないよ!」
「はい、お願いします」
そうやって僕が美少女と会話をしていると、邪魔をする間男?(ワイバーン)が攻撃をしてきた。
もしかしたら、メスかもしれないけど。
「Gaaaaaaaa!!」
ワイバーンは上空から火の玉を放ってくる。当たれば簡単に家を一つ壊せそうな威力と大きさだ。
僕は聖剣を召喚して火の玉の真ん中を真っ二つに斬り、半分になった火の玉は両端に飛んでいった。
一度やって見たかったんだよね、アニメみたいに魔法を剣で斬るの。
でも、良く考えたら誰かを守りながらする事では無かったかな。
斬るのに失敗してダリアに当たったら一大事だし。
ワイバーンは懲りずに火の玉を飛ばしてくる。今度は3発連続での攻撃だ。
次に飛んでくる火の玉はさすがに剣では斬らなかった。
今度は結界を張って攻撃を凌ぐ。やっぱりワイバーンの上空を征しているアドバンテージは大きいな。
「アイスランス」
なんとか奴を地面に引きづり下ろせないかと試しに魔法を打ってみるが、器用に体を回転させながら上手く避けられた。
うーん、あれを試すか。
1つやってみたい技があったんだよね。
僕はワイバーンが攻撃を放とうとしているタイミングで転移魔法を発動する。
転移魔法なんて使った事は無かったが、スキル賢者のおかげかスムーズに発動する事が出来た。
そうしてワイバーンの後ろに転移した僕は胴体に聖剣を振り下ろす。
攻撃を食らったワイバーンは勢いよく地面に衝突した。
戦闘が始まる前に鑑定をしたワイバーンのレベルは84と高かった。
だけども、今の僕のステータスはスキル勇者のおかげで5倍に。
更にダリアの支援でそこから2倍になり、合計で10倍になっている。
そんな僕の攻撃を喰らえばひとたまりもないだろう。
ワイバーンは地面に降りた僕を見つめるだけで動かなくなった
ただ、最後の意地なのか近づくと口の中に炎を溜め始めた。
そして、火の玉がワイバーンの口から発射されるが、結界を張って凌いだ僕は聖剣でワイバーンの首を切り落とした。
「つ、強い。いくら私のバフが掛かってるとは言え……」
後ろにいるダリアがとても驚いた表情をしている。
「ふー、終わった」
「あの、助けて頂いて本当にありがとうございました!」
「うんうん、気にしないで。それより、逃げた彼等の事はギルドに報告したりするの?」
「はい、その予定です」
「じゃあ、早いうちにケリをつけちゃおうか」
「え?」
「はい、転移」
驚くダリアの肩に手を乗っけて、さっき覚えたばかりの転移魔法で街の近くまで移動する。
「あ、あれ?」
何があったのか分からずに辺りをキョロキョロと見渡すダリアに説明をする。
「転移魔法で移動したんだ」
「これが転移魔法……」
どうやら、転移魔法を使われるのは初めてだったみたいで、彼女は驚いたような表情をしている。
「今から追いかければ転移魔法でショートカットした分、彼等に追いつけるんじゃない」
「そうですね、助かります」
・・・
いきなりギルドに転移魔法で飛ぶのもアレなので、僕とダリアは平原から冒険者ギルドに歩いて移動していた。
「そういえば、自己紹介がまだだったね。僕の名前はレン・サトウ。よろしくね!」
「はい、私はダリアと言います。レン様と呼ばして頂きますね」
まぁ、彼女の名前は最初に鑑定で見たから知っているんだけど。
「様付けは辞めてくれると嬉しいかも。そんな呼ばれた方したことないし」
さすがに様付けで呼ばれたことは、日本で暮らしていた僕としては違和感がある。
「ダメですか?」
少し悲しそうに上目遣いで聞くのはずるくないかな?
「ダメじゃないかな」
そんなの可愛いすぎてOKしちゃうじゃん!
「これからよろしくお願いしますね! レン様!」
不覚にもダリアの花が咲くような可愛らしい笑顔を見て胸がときめいてしまった。
「う、うん、よろしくねダリア!」
こんな感じで、道中はお互いに自己紹介をしたりしながら冒険者ギルドに向かっていた。
そして、たどり着いた冒険者ギルドの扉を開ければ、
「くそ! 俺たちに力があれば」
「あの2人が囮になって俺たちを逃がしてくれたんだ!!」
そんな事を叫んでいる4人組がいた。
どう見てもあれが漆黒の勇者一行だろう。
何かコイツらのせいでさっきまでの良い雰囲気が台無しだなぁ。
僕の隣にいるダリアなんか虫けらを見るような冷たい目をしてるし。
「それで、あなたたちは何とか生き延びてワイバーンの脅威をギルドへ伝えに戻ってきたと」
「そうだ! あの2人は俺たちにワイバーンが来てると伝令を街へ届ける為の囮になってくれたんだ!」
必死な様子で受付嬢に身振り手振りを入れながら説明するリーダーらしき人物。
「では、その囮になった彼女に聞いてみますか?」
「は??」
そう、彼等と話している受付嬢は途中からダリアの存在に気付いていたのだ。
向こうからしたら彼女が生きていることにもビックリだし、この場に現れた事も誤算だろう。
「また会いましたね。私を蹴り飛ばして逃げた臆病者の皆さん」
そして、ダリアは凄く良い笑顔で彼等に向かって言い放った。
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