経験値と模擬戦
「ガキの癖に分かってんじゃないか!!」
僕が模擬戦を受けるって言ったら男は急に良い笑顔になった。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫です。新人に絡むことしか出来ない雑魚には負けませんよ」
「何だとテメェ!! 今なんて言った!!」
「もしかして、頭だけじゃ無くて耳まで悪いんですか? 自分より弱そうな相手にしか絡めない雑魚って言ったんですよ」
「このクソガキ!! 生きて帰れると思うなよ!!」
僕に挑発された男は顔を真っ赤にして怒っている。
どうやら沸点も低そうだ。
「レンさん、あんなのでも彼はDランク冒険者なんです。本当に大丈夫ですか?」
受付嬢の子が心配そうな様子をしながら男のランクを教えてくれる。
これぐらいの強さがDランクなのか。それなら僕は最低でもCランクぐらいの強さはありそうかな。
「大丈夫ですよ。どう見ても雑魚じゃないですか」
「テメェ!! また言いやがったな!!」
まだ模擬戦は始まって無いけど、あの男は今にも殴り掛かっきそうな感じだ。
「ルールは相手が降参をするか戦闘不能になったら負けってことで大丈夫ですか?」
「いいぜ!! この俺に楯突いたことを後悔させてやる! もし死んでも文句言うなよガキ!」
「な、あくまで模擬戦ですよオーグさん!」
「では、お互いに万が一にも相手の攻撃で死んでしまっても文句は言わないって事で」
受付嬢の子が止めようとしてくれたけど、僕にとってもそっちの方が都合が良い。
お互いに自分が負ける訳が無いと思っているから、こういう状況になるんだろう。
「あぁ、ぶっ殺してやるぜ!!」
・・・
「おいおい、オーグの奴またやってるぜ」
「金が無いんだろ」
僕は冒険者ギルドにある訓練場で男と対峙している。
周りには野次馬も居て、人が集まって来ている。
この人、金が無くなるたびに新人に絡んでるのかな?
「おいガキ、有り金を全部差し出して土下座するなら許してやろうか」
男がニヤニヤしながら提案してくる。
「もしかして、僕にビビったの?」
当たり前だけど、そんな提案を受け入れる訳が無い。
「そうかよ! くたばれ!!」
そう言った男はこちらに向かって突進しながら斧を振り回して来る。
僕が攻撃を交わすと当然相手も追撃をしてくる。左上から斧を振り下ろした後は右下から振り上げる。
「クソ!」
しかし、何回攻撃しても僕に傷1つ付けられない。男の素早さは62で僕は78。そこから勇者バフで5倍になっているから390。
これだけ素早さが違えば相手に攻撃を当てるのも難しいだろう。
ましてや男はただ力任せに斧を振っているだけだ。
「もしかして、もうギブアップですか? やっぱり弱いですね」
「クソが!! 俺様を舐めやがって!! 死ねや!!!」
顔をさらに真っ赤にしてこちらを睨んだオーグは、今までよりも大振りで斧を振り下ろしてくる。
「なっ!! そんなバカな! どうなってるんだ!!」
今度は避けることはせずに、片手を前に突き出し攻撃を受け止めた。
といっても、素直に受け止めたのではない。手の前に小型の結界を作り出したのだ。
もちろん、避けた方が安全だというのは分かっている。
でも新しい技を試してみたかった。それにこの程度の攻撃ならステータス差があるから平気だろうと思っていた所もある。
それに、いざ強敵と戦った時にぶっつけ本番で試すよりも、弱い相手で練習をしておきたかった。
「アイスランス」
そしてもう一つ試しておきたかったのは魔法。騎士たちとの戦いでは使用しなかったから、タイミングあれば使おうと思っていたのだ。
発動した魔法は僕の創造した通りに働いた。これもスキル賢者の恩恵だろう。
僕の周りには野球のバットと同じぐらいの大きさで出来た氷の槍が20本ほど浮かんでいる。
「いけ」
それを僕の魔法に動揺して動けずにいるオーグに向かって飛ばす。
「な、ま…待ってくれ!」
当然そんな言葉を吐いたところで意味はなく、既に発射されている氷の槍がオーグの体中の至るところに突き刺さる。
「ガハッ!」
氷の槍に貫かれたオーグは立っている事が出来ずに血を吐きながら地面に倒れた。
さすがに普通の人間があれだけの傷を負ったら生きてられないだろう。
「おい、オーグの奴死んだぜ」
「マジか」
「自業自得だな」
などと試合を観戦していた冒険者が盛り上がっている。
本当は何か依頼を受けようと思っていたけど、この空気の中で居座るのは嫌だ。
ここに残ることで、何か面倒ごとが起こっでも嫌なので冒険者ギルドを出ることにした。
取り敢えず今日から泊まる宿でも探そうかな。
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