第6話 ー これだけ?
「うわっ! なんだこれ?」
目の前に、半透明のボードがいきなり現れた。大きさはタブレットPCくらいか。そしてなにやらアイコンのようなものがいくつか並んでいる。
「とりあえず、オレンジ色の人間マークのところをポチってしてみて?」
「お、おぅ」
眼前に当たり前のように浮かぶボード。
そこに表示されている左上のオレンジアイコンを言われるがまま押してみる。
エイミー・ライトウェル
人間族 16歳 女性
職 教師
体 18/18
知 68/68
魔 48/48
運 20/20
なるほどね。俺、16歳なのか……。
『体』はいわゆるHP、『知』はおそらく賢さのことだろうとは想像に難くないんだが。って、『魔』ってなんだろう?
そしてミームの言っていた通り、職は教師のようだ。
浮かぶ半透明のボードとか、もう異世界のテンプレそのものだな。まぁそのへんもいずれ追々わかるだろう。そしてどうやらこの半透明のボードは、前世で言うタブレットPCそのもののようで、指で色々操作できるようだ。俺はさらにその画面を指で送ってみる。
装備:町娘の服
銀の髪留め
うん、確かに改めて自分を見てみれば町娘そのものの服だ、ごくごく普通の。当然娘の服だからスカートなのだが、どうにもスカートっていうもの自体初めてだからスースーする。膝丈のスカートですらこうだから、前世でよく見かけたミニスカギャルとかどうなっちゃうんだろうか。それ以前に、装備っていうほどのものじゃないだろこれ、ただの普段着じゃないか。
そして再び画面を送ってみると、今度はスキルが表示された。いいねいいねスキル。これこそ異世界転生の醍醐味だ。
スキル:そこそこ高き教養
読み書き
算数
……えっ、これだけ?
そこそこ高き教養はなんとなく理解できる。教師だしな、知らんけど。それより『そこそこ』ってなんだよ。そこは普通に『高き教養』でいいだろ。まぁ前世でも勉強はそこそこだったから、間違いではないけど、なんか釈然としない。
そしてこれ。『読み書き』って普通じゃないかこれ? 『算数』だって普通できるだろう?
『数学』じゃなく『算数』と表記されてるってことは、小学校程度、ってことなのか? 算数はさて置き、数学めっちゃ苦手なんだけど。俺、大丈夫か?
「えっと、神様……?」
「おっ? キミ、今『様』付けで呼んだね? いい心がけじゃない」
「そんなことはどうでもいいんですけど」
あまりにも普通すぎてどうしたらいいのこれ。そしてなぜか敬語になったのは、敬っておけばなんか凄いスキルとか追加してくれるんじゃないかという、一縷の望み的な何かがそうさせたに違いない。
「こんなので俺この世界で生きていけるんですかね?」
「もちろん大丈夫よ」
「ほんとかよ……」
せっかく異世界に来たのにすごく普通じゃないかこれでは。でもまぁ生き返してもらっただけでもよしとするしかないのか……。
なんか思ってた『異世界転生』とは随分と乖離してて俺少ししょんぼり。
「とりあえずさ、街にでも行ってみたらどうかな?」
「街か……」
そういえば家から一歩も出ていないな、当たり前だけど。この世界の記憶がほぼない俺は、言わば『中身は赤ちゃんそのもの』だ。
街はおろか、この家の記憶もないんだから、街まで行ってみるのはいいかもな。いやいやそれよりもまずは家周辺を見て回るかな……。
と、あれこれと思案していると、
「それね、ステータスボードって言うんだけど、この世界のマップも見れたり、他にも色々使えるからなにかと便利だと思うわよ」
ほう、ステータスボードっていうのか。まぁそれ以外に最適な名前が今はちょっと思いつかない。
「ほんとかよ!? すごいなそれは」
確かによく見ると地図っぽいピクトグラムの書かれたアイコンがある。試しに押してみると。
「お……、おぉー!」
そこに表示されたのは、この世界であろう広大なマップだった。




