第67話 ー サービス回 for us
「わたしもせんせえみたいなおむねになれる?」
くりっとした目を凛と向け、首を傾げるミーム。やはり女の子にとっては、いつの世もどの世界でもどの年代でも胸の大きさは重要案件らしい。今、彼女は自分の胸をさわさわと撫でて「おーきくなーれおーきくなーれ」とおまじないをかけている。
私はこちらに転生する前は普通の男性として生きていたから、女性の容姿がどうとか服がどうとか、正直わからない。
例えば髪型なんかは、気になったらシルフィードにお任せでカット(もちろん禍魔威太刀で)してもらっているし、服や下着などは元々家に置いてあったものを着用、追加購入したものはいずれもダフィーに選んでもらったものばかり。つまり女性としての最低限の嗜みは全て人任せなのだ。
ということで、見た目と身体的機能は女性で、しかもちゃんと女性として過ごせてはいるのだけど、後天的なもの――服のセンスや女性らしい嗜好――は、未だによくわからないのだ。花は前世よりも好きになったけど。
故に、ミームの『わたしもせんせえみたいなおむねになれる?』という問いかけに返す最適解を、私は持ち合わせていない。だって元は男だから。
「えーっと……ジェシーさんの胸も大きいから、きっと大丈夫じゃないかな? そもそもまだミームは九歳だし、胸のことはまだ気にしなくていいんじゃない?」
ジェシーさんの胸、もちろん私は直接見たことはないけど、服越しでもわかるくらいの膨らみは充分にあると思うので、それを踏まえてそう言った。
「そっかぁ……でも、ママのおむねよりせんせえのほうがわたしすき! だってママのおむねってなんか、たれ「こらこらもう言わなくていいのそういうのは!」」
今のは聞かなかったことにしますよミーム。それとお母さんにも言っちゃだめです。
「せんせえのおむね、まるっこくてやーらかいし、わたしもこういうのがいいの! それにせんせえはすたいるもいいからすき!」
と言いながらまた私の胸をさわさわもみもみ。まぁ、九歳の子供のすることだから、最初は驚いたけど、もういいや。……いや、やっぱり恥ずかしいな。
ゆっくりとミームを引き剥がしてから、彼女の腰に手を置いて、くるっと半回転させてから、そっと引き寄せ緩く抱き抱える。ちょうど後頭部が私の胸をヘッドレストにする格好だ。
ミームは頭を前後に動かして、私への胸ぽむぽむを堪能しながら、ふんふーんと鼻歌混じりでご機嫌な様子。バックハグの体勢がどうやら気に入ったらしい。
「ねぇミーム? そういえば私、聞くの忘れてたけど、どうして弟子になりたいって思ったの?」
そう尋ねると胸ぽむぽむを止め、今度は腰に回した私の左の二の腕をもみもみしてくる。この娘はどこまで私へのもみもみが好きなんだろう? まぁ二の腕くらいなら胸もみもみよりマシだし、なんなら一緒に住んだら肩でも揉んでもらいたいものだ。
彼女はもみもみの手を休めることなく。
「うーんとね……まず、せんせえのおしごとはすごいなっておもったの。おべんきょうがたのしいっておしえてくれたから。それでね、そんなせんせえってかっこいいなって。わたしもいつかせんせえみたいになって、子どもたちにおべんきょうをおしえてあげたいの。あとはね……わたし、ひとりっ子だから、せんせえがおねえちゃんになってくれたらなって、ずっとおもってたんだ。あとは――」
そこからもう私への絶賛が止まらなかった。バックハグという姿勢故にお互いの顔は見えないのだけど、きっとミームはその言葉から察するに、いつになく真剣な面差しなのだろう。そして私はきっと紅潮しまくっているに違いない。だってめっちゃ恥ずかしいんだもの! 前世でもこんなに褒めちぎられることなかったし。
だけど、私は嬉しかった。きっと一生懸命考えて褒めてくれているのだろう。だから自然と私は腰から右手を離し、気付けば彼女の頭をゆっくりと何度も撫でていた。
するとミームは二の腕もみもみを止め、またくるっとこちらを向き、やっぱり胸に顔を埋めながら、
「せんせえ。わたし、がんばる! だいすきなせんせえみたいになる! すごいでしになる!」
と力強く宣誓した。私も頑張ってミームにとって最高の師匠になるからねと、心の中で同様に力強く宣誓する。
というか、胸の中で声を出されるのって、結構くすぐったいものなんだね、心身ともに。これ以上この時間が続くと私もどうにもアレなので、ミームをまたゆっくりと引き剥がし、小さい彼女の頬に両手を添えて言う。
「ミーム。こういう時はね、相手の顔を見て言わなきゃだめ。じゃないと、伝わるものも伝わらないの。でも、さっきのは充分に伝わったから、今回は許してあげます」
「……うん! これからは、きをつけますせんせえ! ……うぅー……あー……えーーーーい! ちゅっ!」
いきなり抱き締められて頬にキスされたよ……あぁもう可愛いんだから! こうなれば私も仕返しだー! ちゅっ!
……とまぁ、お風呂は色々と満喫できたのだけど、これがサービス回なのかな? 私たちにとっては充分サービス回でしたけどね。




