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第53話 ー 神様はやっぱり神様だった

 私の目の前には神様がいて、さらにその後ろには同じ姿をした神様の木像がある、という珍妙な風景を、シルフィードはステルスモードで不思議そうに見ていた。


(この方が神様、なのですか?)

(えぇそうよ……ってあぁ、シルフィーはまだ会ったことないんだっけ?)

(はい、初めてお目にかかります)

「あれ〜、そうだったっけ? そっかそっか、ちゃんと挨拶しなくちゃね」


 っ! どうやら神様にはシルフィードとの念話が聞こえるようで、口を挟んできた。しかもちゃんとシルフィードの方を見て言った。すごいな神様、伊達に神様やってないね。

 というか、この二人すごく顔が似てるんだよね……。よくみると微妙に違うのだけど、まさか関係あるのかな?


「神様には、シルフィーが見えているのですか?」

「それはもちろんよー。伊達に神様やってるんじゃないんだから、ワタシ」

「シルフィーはもちろん神様は見えているのよね?」

「はい、ちゃんと視認できています。神様には私の姿は見えているようなので、ステルスモードのままでご挨拶させていただきます。私、エイミー様所有の生活向上人型精霊シリーズ01 風の精霊シルフィードと申します。以後、お見知り置きを」


 と、シルフィードは纏った羽衣の端を摘まんで恭しく挨拶する。こういった挨拶ができるようになっているのも、私の記憶から引き出した知識の賜物なんだろう。とはいえシルフィードの存在は秘匿だから、こういう仕草を見られるのは非常にレアだと思う。


 そんなシルフィードを見て、神様も同様に挨拶を返す。


「あらあら、非常にご丁寧な挨拶をありがと〜。ワタシはこの世界の神様をやってるトーチリュルアっていうの。よろしくねシルフィードちゃん」


 神様からの挨拶に深々と頭を下げるシルフィードから、念話が飛んでくる。


(それにしても……トーチリュルア様のご尊顔が、非常に私に似ているような気がするのですが、気のせいでしょうか……?)

(そうよね……私も気にはなっていたのよね。聞いてみようか)


「……ところで神様。気になることがあるのですが」

「ん? なにかしら」

「神様とシルフィーって、その……顔が似てますよね? なんででしょう?」

「う〜ん、なんでって言われてもねぇ……。キミがシルフィードちゃんの魔導詩を書いた時に、ワタシの顔を思い浮かべて書いちゃったから、じゃないの?」


 と、ニコニコ……というかニヤニヤとなにか含みを持った顔で言う。

 

 ――言われてみれば確かに。


 顔に関しては、少し迷った覚えがあった。というのも、前世では特に付き合っていた女性もいなかったし、好きなタレントや有名人もいなかったから、明確に女性の顔をイメージできなかったのだけど、そのかわり、神様の顔を一瞬フッと思い浮かべたような覚えがある。

 でも、神様の容姿は非常に美しいものだと私も思うし、こうやって今、目の前に浮かぶシルフィードも結果としてとても綺麗で可愛らしいから、一向に構わないけどね。もちろん『親の贔屓目』だってことも充分承知していますが何か?


「そうですね、確かに神様の顔が浮かんでいたかも……」

「まぁ、召喚したシルフィードちゃんはこんなに可愛いんだから、結果オーライじゃない?」

「まぁそうなんですけどね! 自慢の娘ですよ」

「エイミー様……」


 と、横にいるシルフィードの顔が真っ赤になっている……ような気がする。思考リンクされてるからだろう、最近ではステルスモードの状態でも、シルフィードがどんな表情をしているのかぼんやりとわかるようになってきたのだ。


 ――あ。そうだ、せっかく神様がいるんだから。


 いくつか疑問があったことを思い出して聞いてみることにした。まずは……。


「そういえば神様。いくつかお聞きしたいことがあるのですが」

「ん? なに〜? ワタシでわかることならなんなりとどうぞ〜」

「今、私が奉納した紙は一日経つとちゃんと魔導紙になるんですか?」


 そんなの当たり前よ、といった顔を近づけ指をビシッ! っと立てながら、


「もちろんよ! しかも奉納している間は私の加護で盗まれることもないから、置きっ放しにして明日にでも取りに来ればいいわ」


 と、ふふんと鼻を鳴らす神様。もうちょっとこう、威厳とかそういうのないんですかね。まぁ今更威厳があったところで、私の態度は一向に変わらないけど。

 でも一応は「さすが神様ですね」といった顔をしておいた。


「なるほど、盗まれないなら安心ですね。それと――」


 さきほどからずっとアクティブにしていたステボから、さっき借りてきたアレを取り出して、神様に向けて聞くことにした。聞いたところで何が変わることもないのだけど、気にならないというと嘘になる。


「この本……『この国 の歴史』に書かれている神様って、やはり神様《貴女》なんですよ……ね?」


 そう言いながら、私はその1ページ目を神様にわかるように見開いた。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


かつてこの大陸 にはすべてあり ませんだった。

ある ひのこと神と名乗ります 奴が参る

神は僕たちに以下の言葉

をおっしゃい ます過去形、

『かみにおながいおかく きさまのみなさまの暮ら

すは浴衣になるでせう』それでもって神ちゃんわ紙の

作りかたくれますた!

紙によい かんじでをねがひを かくとみずとか火と

か使へてべんりな暮らすができたように なります。

よろこびました我ら達でもながらぜんいんの

みなさまがかけないからかける

人間が超がんばってかいたかいたかいたかいたかいた。

かけるやからはだい じにうやまってあげたぜ。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 何度思い出してもこの本との出会いは衝撃的で、かつこの世界の有り様がわかるものだった。さらに言えば、私がこの世界でどうやって生きる、というと大袈裟なのだけど、何をすればいいかという指針にもなった本なのだ。まぁそれ以前にこの本のポンコツ具合に開いた口が塞がらない、というのが正直なところだけど。


「うん、そうね。その本の神様は、ワタシのことよ……」

「……やっぱりそうでしたか。なんとなくそんな気はしてましたけど、ここ(神の御寝所)に来て確信しました。神様本人から聞けたから尚更、です」


 私は見逃さなかった。


 『うん、そうね。その本の神様は、ワタシのことよ……』と言った神様の目線が一瞬逸れたのを。そして少しだけ口角が上がったのを。

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