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第48話 ー 久しぶりに校正を

「エイミーちゃん、決まったかい?」

「今日はどうしようかな……。じゃあタマゴサンドにしようかしら?」

「あいよっ、毎度あり!」


 今日は木の日、朝の8時30分。私はバルサの街の露店街にあるパン屋に来ている。ここのパン屋は以前、ダフィーに教えてもらってからというもの、ことあるごとに利用してたものだから、ついには名前まで覚えられてしまった。こういうのなんかいいよね、常連っぽくて。


 タマゴサンドの入った袋を受け取り、そのまま今度は露店街を抜けた十字路にある噴水広場に向かう。ここはこの街のランドマーク的な場所で、待ち合わせによく利用されていて、実際私もダフィーとの待ち合わせはここを利用している。ちなみにこの噴水も、『水の魔導詩』を使って動かしているらしいのだけど、ちゃんと作動しているところを見るに、ここの『水の魔導詩』はきちんと書かれているのだろう。


 ところで今日は待ち合わせではなく、別の目的にここへ来た。


 噴水の淵に腰掛け、さっき買ったタマゴサンドを一口頬張る。まずはここで朝食、という格好なのだ。少しお行儀が悪いかもだけど、私のほかにも同じようにパンやホットドッグを食べている人はそこそこ居るから大丈夫。

 といってもこれが主たる目的ではなく、本来の目的を果たすための前行動。つまりは『腹ごしらえ』。


 もぐもぐとタマゴサンドを食べ進めながら、晴れた空を見上げて思う。


 この世界は本当に穏やかで心地いい。理想の世界、というものが存在するなら、私にとっては限りなくここがそうなのかと錯覚してもいいくらい。村人をはじめ、たくさんの人によくしてもらっているし、教師の仕事も楽しくやっている。体力的には体が女性ということもあってキツいこともあるけど、なんて言ったらいいのだろう、キツいけど楽しく充実しているのだ。


 勉強に来る子供達は『せんせえ』と可愛く慕ってくれるし、時々遊びに来る神様との会話も、イラっとすることはあれど嫌な感じはしない。最近では村の人たちとも普通にお喋りできるようになっている。つまりそれは『この世界に心と体が順応してきた』といってもいいと思う。頑張ってる私偉い。


「さて、そろそろ行きましょうかね?」


 噴水の淵からぴょんと立ち上がって、スカートのお尻部分をぱんぱんと軽く払ったあと、来た道を背にしてそのまま真っ直ぐに歩く。目的地の途中にある白狼亭に少しだけ顔を出して、持参した水筒にシルティーを分けてもらう。あ、もちろんお金は払ってるからね。カレーじゃないので。


 ちなみにシルティーの評判は上々のようで、今では飲み物オーダーの三分の一がシルティーらしい。頑張った甲斐があったねシルフィード。


(よかったねシルフィー、『シルティー』大人気で)

(いえ、これもエイミー様のお力あってのことですから)

「ダフィー、今日もありがとう、開店前なのに」

「遠慮しないでいいよ! エイミーのためだし、会うのも嬉しいしね」

「ありがとうダフィー、じゃあ私はもう行くね」

(シルフィー、こういう時は『ありがとうございます』でいいのよ?)

(承知いたしました。ありがとうございます、エイミー様)

「うん、じゃあまたね、エイミー!」


 シルフィードと念話しながら人と会話するのも今では随分と慣れたものだ。

 ダフィーへの朝の挨拶もほどほどに切り上げ、本来の目的地――図書館――に到着した。


 ある程度自分が興味を惹かれた本はあらかた読んだのだけど、最初に読んだ『この国 の歴史』同様にどれも酷いもので、読んでは頭の中で文章を再構築〜理解、という手間のかかる本ばかり。これにはさすがの私も辟易した。


 なので今日は少し趣向を変えてみよう。今日やることはこれ。


『この国 の歴史』を校正する! である。


 なにしろ書き出しからして、


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


かつてこの大陸 にはすべてあり ませんだった。

ある ひのこと神と名乗ります 奴が参る

神は僕たちに以下の言葉

をおっしゃい ます過去形、

『かみにおながいおかく きさまのみなさまの暮ら

すは浴衣になるでせう』それでもって神ちゃんわ紙の

作りかたくれますた!

紙によい かんじでをねがひを かくとみずとか火と

か使えて便利な暮らすができたように なります。

よろこびました我ら達でもながらぜんいんの

みなさまがかけないからかける

人間が超がんばってかいたかいたかいたかいたかいた。

かけるやからはだい じにうやまってあげたぜ。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 こうなのだから。改めて見るとこれからやろうとしてることって、校正の域を超えてるよね。もう二次創作レベルで挑む覚悟が必要なのでは?


 さっそく私は『この国 の歴史』を手に取り、一番奥の席を確保してそそくさと準備を始める。とはいってもかつて校正で使っていた筆記用具―――赤ペンや蛍光マーカーなど―――がないから、使うのは紙と鉛筆、そして赤鉛筆。まずはそのまま書き写して、そこから校正をしていこう。うん、すごく二度手間なのはわかってるのだけど、コピー機なんかもちろんないから、こうするより他ないのだ。


 さてここで問題なのは『大草原ことエルバ・グラスハーブさん』である。今はおそらく別室にいると思われ姿が見えない。これ、気づかれたらまた煩いんだろうな。

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