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第44話 ー チャクラムのあれこれ

「では、今度は片手でゆっくり作動・射出いたします」


 そう言ったシルフィードの右掌には、すでに風の渦(チャクラム)が今か今かと待機するように無音で高速回転している。

 右手を水平にゆっくりと振りかぶり、まるでサイドスローのピッチャーのように風の渦を射出する。ここまでの動きはまさにスローモーションで、射出された風の渦も、それに合わせたかのようにゆっくりと飛んでいく。

 風に漂うシャボン玉のようだけど、実際は一切のブレがなくまっすぐに飛んでいき、やがていいだけ育っていた広葉樹の太い枝を一本切断した。そして速度の緩急なく風の渦はシルフィードの手元に戻ってきた。

 

 ドサッ! と落ちた枝に駆け寄ってその断面を見ると、これも一切のブレがなく、平坦に切られていた。その断面に私は戦慄する。


「……これが『チャクラム』です」


 そう言って私に近づくシルフィード。


 見慣れていた無表情のシルフィードが、なんだかとても怖く感じた。思わず一歩後ずさりする。怖いよ、シルフィード……。そんな私に優しくシルフィードは謝罪する。


「エイミー様。驚かせて申し訳ありません」

「え、えぇ、だ、大丈夫。大丈夫……よ」

「ご覧になったように、『チャクラム』は非常に危険なのです」

「……そうね、それは見ただけでわかったわ。なんでノーマルモードじゃないとそれ(チャクラム)が使えないのかも、ね」


 どう見てもこれは『殺傷能力』があるものだ。それを【ステルスモード(視認不可能な状態)】でも使えてしまったら、シルフィードの主人マスターである私は凄腕の暗殺者アサシンにもなれてしまう。その抑止力のためのノーマルモード限定なのだろう。


「ご想像の通りですエイミー様。だからこそチャクラムはノーマルモードでしか射出ができないのです」

「悪事を働けないように、よね?」

「はい。ですがチャクラムはエイミー様の許可が降りない限りは射出できない仕様になっていますし、決してエイミー様は悪用しないことも私はわかっています、エイミー様はお優しいですから」

「シルフィー……」

「では、以上がチャクラムなのですが、使用の許可をいただけますか?」


 私もそうだけど、シルフィード自体が悪に染まることは考えづらいし、使用方法さえ間違わなければこれはとても便利だと思う。だから……。


「えぇ、許可するわ。あとね? これは確認、というかお願いになるのだけど、これ(チャクラム)で決して、その……生き物を……傷つけないって約束してくれるかな?」

「それはもちろんです。ですが……」

「え? なに?」

「もし万が一、エイミー様を危険に陥れるなにかがあった場合、そのなにかにチャクラムで阻止することをお許しいただきたいのです。もちろん生命を奪うことも傷つけることも、決してしないとお約束します」

「つまり、護衛ってことよね? ……えぇ、わかったわ、それも許可します」

「承知いたしました。では今からチャクラムの使用が可能になります」


 ふぅ……。まだちょっと怖いけど、私次第ってことよね。うん、大丈夫、もう大丈夫。ゆっくりとひとつ深呼吸をして落ち着くと、ハッとあることに気づく。


「あ。そういえば」

「はい、なんでしょうエイミー様」


 忘れてた。これ言っとかなきゃ。


「なんで草刈りする前に見せてくれなかったの? そうすれば私がわざわざヒーヒー言いながら草刈りしなくて済んだと思うのだけど?」

「お気づきになりましたか。それはですね……」

「それは?」

「運動不足の解消になると考えたからです」

「……やっぱりね。そうだと思ったよ、やっぱりというかさすがというか、よくわかってるわねシルフィー」

「はい。お風呂上がりに腹部をつまんでため息をついていらしたので」

「っ! な、なんだとーっ! シルフィーこんにゃろー!」

「……エイミー様がご乱心モードになりました。では【ステルスモード】」

「あーっ! ちょ、ちょっと! ズルいじゃないのそれ!」


 こんなじゃれ合いも楽しい午後のひとときだった。


―――――――――――――――――


 シルフィードの『チャクラム』のおかげで、午後の草刈りは本当に一瞬で終わってしまった。私はそれを見ていただけだけど、うん、充実感あるね、よく頑張ったよ私たち。私はなにもしてないけどね!

 うず高く積まれた雑草の山に目をやると、種類別にきちんと分けて山にしてるね。可燃ゴミ不燃ゴミじゃあるまいし。これも私の性格とかが反映してる?


 ちなみに今はもう草刈りも済んでいたので、シルフィードはセミステルスモードに戻っていた。こころなしかシルフィードの顔にも達成感が滲み出てるような気がする。


「じゃあこれを袋に詰めてゴミ置場に持って行こうか?」

「では、袋には私が詰めますので、エイミー様はアイテム袋に仕舞っていただけますでしょうか?」

「了解了解、じゃあよろしくね」……って言った瞬間にもう終わってるし。仕事はやいなほんとにこの娘。


 三つの大きな袋をアイテム袋に仕舞って、目的地であるゴミ置き場で取り出そうかとステボを表示、アイテム袋のアイコンをタップすると。


 あれ?


(どうかしましたかエイミー様?)


 ゴミ置場に他の村人がいたせいか、念話でシルフィードが聞いてくる。

 

(うん、ちょっと待って。少し確認したいことがあるから)


 アイテム袋を見ると、それぞれに『オオカモジグサ』『アオツメクサ』『バルサミント』と表示されている。しかもよく見ると詳細も表示できるようで、順番に詳細を見てみたのだけど、まぁ雑草だよね。繁殖力旺盛とか開花時期とかそんな情報がつらつらと書かれている。

 でもこれって、よくわからないモノをアイテム袋に入れたら詳細が分かる、ってことだよね?

 だとしたらすごいんじゃないの? つまりこれって検索機能替わりに使えるってことだもんね。よし、大発見!


 と、最後に『バルサミント』の詳細を見ると気になることが書かれていた。


『バルサ地方に広く分布する、暖かい時期に花を咲かせる多年草。繁殖力旺盛なため、地植えは控えよう。生食はできないが、乾燥させてお茶にすると、香りがよく喉越し爽やかな味が楽しめる。学名:Mentha balsaensis』

→取り出す

←しまう


 ……ふむふむなるほど。


(シルフィー、この袋は持って帰るから。残りの二つは捨てちゃうけど。でね? あとでお願いがあるんだけど)

(私でできることならのちほどお聞かせください)

(うんわかった。じゃあ帰ろうか)

(了解しました)


 これはもしかして、アレが解決できるんじゃないかな?

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