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第38話 ー コショウカナ? トオモッタトキハ

 目の前にふわふわと浮かぶ『風の精霊シルフィード』。


 その佇まいはもう神々しくも可愛らしいのだけど、私が思い描いたシルフィードの姿とはちょっとだけ違うような気もする。だた、大きさはちゃんと書いた通りの大きさになっているようだし、まぁよしと納得する。


 会話はなんとなく出来るようだけど、どうにもア○クサとか○リと話してるみたいなんだよね。なんだか機械と話してるようで味気なく感じる。


「オキャクサマガゴコウニュウシャノえいみーらいとうぇるサマデショウカ?」

「購入……したんじゃないけど、私がエイミーで間違い無いわ」

「……カシコマリマシタ。デハオキャクサマヲショユウシャトシテニンショウ、オーソライズイタシマス。……デハシツレイイタシマス」


 そう言うと彼女はそれまでかざしていた両手を私の顔に近づけ、左右のこめかみにそっと指先で触れた。

 ほどなく彼女のいうオーソライズが始まったようで、髪の毛は風もないのにふわっと浮かび揺らめき、体全体がLEDのように発光を始めた。目蓋を閉じ、口元はなにかを呟くようにせわしなく動いているのだけど、声音はまったく聞こえない。


 時間にして20秒くらいだろうか、オーソライズが終わったようで、彼女は私からスッと離れ、目の前2mほどの距離に浮かび姿勢を正す。


「ゴアイサツサセテイタダキマス。ホンセイヒン『RLS01-SPD』ハ、オキャクサマノセイカツヲヨリカイテキニスルヨウカイハツサレタ――」


 あーちょっと待って! これ、私の書いた『風の魔導詩ver.02』の文章そのまま言う気だ。大丈夫、書いたの私だから知ってるし。知ってるから!

 

「……タイキモードニハイリマス」


 ふう、やっと止まってくれた。


「えっとね、いくつか質問したいのだけどいい?」

「……コショウカナ? トオモッタトキハ。キボウノ――」

「いやいやそうじゃなくてね。まず聞きたいのは、あなたは『風の精霊シルフィード』で間違い無いのよね?」

「……ハイ、ホンセイヒンハマチガイナク『セイカツコウジョウヒトガタセイレイシリーズ01 カゼノセイレイシルフィード』デス」

「そう。わかったわ。じゃあ、もうひとつ。あなたは風を自由自在に起こせる、で間違い無い?」

「……ハイ、クワシクハ、トリアツカイセツメイショノ『シヨウ』ヲゴランクダサイ」


 何度も書いて練習した『風の魔導詩ver.02』の文章は、もはや暗唱できるようになっていたので、『仕様』全般を思い出してみた。

 ちょっとスペック盛りすぎたかもだけど、大は小を兼ねるって言うし、私が間違えなければ大丈夫。ならば動かしてみましょう!


「温度22度、風量穏やか」


 と言った瞬間に、心地よい冷風が髪を撫でる。おおっ、これは涼しい!


「上下90度首振り、速度穏やか」


 今度は顔に当たっていた冷風が、ゆっくりと腰まで移動して顔まで戻るという往復運動に変わる。うんうん、いいんじゃないかな?

 おおよそエアコンにあるであろう機能を思い出しながら、冷風だけじゃなく温風など、一通り試してみたのだけど、すべて思ったように動作した。


「停止」


 風はピタっと止まり、シルフィードもそれに合わせて動きを止めた。シルフィードは私が動作を命令するたび、指をくるくる回したり、腕をしなやかに動かしていたから、これが命令に対する固有の動きなのだろう。その動きは国籍不明の舞踏を思わせて、その可愛らしい見た目も手伝って見ていて飽きない。


「よし、動作確認完了!」

「……タイキモードニハイリマス」


 これは大成功なんじゃないかな? きっちり動作もするし見た目も可愛らしいしね。……会話以外は、ね。


「ねぇ、シルフィード?」

「……ハイ、ナンデショウますたー」

「……ん? マ、マスター!?」


 確かに召喚したのは私だし、その大元になる『風の魔導詩ver.02』を書いたのも私だから、マスターであることには違い無いのだけど……もうちょっとこう、なんていうのかな、フレンドリーというかそんな風にはならないのかな。


「……ハイ、ますたーデス」

「そのマスターって呼び方、どうにかできないかな?」

「ソレハますたーノコショウヲヘンコウスル、トイウコトデショウカ」

「そうそう、エイミーさんとかエイミーちゃんとか。なんならエイミーって呼び捨てでもいいのだけど」

「……カシコマリマシタ。デハ、イコウますたーノコショウヲ『エイミー様』ニヘンコウイタシマス」

「あ、『様』付けなんだね」

「ハイ、エイミー様ハアクマデますたーデスノデ」


 ふうん、そっか。まぁこれくらいならいいか。でもなぁ、もうちょっと砕けた感じにならないのかしらね。今、如何にもなカタコトだしね。


すると、それまで畏まったポーズで浮かんでいたシルフィードが口を開く。


「ボイスメールマガジンガトドキマシタ。オキキニナリマスカ?」

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