表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/101

第37話 ー RLS01-SPD、キドウカイシシマス

「……風の精霊シルフィード召喚」


 目を閉じたまま、シルフィードを召喚する。果たして本当に来るのかな。


 ……あれ? 何も起きないね。なので恐る恐る目を開けてみたところ。


「ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォォォ!」


 と、あの大惨事さながらの轟音が教室に鳴り響……かなくて、誰かが叫んでいる。しかも無駄に綺麗な女性の声だ。神様の声にも似ているが、微妙に違う。

 しかもあの時(大惨事)と違うのは、風がほとんど起きていない代わりに、目の前1mほどの距離に高さ1.5mほどの竜巻のようなものがあることだ。


 やがてその竜巻は左右に分裂して、上昇したかと思うと今度は一対のドーナツさながらの風の渦に変わって浮かんでいる。そして竜巻があった場所には、誰かが、いや、何かがいた。その何かはふわりふわりと上下に微妙に揺れながら浮かんでいる。が、どうやらまだ覚醒していないようで、瞼は閉じられたまま、ほんの少し上を向いて微動だにしない。


 冷静を装いながらその何かに近づいてみると、女性型だということはなんとなくわかるのだけど、そのほかにはなにもわからない。というのも、その何かには色がまったくなかったから。

 かといって白い、ということじゃなくて、まるで透明度の高いアクリル製のフィギュア(人形)そのものなのだ。ポーズも両手をクロスして胸元を掌で包み込む格好なのだけど、その割には不思議と生命感も感じられて、つい舐め回すように見てしまった。いいえ、決して邪な気持ちはありませんよ!


「私、こんな姿想像したかなぁ……」


 ついさっき書いた『風の魔導詩ver.02』を見直すと、フォントと文章は我ながら思った通り綺麗に書けていると思う。その姿形もイメージして書いたつもりなのだけど、想像力が足りなかったのかな、と顎に手を添えて考えてみる。


「一応、如何にも『風の精霊(シルフィード)』っぽい見た目を想像したつもり――」


 その瞬間。


 まるで私の言葉に呼応するかのようにその何かは一気に変化を始めた。まず最初に、その体に色がつき始めた。足元から頭に向かってスッと着色した後、フワっと一回発光すると、その色――白緑びゃくろくに近い色だね――に定着された。その変化に私は不思議と冷静でいられた。


 あれ? 衣装を身に着けていないね、と思うと再び呼応したようで、やはり腰と胸回りが形成、着色された。これも私の想像力の無さなのだろう、ごく普通のちょっとセクシーなビキニセットで、腰には柔らかそうな素材の一枚布パレオを巻き、体全体にはやはり同素材と思われる長々とした羽衣が緩く纏わりついていた。色は体より少し濃い目の色。若竹色わかたけいろあたりかな?

 そして最後に髪の毛なのだけど、これも一気に生え揃った。腰ほどのストレートヘアで、色は衣装と同じ若竹色。

 いつの間にか、浮かんでいた一対の風の渦も両手首に纏わりついて、ブレスレットさながらに収まった。


 ここでやっとその何か――女性型だから彼女だね――の全貌が見えた。見えたのだけど、二つほど気になることがあった。


 まず顔。同じじゃないのだけど、限りなく神様に似ていた。いや、決して神様を悪く言うわけではなく……まぁこれも想像力の無さなんだろうね。神様美神(びじん)だからいいけど。

 そして背中だ。普通シルフィードといえば二枚ないし四枚の羽が生えてるよね? でも彼女には羽がなかった。おかしいなと思って背後に回り、羽を探すように彼女のロングヘアーを軽くかき分けると、肩甲骨に一対のエアインテークらしきモノが付いている。いや、この場合は装備、といった方がいいのかな。なんでここだけメカメカしいのかしら。


 試しに手をかざしてみると、わずかに吸気排気をしているので、生きてはいるようだ。いや、この場合は『作動している』になるのかな……?


「えっと……シルフィード、さん? ですよね?」


 自分で召喚したにも関わらず、つい敬語が口をついて出る。だって顔が神様みたいなんだもの。

 声をかけたものの反応がないので、彼女の顔の前で掌を、おーい起きてますかーといった感じで左右に揺らしてみると。


「……RLS01-SPD、キドウカイシシマス」

「ん? なに? 『アールエルエスゼロワンエスピーディー』?」


 なんだっけそれ。……あー、そういえば商品だから品番が必要かと思って書いていたのを思い出した。

 すると、今度は彼女の体が一瞬蜃気楼のようにユラっとして、今まで閉じていた目蓋を開きクロスした両腕を広げ、こちらに両手を差し出すポーズに変わった。


「……コノタビハトウシャセイヒンヲオカイアゲイタダキ、マコトニアリガトウゴザイマス」

「は、はぁ……」


 狙った通りに商品っぽいのだけど、実際にこうして相まみえると、結構、いやかなり事務的というか無機質だね。お買い上げした覚えもないけど、まぁいいか。

白緑びゃくろくとは、またまたDICカラーガイド『日本の伝統色』N-839の色の名称で、少し黄色味がかった薄緑です。同じく若竹色わかたけいろはN-843の色の名称で、白緑を少し濃くした感じの緑です。他にもDICカラーガイドには『フランス』『中国』がありますが、なぜ『日本の伝統色』にエイミーが拘るかというと、DICカラーガイドはそこそこの値段で、貧乏学生時代のエイミーには『日本の伝統色』しか買えず、それ以外を知らないからです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ