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第36話 ー その名はシルフィード

 さぁ、今日はいよいよ『風の魔導詩ver.02』を書き上げますよ!


 ちなみに、今回書く『風の魔導詩ver.02』のフォントは、その文章の内容に合わせてみることにした。


『UDゴシック・文字の太さは二種・色は緑』


 がそうなのだけど、風といえば緑かな? という漠然とした理由……ではなくちゃんとした根拠はある。だから文字の色は緑で問題ないと思う。

 ちなみにUDというのは『ユニバーサルデザイン』のこと。多くの人――例えば高齢者・障がい者・外国人など――のために読みやすくデザインされたフォントをUDフォントという。

 なぜUDフォントを採用するのかといえば、それは『風の魔導詩ver.02』の文章が、それに見合った内容だと思ったから。ではどういう風に書くか? なのだけど。


 思い起こしてみると、最初に書いた『風の魔導詩(大惨事)』の文章は、


『魔の根源たる我が命ずる 全てをなぎ倒す 風よ来たれ』


『魔の根源たる我が命ずる』は、書いたのも私で使用したのも私だからおかしなところも誤字脱字もない。ならば問題は、


『全てをなぎ倒す 風よ来たれ』


 なのは明らか。だってその文章の通りに風――というか暴風だったけど――が吹いて部屋の中の全てをなぎ倒したのだから。


 次に書いた扇風機用の『風の魔導詩』の文章は、


『風よ 我に従い 吹き抜けよ』


 これは今でも事故なく全工房で絶賛稼働中。ただし、これでは風量は調節できても温度の調整はできないのがわかっていた。

 なので今回は『扇風機』ではなく別なものを目指す。


 それは何かと言われれば……そう、『エアコン』です!


 前世におけるエアコンは、扇風機よりはるかに複雑かつ高機能の家電だ。なので、万が一の事故が二度と起きないよう、『性能に隙がないように』詳細に書かなくてはならない。


 今までの経緯をおさらいとして、いくつか気づいたことを黒板に書いてみた。


・風よ来たれで風が吹くのは当たり前→心構えができていないから驚く

・全てをなぎ倒す必要は必要ない→故にそれを制御できればいい?

・効果の起きるタイミングも制御できればなおのこといい

・扇風機という形状に拘る必要すらない


 ここまで書いて私は、ある結論を導き出す。


(だったら風を起こす何かを出してからそれに風を起こせと命令すればいい)


 さらに、最初の『風の魔導詩(大惨事)』の文章を選んだ時に不採用にした()()を思い出して、それも黒板に追記する。


『風の精霊シルフィード 我の聲に応え その御身を顕せ』


 よし! 方針と文章スタイルは決定だ。つまり、まとめるとこういうこと。

 

 『風の精霊シルフィード』を呼び出して、それにあらゆる風にかかわる制御をさせる。ただ私は詠唱風の文章を書くのが苦手だから、理路整然とした文章にした方が、


『風の精霊シルフィード 我の聲に応え その御身を顕せ』


 よりは確実に安全運用できるはず。であれば『風の精霊シルフィード』は精霊ではなく『商品』と捉えてあげればいい。なので文章は『取扱説明書』のように書く。


 これですべての準備が整ったので、早速ナノアイを発動させ書き始めたのだけど、思った以上にあれよあれよと全て書き上げてしまった。我ながら恐ろしいほどの完成度になったのだけど……。


シルフィード(風の精霊)なんて本当に召喚できるのかな?」


 神様は『キミが書けば必ず魔導詩になる』とは言っていたけど、今回のは商品設定とはいえ精霊を出すのだから不安で仕方ない。この世界に精霊なんているのかわからないし、いくら文章が自分的に隙なく書けているとしても、『風』という現象ではなく『精霊』という物体? 生き物? 商品? を呼び出すのだから。


 不安要素は尽きないけど、ここは『キミが書けば必ず魔導詩になる』を信じるしかないよね。やるしかないんだよね……。


 念の為、教室の長机を端に寄せる。備えあればなんとやら、だ。意味のないことはわかっているけど準備体操なんかもしてみた。駄目押しで紅茶を一気飲み。


 覚悟決めて、呼んで(召喚して)みます!

UDフォントはその特性上、取扱説明書だけではなく、高齢者・障がい者・外国人がよく目にするもの、例えば遠くからでも視認の必要がある道路標識や、駅の案内板などに、幅広く使用されています。

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