Break Time ー 神様の永き思考と新たなる検証
「漸く気づいたわね……」
『神』はいつものように白い空間で、腕を組み目を閉じ浮遊している。たまたま見出したそれが、『神』の思惑通りに行動する様を何度も思い出し、その度に満足といった表情を浮かべる。
『神』の想定よりも若干の時間はかかったものの、そのぶんそれは慎重に慎重を重ねて、不測の事態を回避する手立てを自ら考え実行しようとしている。野次馬程度の干渉でこの結果なのだから、成果としては充分である。
あとは、それがこちらの想定する道筋から逸脱、つまり暴走をしなければ、確実にこれからもゆったりと繁栄へとこの世界を導くだろう。
ただ、これ以上そればかりの手を煩わせることは、必ずしも良くないこともわかっていた。
「ではもう少しだけ、手を入れましょうか……」
そう言うと『神』は自らの指を、もう一方の手で、まるでチーズでも切るかのように切り落とす。その切り口は一切の迷いがなく切られたかの如しだった。
そしてその断面からは、あっと言う間に指が生え何事もなかったように再生される。二度三度緩く拳を握り、無事に再生を確認したあと、『神』は切り落とした指を目の前に無造作に放り投げる。
ゆらゆらを虚空を漂うそれは、『神』の意思そのままに形状を変えていく。『神』自身の大きさより半分ほどの大きさのそれは、ゆっくりと具体的な形状を現し始め、そして『神の分体』が誕生した。
『神の分体』は、あくまで分体でしかないから、顔の輪郭は同じだが、それ以外の容姿は大きく異なっている。上下に分かれた生地の少なめな衣装、腰の部分には、滑らかな素材でできているであろう一枚布を巻き、体全体にはやはり同素材と思われる長々とした羽衣が緩く纏わりついていた。
「アナタはどんな色に染まるのかしら……」
『神の分体』には色がなかった。『神』は『神の分体』を如何様な色にもできるのだが、それの思う色に染めてほしいという願いを込めて、あえて色を入れなかった。
また、今まで別の世界のためにいくつも作った『神の分体』とは大きく異なり、この『神の分体』には思想も入れなかった。それは色を入れない理由と同義である。
つまりこの『神の分体』は、人類の概念で言う『心』を持たない活きた抜け殻であった。
あとは『神の分体』がそれに呼び出されるのを待ち、どのような色と心を持たせるのかを見守ればいい。どのくらいの時間がかかろうが構わないし、そもそも『神』には時間など瑣末なものだ。
そして『神』は、今までの経験――滅亡もしくは終焉した世界――を顧みて、さらに次の手立てを思考する。
「これはこの娘のあとにしましょうか……」
『神』がかねてより目をつけていたこれと呼称したモノは、かつてそれを見つけた世界に、しかもそれにごく近い座標に位置していた。『神』の考える座標とは、身体の座標もさることながら、魂の座標、でもある。いくら身体の座標がごく近くにあったとしても、魂の座標が近くなければ意味を成さないし、ともすれば害なるモノになる可能性もあるから、魂の座標の近さは重要なのだ。
『神』の欲する世界には、不確定要素はあってはならない。
そういう負の要素をこれは何一つ持ち合わせていないのだ。しかしながらこれをそれに引き合わせるにはまだ時期尚早と考えた。
やがて『神』はこれを導く時期を精査すべく、深い思考に落ちていった。




