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第34話 ー スキル「ナノアイ」を取得しました

 次の日の夜。


 この世界の夏は湿度が低いから、夜になると過ごしやすくて、特に教室は窓が増えたこともあって涼むのには丁度いい。考え事なんかする時は、部屋よりも教室の方が捗るから、寝るまではもっぱら教室にいることが多い。


「これ以上続けると今度は頭にくるかも……」


 これは何かに怒っているわけではなく、『風の魔導詩ver.02』完成に向けた練習の果ての、眼精疲労からの頭痛への懸念だ。

 目の前に雑多に広がる『習作』にため息ひとつ。文字数にしたらきっと累計15,000字くらい書いてるよね(数字はイメージです)。疲れ目を癒すならと、キッチンに移動して濡れタオルを用意する。


 椅子に腰掛けて、緩めに絞った濡れタオルを目に覆いかぶせる。座り方はお行儀悪いけど、今は一人だし、タオルを落とさないようにするには浅く座るしかない。目薬欲しいなぁ。

 しかし濡れタオル気持ちいいね。これにロッキングチェア(揺り椅子)でもあれば最高なんだけどなぁ……。なんか眠くなってきたよ。


(いつになったら書けるのかな……)


 眠気の狭間でぼんやりとそんなことを考えていると、『ピコーン!』といきなり音が頭に鳴り響いた。突然の出来事に驚く私をよそにその音は続く。


『スキル【ナノアイ】の取得条件を満たしました。取得しますか?』


 なにこれ? なに【ナノアイ】って? いや、それよりもこの声……。


「……神様でしょ?」

(あはっ、バレちゃった?)

「隠れていないで出てきたらどうですか? もうこの前(台風の一件)のことは怒っていませんから」

(なら、そっちに行くわね)


 と、すぐに神様は現れた。相変わらずの神出鬼没というか、どうもタイミングよく現れすぎじゃないのかな。もしかして常時観察されたりしてる?


 いや、今はそんなことよりも。


「ねぇ、【ナノアイ】ってなんのこと?」

「あー、それはね……」


 あれ? なんかこのやりとりにすごくデジャブ(既知感)あるんですけど。

あー、まぁそう来ますよね。


「とりあえず試してみたら(ニッコリ)? あ、その前にステータスボードで確認するといいかも」

「えぇ、確かにそうですね。見てみますね」


 言われるがままステボをこめトン(略しすぎ)してステータスを確認する。


エイミー・ライトウェル 

人間族 16歳 女性 

職 教師


体 18/19

知 68/68

魔 08/50

運 20/20


 よく見ると『体』と『魔』の数値が下がっていることに気づいた。

 神様いわく、『体』は単なる疲労、『魔』は魔導詩を一枚書くたびに消費、回復には何日かかかる。様々な経験により最大量が増える。と、こういうことらしいのだけど、『魔』の回復ペースがまったくわからないので、迂闊に魔導詩も書けないよね。魔導紙はまだあるけど、自分の『魔』の方が心配だ。


 おっと肝心のナノアイを忘れてたよ、確認しなくちゃ。ステボ画面を送ってスキル画面が表示されると、


スキル:そこそこ高き教養

    読み書き

    算数

    ナノアイ(New)


とあった。ナノアイの項目をタップすると、その詳細が表示される。


『取得条件:集中して一定数以上の文字を書くとまれに取得可能。使用者の意思により、小さいものをある程度拡大して見ることができる』

取得しますか?

→Y / N


 なるほど、小さい文字の練習が、このスキルの取得条件を満たしたわけね。

で、能力は『顕微鏡のような目』って解釈でいいのかな? なんか如何にもスキルです! って感じでかっこいいかも。『スキル【ナノアイ】を得た私は異世界の隅々まで見通します!』ってラノベが書けそうだね。書かないけど。誰か私の代わりに書いてくれてもいいんですよ?


 それはさて置き、これって文字を小さく書くにはもってこいのスキルなのでは? だったらありがたく取得させていただきましょう。ここは迷わずY! ポチっとね!


『スキル【ナノアイ】を取得しました』


 いやいやわざわざステボイスっぽく言わなくていいからね神様。しかもドヤ顔だし。

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