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第33話 ー 竹とんぼは村を救った

(さて……どうしたものかな)


 トムさんの一件から10日後。

 

 結局あれからどうなったのかというと、


『村全ての工房に扇風機設置が義務化→37枚の風の魔導詩を一日かけて書き上げる→一週間で全工房に扇風機の設置完了、村全体の作業生産効率が上がる』


 というふうに問題は収束したのだった。あ、もちろんトムさんも無事に快復、仕事に復帰、今まで以上に頑張って仕事に打ち込んでいるとミームから聞いた。

 もはや扇風機なしの工房はあり得ないんだそうですよ。


 その一方、窓の増えた我が家の教室の天井にも、もちろん扇風機が設置されているのだけど、未だ稼働はしていない。というよりさせていなかった。それはいいのだけど、うちの扇風機は設置を後回しにしてもらったせいか、物凄い出来だった。羽全部に見事な草花模様の装飾彫りが施されているし(間違いなくジャンさんの仕事(仕業))、羽自体も非常に薄く、軽量化までされている。あとで聞いたのだけど、どうやらこの扇風機、村の特産品として売りに出すみたいで、早くもいくつか受注までしているらしい。


 さすがにそれにいちいち私が『風の魔導詩』を書くのはとてもじゃないけど対応しきれないので、これはバルサの街の『魔導詩屋』のおじさんに相談した。

 私のように綺麗には書けないだろうけど、文章さえ間違えなければ問題はないので、文章の権利、つまり著作料だけいただいて、売り上げの一部を村に収めてもらう、というふうにしたのだ。これで村にもわずかながらに貢献できるので、私としても嬉しかった。今はまだ微々たる著作料だけど、扇風機が普及すればそこそこ儲かって、さらに村の収益にも繋がっていくだろう。


―――――――――――――――――


 さて、なぜ私の家の扇風機が未だ稼働していないかというと。


 37枚の『風の魔導詩』を書いている間に、ちょっとした構想を思いついたからだった。言うなれば『風の魔導詩ver.02』といったところなのだけど、まず何が違うのかというと、端的にいえば『風の魔導詩ver.02』は、扇風機ではなくエアコンなのだ。村の扇風機も『風の魔導詩ver.02』に、とも考えたのだけど、私の構想ではそれは難しいものだった。

 というのも、風量制御までは短文で記述できるけど、エアコンならではの機能である、温度制御までは難しいと思ったのだ。そこまでの制御を安全に行うためには結構な文字量が予想されるから、村の扇風機は書くのに時間がかからない風量調節機能のみの『風の魔導詩』にしたのだった。

 

 だけど、私が思い描く『風の魔導詩ver.02』は、いい加減な文章にしてしまうと、とんでもない温度の風や風量にもなりかねないし、ただでさえ『風の魔導詩』で一度盛大にやらかしてしまっているので、『性能に隙がないように』詳細に書かなければならない。となると、やることは二つ。まず一つめは、


・隙のない文章を考える


 これなのだけど、文章の概要などは粗方頭の中にできている。でも、これを解決するには二つめが必要になる。それが、


・文字を小さく書く


 なのだ。というのも、文章の試し書きを普通の紙にしてみたのだけど、ハガキ大の魔導紙にはどうやってもおさまりそうにない文字量。しかも、転生前は極度の近視で不便だったから、この世界に来る寸前に、神様に『視力だけめっちゃ良くしてほしい』とお願いしてしまったのが、見事に裏目に出てしまった。確かに『めっちゃ良くなった』のだけど、今は良すぎて遠視状態になっているから、近くのものを見るのが辛いことこの上ない。だからまずは目を慣らすために小さく文字を書く練習から始めたのだけど――


「うわぁ、思った以上にこれは目にくるね……」


 小さい文字を書くのは大変だとは覚悟していたけれど、ここまでとは思わなかった。この世界には目薬なんかないので、小一時間ほど書いては休憩、を繰り返す。

 とはいえ魔導ペンを使わずに鉛筆で練習しているから、文字の大きさもそこまでは小さく書けない。ちなみに文章自体は、この練習がてらほぼ完成形にすることができた。


「PCがあればなぁ……」


 前世でフォントをPCで作っていた時は、大きく書いて完成させてしまえばあとはいくらでも縮小できたのだけど、PCなんてものはもちろんこの世界にはないから手書きしか方法がない。仮にあったとしても、そのあとには『魔道紙対応魔導インクプリンター』が必要なわけで。あれば便利だけどね。ないんだけど。


(もう今日は疲れたから、続きは明日にしようかな……)

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