第29話 ー 竹とんぼ
いきなり話を振られた私なのだけど、村の職人さん達の事情も踏まえて、聞き取りをしながらいろいろな話を整理することにした。うん、なんか完全に会議の進行役だねこれは。でも、この場合『職人ではない故に別視点から見れる』私が適任なんだと思う。これで少しは私も皆さんの役に立てそうだね。
では、進行役の私ことエイミー・ライトウェル、頑張りましょう!
「えっと、私が思うに職人の皆さんの事情からすると、まず直近の問題は『トムさんの大口の注文』だと思うのですが、これは他の工房でも肩代わりができる、で大丈夫ですか?」
「あぁそうだな、今回はそれで納品は間に合うだろうな」
と、神妙な顔つきで腕組みをしながら答えるピートさん。やはり村長的にはそこは大事なんだろう、職人さんも信用は大事だものね。
「では次に、今回のような事態の対策、つまり工房での体調管理に対しては、お互いに声を掛け合って注意喚起、でいいですか?」
「そうですね、僕もそれでいいかと思います。その時には『ご家族も協力し合って』と付け足すのものいいかも、ですね。あとはそうですね、医師に協力をお願いして、高齢の職人さんを中心に巡回してもらう、などもいいかと」
さすが見た目インテリさんのジャンさん、それはとてもいいアイデア。ジャンさんは見た目通りに中身もインテリさんなんだね、その意見、採用です!
本来なら、回覧板なんかを使うのがいいと思うのだけど、いかんせん識字率の低いこの世界ではこの方法は駄目だから、『伝言ゲーム』しかないよね。
「で、最後はこの暑さをどう凌ぐのか、なのですが……」
「そうだなぁ、それが一番の問題なんだが……。これはそれぞれの工房主の考え方なんだがな」
ザックさんのこの言葉で、他の皆さんの顔が一層神妙になった。
これが今回の会議の最重要案件になりそうだね。
皆さんの話をまとめると、工房によっては、いわゆる『門外不出の技術』があるらしく、それが漏洩しないよう、窓や扉を閉めきって作業することもあるのだとか。また、これも工房によるけれど、木屑が多く出るから、工房を開け放しするのも難しいらしい。つまり換気による外気取り込みが難しい、ということね。
「まぁ場合によっちゃあ俺のところで団扇を作って工房に配ってもいいんだが……それでも付け焼き刃程度にしかならんけどな」
竹細工職人のザックさんお手製の団扇は私もひとつ持っているのだけど、涼しげな絵柄がとてもよくて、私もお風呂上がりには重宝している。
「ですが、団扇だと片手が塞がってしまうから、せいぜい休憩時にしか使えない……ですよね?」
「「「「そうなんだよな(ですよね)……」」」」
進行役の私もこれが一番の問題だと思うのだけど、いいアイデアが皆さん出ないようで、会議はそこでシーンと静まり返る。
そんな静けさに一石を投じたのはザックさんだった。
「そういえば先生、この前頼まれて作った……なんて言ったかな……そうそう『竹とんぼ』、調子はどうだ?」
「え? あ、あぁ竹とんぼですか? おかげさまで子供達も大喜びで、勉強の休憩時間にみんな楽しそうに遊んでいますよ。その節はありがとうございました」
この世界には竹とんぼというものがなくて、せっかくこれだけ職人さんがいるのだからと、勉強の間に遊ぶ用途で、ジャンさんに相談して作ってもらったのだ。今まで作ったこともなく見たこともない竹とんぼを、ジャンさんは少しの説明であっという間に作ってくれた。簡単な絵と説明だけだったのに、あれだけ高く飛ぶ竹とんぼを作れるなんて、さすが職人さんと感心したもの。
(竹とんぼか……っ?)
「あ!」
私、いいこと思いついちゃいましたよ。




