第24話 ー 主役はキミよ!
「うん、いいんじゃない? 初めてにしては上出来、いや完璧だと思うわ!」
私の処女作『風の魔導詩』を手にとってまじまじと見て神様が言う。その様子はまるで自分の手柄の如く、だ。えっと……書いたの私なんですが。
確かにね? 自分でも上出来だと思うのだけど、ただ書くなら誰にでもできる。いや、誰でもじゃないね。いやいや今はそれよりも『ちゃんと効果が発現するのか』だから、まだまだ喜ぶには早い。
「神様はそう言いますけど、自信ないですよ? だって初めて書いたし、そもそもこんな文章でいいと思います?」
「もちろんいいと思うわ。だってキミ、これを書くときに色々イメージしたんでしょ?」
その返答に私は思わず言葉に詰まる。
「ま、まぁしましたよ? なんか呪文っぽく、というかなんと言うか」
……すいません正直そんなにイメージしてませんでした。頭の中にあったのは『綺麗な文字で読みやすく、わかりやすく、かつ中二病っぽく』くらいで、実際にどういう風に効果を発動させたいかまではちょっと考えが及んでいなかったし、余裕もなかったのだ。
「うん、それでいいのよ。呪文っぽくというのはよくわからないけど。とにかくね、何度も言うけど『前世以上の力を発揮できる』んだから」
「そうですよね……試す前にあれこれ考えるのも無駄ですものね」
「なら、さっそく試してみましょ? ほら、準備するわよ!?」
そう言って神様は、手にした杖をくるりと一振りすると、あっという間に長机が教室の端にするりと滑り避けていった。「どうせなら真ん中で堂々とやってみなさい!」っていう神様の気配りを感じる。そして柔らかな笑顔と広げた両の手をこちらに差し向けて「主役はキミよ!」と言わんばかりに、神様はすーっと教室の隅に移動した。
なら期待に応えなきゃ! ぽっかりと空いた教室の真ん中に歩を進め、そして出来立ての『風の魔導詩』をくるくると丸めた。まるで小さなステッキを持つように。
「うまくいきますように……」
左手に持った筒状の紙を、顔の前でひとつ深呼吸してからくるっと回す。こんな感じでいいのかな? 自分的には魔法少女みたいな感じでやってみたのだけど。そんな私を、固唾を飲んで見守る神様。目が合うと、その顔には「グッジョブ!」と書かれていた。
すると、どこからともなく『ゴゴゴゴゴ……』と地鳴りのような音が響き、うっすらと空気が動く。
『ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォォォ!』
音と風が急に激しくなったかと思うと、辺りからガタゴトバサバサゴオォと、まるでこの世のすべての騒音がここにあるくらいに勢いを増す!
「きゃあああああぁっぁぁああああああぁっぁああああっっっっ!」
なにこれなにこれヤバいんじゃないの? あまりの強い風と恐ろしげな音につい私は目を瞑る。でも不思議なことに私自身はほとんど風を感じない。あれ? と思ってゆっくり目を開けてみると、なるほど事情が飲み込めた。
「あー……、私『台風の目』の中なんだねこれ」
と冷静に判断したけど、それとは裏腹に、私周辺の景色はとんでもないことになっている。長机は風に煽られてガタガタ揺れて今にも倒れそうだし、椅子は既にほとんど倒れて右に左にと激しく揺れ動いているし、黒板は斜めになっちゃってるし、カーテンは今にもレールから引き千切られんばかりにバサバサと大暴れ。
そんな状況にも関わらず、私といえば『台風の目』の中にいるので、せいぜい服と髪が僅かに揺れているだけで済んでいる。というかこれ止めないと今に教室はおろか家全体に甚大な被害が及びそう。
「ちょっと! どんどん酷くなってるんじゃないの!?」
これどうしたらいいの!? ヤバいでしょ? あぁぁ黒板落ちちゃったよ! もうやめてーっ! ストップストップストーーーーーーーーップッ!!




