第23話 ー 初の魔導詩完成です!
教室の一番前の長机の椅子に座って、幸せポーズをして息を整える。
ちなみに幸せポーズというのは、両手のシワとシワを合わせて、でお馴染み(なのかな?)のアレだ。
そして目を閉じて少しの精神統一に入る。これは前世で新規の仕事に取り掛かる時とか、緊張をほぐす時によくやっていた、まぁ癖みたいなもの。
よし! と、まずは魔導ペンを右手に。目の前には真っさらの魔導紙。その隣に、なんの参考にもならなそうな火の魔導詩も一応見本として置いておく。しかしこの火の魔導詩、文章もアレだけど、文字自体も下手だよね。なんかヨレてるし、ベースラインもめちゃくちゃだし。
私は前世でフォント作りの経験があるし、レタリングも少し齧っていたから、実はそこそこ達筆、というか色々文字のスタイルも書き分けできたりする。普通に書いてもつまらないので、今回は読みやすさを考えて『教科書体』で書いてみることにしようかな。ちなみに『教科書体』というのはその名の通り、教科書によく使われるプレーンな読みやすいフォントだ。
あ。
魔力を込めるってどうやるんだろう? 神様は『キミならできる』とあたかも出来て当たり前のように言ってたけど、魔力なんか前世にはなかったし……。う〜んって手に力込めて、とか? そこで、前世で読んでいた異世界転生モノをいくつか思い出してみる。
「……体の真ん中に感じる暖かいものを掌に込めて、とか?」
うん、それがいいかも。う〜んって手に力込めてだと無駄に力んでうまく書けなさそうだものね。リラックスリラックス。それにどこかの格闘家も言ってたしね、『考えるんじゃない、感じるんだ』って。
今度こそ! と覚悟を決めて、魔導ペンを握る手に適度な力を入れる。うわ、手汗すごっ。さっとスカートで手汗を拭って、カッと目を見開いてゆっくりと書き始めた。
魔の根源たる我が命ずる
……ふぅ、まずは一節目が書けた。うん、まずまずいい感じで書けてる。というか魔導ペンすごいな。何がすごいって、頭の中に『教科書体』の字形をイメージしながら書くだけでちゃんと思った通りに書けるんだもの。前世でチマチマとベジェ曲線でフォント作ってた私ってなんなの? ってくらいの驚きだよ。前世で魔導ペンがあったら人生変わってたんじゃないかな。
っと、続きね。
全てをなぎ倒す
よしよし二節目も大丈夫そうだね。きっちり全角アケましたよ! あとは一気に。
風よ来たれ
「……魔導詩出来たーーーーっ!! 見て見てコレ! 初の魔導詩! 完成で〜〜〜〜す!」
『魔の根源たる我が命ずる 全てをなぎ倒す 風よ来たれ』
誰もいないのはわかってるけど、自慢するかのようにその場でピョンピョンと飛び跳ねる。自分で言うのもなんだけど、見た目だけは超ハイクオリティの魔導詩が完成した。我ながら見事な教科書体でスラスラと記された23文字が、一糸乱れぬ整列をしている。うわーコレほんと誰かに見せたーい。
「……うんうん、初めてにしては上出来じゃない!?」
「あーやっぱり来たんですね。というかいつから?」
「キミが一節目の三文字目を書き始めたあたり、かなぁ」
「結構前から!?」
神様よっぽど暇神なんですね。あえて誤字で言うけど。




