第20話 ー キミが書けばそれは必ず魔導詩になる
「ちょっとアイテム袋、見てみて?」
神様にそう言われてステボのアイテム袋を見てみると、それまで注意して見ていなかったから気付けなかった、あるアイテムが目に入った。
『魔導紙×999』
これって、もしかして? 魔導詩を書くための紙ってことだよね。
「まさかとは思うけど私、自分で魔導詩を書けるの?」
「そうよ〜。明日にでも試してみるといいわ」
「そんな簡単に言うけど、やり方教えてほしいんですよね」
「あー、それはね……」
神様は言い澱む。頭を左右にうーんうーんと傾ける様は、なんて言おうかしらといった佇まいだ。その様を見ながら心の中で「答え早よカモン!」と言いつつ、両の掌を上に向けておいでおいでしている私。
「とりあえず書いてみればわかるんじゃなーい?」
「えー(棒)」
うん、なんとなくわかってたよその返答。自分でなんとかしなさいってことね。はいはいなんとかします、と呆れ顔で神様を見る。その目はきっと「神様には何も期待してない」って言ってたと思う。だって実際そういう目をしたつもりだからね。でもねぇ、今のところ神様しか頼れる人いないのよね。
「そんな目で見ないでくれる? 『書いてみればわかる』って言ったのはね、ぶっちゃけ『キミが書けばそれは必ず魔導詩になる』ってことなのよ」
「……は? そうなの?」
「そうよ〜、だってそういう風に設定してここに転生させたんだから。『そこそこ高き教養』『読み書き』スキルの恩恵、ってところかしらね」
「っ!」
マジですか。それって凄いことなんだよね? だって誰にでもできるわけじゃないことができるんだよね? それってチートじゃない? なんだぁ、私最強じゃない? TUEEEんじゃない? ……いやいやちょっと落ち着こう私。
少し(じゃないけど)上がったテンションをセルフクールして、ふぅっと一息、『魔導紙×999』をタップして解説文を読んでみることにした。
『様々な効果をもたらす魔導詩を作成するための紙。魔導ペンで書き記した文章のみ効果が発現する。取り扱いには注意しよう』
→取り出す
←しまう
ふむふむ、魔導ペンでのみ、か……。ん? 取り扱いに注意? すぐ破けたりとかそういうことだろうか。いや、買ってきた魔導詩を見ても厚手のコピー用紙くらいの斤量はあるし、故意に破かない限り、そう簡単に破けるとは思えない。それとも貴重なものだから、ってこと?
「あと、魔導ペンもアイテム袋に入れておいたからね?」
「……神様って意外と有能なんですね」
見るとなるほど、ちゃんと魔導ペンが入っている。すぐさま魔導ペンの解説文を呼び出し、目を走らせる。
『様々な効果をもたらす魔導詩を作成するための筆記用具。頭に浮かんだイメージをそのまま書き記せるため、インク要らず。取り扱いには注意しよう』
→取り出す
←しまう
ここにも取り扱いに注意とあるね。とりあえず紙とペンの取り出しボタンをタップすると、その瞬間すでに紙もペンも手に持っていた。
入街パスの時もそうだけど、取り出したアイテムは必要な場所に出てくるみたいだね。うん、便利便利。これだけは異世界>前世だ。
取り出した二つのアイテムを観察してみると、魔導紙は買ってきた魔導詩のそれと同じ紙質のようだ。魔導ペンの方はというと、うっすらと金色がかった羽ペンで、特に変わったところは見受けられなかった。
そんな私に何か言いたげだった神様が鼻をスンと鳴らして、
「意外とは失礼ね。ワタシは有能なのよ」
「そうですね失礼致しました意外なんて言って申し訳御座いませんでしたその御怒りどうか収めては戴けませんでしょうか見目麗しき全知全能の女神様」
「うわっ、なにその感情のない言い方?」
「ソンナコトナイデスヨ」
だってなんか疲れるんだものこの人と話してると。というかもう外を見ると真っ暗なんですけど。はやく帰ってくれないかな。
「はぁ……、まぁいいわ。とにかく明日にでも色々試してみたらどうかしら? 今日買ってきた魔導詩をキミなりに改良《校正》してみる、っていうのもいい練習になるかもね」
「あーなるほど、それはいいですね。さすが神様、意外と有能なん――」
「そういうのもういいから」
プンスカ神様は、「じゃあまたね!」と捨て台詞を決めてスッと消えていった。
今日はもう寝て明日にしよう。あ、明日子供達の授業の日だったよね? しまった! 準備してないじゃない! 転生初日に徹夜とかなんなのもう。先生なんてやったことないんだけど大丈夫? 私。
斤量とは、紙の厚さを表す単位で、1,000枚で何キログラムの重さになるか、を表しています。つまり、重さがあるほど厚い紙、ということになります。ただ、紙には大きさがあるので、実際は『四六判・110kg』と、紙の大きさも併記されます。ちなみに四六判のサイズは788mm×1,091mmです。




