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第15話 ー 脳が痒い!

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


かつてこの大陸 にはすべてあり ませんだった。

ある ひのこと神と名乗ります 奴が参る

神は僕たちに以下の言葉

をおっしゃい ます過去形、

『かみにおながいおかく きさまのみなさまの暮ら

すは浴衣になるでせう』それでもって神ちゃんわ紙の

作りかたくれますた!

紙によい かんじでをねがひを かくとみずとか火と

か使へてべんりな暮らすができたように なります。

よろこびました我ら達でもながらぜんいんの

みなさまがかけないからかける

人間が超がんばってかいたかいたかいたかいたかいた。

かけるやからはだい じにうやまってあげたぜ。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「……な、なんじゃこりゃあああぁぁぁ(私の心中お察しくださいませ)」


 もうまったく意味がわからないし、そもそも誤字脱字誤用が多すぎて文章の体もなにもないじゃない。句読点・丸もおかしいし、丁寧語も謙譲語も尊敬語もあったものじゃないし、行替えもおかしいでしょ? ああぁ痒い痒い脳が痒い!

 『うやまってあげたぜ』とかある意味新しすぎでし……ょ。ってこちらも思わずおかしな位置に三点リーダー二つも入っちゃったよ。というか声出ちゃったよ。


「申し訳ございませんが、お静かに願えますか?」


 ハッと振り返ると、一人の男性がこちらを訝しげに見ていた。

 年の頃は50代、背筋の伸びた痩身に、端正な顔に白銀の豊かな口髭を貼り付けて、整えられた髪の毛もやはり白銀。仕立てのいいスーツに蝶ネクタイ、といった如何にも紳士然とした佇まいの男性がフンと鼻を鳴らして続ける。


「貴女のようなお若い女性が文字を読めるのですか?」

「えぇ、まぁ一応」


 なに言ってるのこのおじさん? 当たり前でしょこのくらい。まぁ読んでもアレだったから意味はさっぱりだけどね。それよりも人を小馬鹿にしたような物言いと表情がなんとも気に入らない。私これでも『そこそこ高き教養』のスキル持ちですからね。実感まったくないけど。


 おじさんの態度に合わせるように生返事を返すと、それまで小馬鹿にしていた男性の顔が急にパッと明るくなった。


「ほう! 読めますか、それは凄いことです!」

「……え? そ、そうなんですか?」

「えぇもちろんです! 非常に興味深いですね」

「読み書きは、実家で家庭教師に習っていたのです」


 神様の言葉を借りると『と、いう設定です!』らしいのでそう咄嗟に返したのだけど、そこからの男性は決壊した河川の如くの勢いで捲し立てる。というかめっちゃ声いいねこのおじさん。こういうのってイケボって言うんだっけ。


「なるほど読むだけでなく書くこともできるとは。でも『この国 の歴史』を読めるとは、いやはやなかなかのものです」

「これからもこちらに通って色々と読もうかと考えているんですよ」


 さらに男性はどんどんヒートアップして、もはやこちらのことなどお構いなしだ。


「おおお! それはそれはなんとも勉強熱心なことです! 私も長いことここで館長をしていますが、ここまでの人は初めてですよ!! そもそも本というのはですね――」


 お静かにと言った貴方が一番煩いんですけど。でも今ここには私たちしかいないようだからまぁいいか。というか凄い喋るねこの人。


 貴重な情報を垂れ流すであろう男性の放つ一字一句も聞き逃さないように、私は耳に意識を集中した。

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