表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/101

第14話 ー 『この国 の歴史』

「はあああぁぁぁ……」

 

 深さ自己新記録更新というくらいの深いため息がつい出てしまう。


「肝心なことを聞くの忘れちゃったなぁ……」


 白狼亭の飯1のあまりの美味しさと可愛い子ちゃんに気を取られて、店を出てから気づいたのだ。とはいえわざわざ店に戻って聞くほどのことじゃないから、余計に気になって仕方がない。


・なぜ具体的なメニューではなく『飯1〜3』と書かれているのか?


 しかも『金の日のカレー』という追い討ちに、さらに浮き足立ってしまって、聞くのを完全に忘れてしまったのだ。

 でもその疑問は、ここに着いて理解することができた。いやむしろ軽い絶望、といった方が私にとっては適切なのかもしれない。


 ステボのマップでこの施設を見つけた瞬間、絶対に来よう、来なくてはならないと思っていた場所―――


『図書館』


 そう、図書館といえば知識の海そのもの。前世ではネットでちょちょっと検索すれば、あっと言う間に知りたい情報が手に入るけど、ここは異世界。ステボには残念ながらここまでの機能はないようだ。

 でも、きっとここならこの世界のこと、色々知ることができるよね。拳をぐっと握りしめて、いざ中へ!


「……あれ?」


 扉を開けて図書館に入ると、そこは確かに図書館。図書館、なのだけど……。

 随分と蔵書が少ないと感じた。図書館というよりは、少し大きめの本屋だねこれは。雰囲気はヨーロッパの古い本屋そのもので、居心地は良さそう。

 でも、人が全くいない。奥にはカウンターらしきものはあるのだけど、そこにも誰も座っていない。異様な雰囲気を傍に置き、無作為に一冊の本を棚から取り出してみた。


『この国 の歴史』


 と背表紙に書かれている。お世辞にも綺麗とは言えない文字で書かれている。なぜ手書き? この世界に印刷技術はないのかしら。いやいやそれよりも。


「なんでこんなところに全角?」


 かつて前世で仕事にしていた校正。大変だったけど、それなりに誇りを持っていた。だからこれは物凄く気になる! ちなみに『全角』というのは、文字間のアキのことで、『全角』は一文字ぶん、半文字ぶんのアキは『半角』と言う。

 普通この場合は『この国の歴史』と表記するのが正しい。あえて全角を入れるなら『この国の 歴史』にするべき。それ以前に全角を入れる意味など全くないのだけど……。


「ま、まぁ世界が違えば文法も違うだろうし? これが正解かも知れないし?」


 と思いつつ、あくまで『この世界のことを調べる』という本来の目的を思い出しパラパラとページを捲り、流し読む。ふむふむふむ……。


(うううぅぅ……、い、いやあぁぁぁぁぁ!!!)


 もちろんここは図書館だから、声には出さずに心の中で大絶叫した。土砂降りの雨の中に放り出された子犬のようにプルプル震えているのが自分でもよくわかる。それだけの破壊力をこの『この国 の歴史』は持っていた。

 その内容以前に、なにこの誤字脱字誤用のオンパレード! こんな本が蔵書なの? 前世なら即回収ものでしょ。

 こんな欠陥だらけの本、元校正士の私にはどうしても見逃せないよ。あまりの酷さに内容が何一つ入ってこないレベルで酷すぎる。

 もはや校正士の目線でしか読めない。というか見れない自分がいる。装丁豪華・中身ポンコツなこの本、例えるなら『錆びたゼンマイ駆動の高級リムジン』といったところ?


 それの序文にはこんな文章(というには稚拙にもほどがあるただの文字列)が書かれていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ