第12話 ー 白狼亭の可愛い子ちゃん
「ここが白狼亭ね……」
露店街の端に位置する白狼亭。店の窓ガラスをそっと覗いてみるとなかなかの盛況ぶりが見てとれる。入り口の横にはメニューの書かれた木製のボードが置かれている。
さて何食べようかなぁ。と、メニューのボードを見てみると……。
昼
飯1:650ガル
飯2:550ガル
飯3:600ガル
飲:+150ガル
……えっと、これ何が出てくるのかさっぱりなんですけど。普通だとA定食(豚の生姜焼き・ご飯・味噌汁・サラダ付き)とか書いてあるんじゃないの? まるでこれじゃあ『一見さんお断り』な雰囲気じゃない!?
……いやいやここは異世界。こういうルールなんだろうね。そう思うことにしないと何も食べれないし。なにより生命維持のイエローランプが絶賛点滅中。
すると店内から一人の女性が出てきて声をかけてくる。
「いらっしゃいませ、お一人様ですか?」
「え? は、はい!」
そういえばこの世界に来てからほとんど人と会話をしていないことに今更気づいた。まともに会話したのはミームしかいないし、村人とのそれは挨拶程度。
それはさて置き、なによりも驚いたのはこの女性の可愛さ。さらっとした緩やかな銀髪のウェーブヘアをポニーテールで纏めていて、着用している真っ黒なエプロンの胸元には白銀の糸で小さく狼の刺繍が施されている。私とは系統の違うどこか快活な雰囲気を纏うこの女性、髪色も相まって、きっとこのお店の看板娘なんだろうな……って、よく見るとなかなか立派な胸を持っていらっしゃるね。
ただでさえ可愛いのにこちらに向ける向日葵のような笑顔(営業スマイルかもだけど)が中身おじさんの私にはもう眩しすぎて失明しちゃいそう。
ちなみに言っておくと、おじさんと自分を下げて表現したけど、没年26歳ですからね。人によってはおじさんかもだけど。
「よろしければ中に入ってからメニューを決めてくださって構いませんよ!」
と、可愛い店員さんに半ば無理やり店内に案内されると、様々な美味しそうな香りが容赦なく私に襲いかかる。今はもうとにかく何か食べたい。三大欲求のひとつ、食欲を可及的速やかに満たさなければね!
店の中を見回せば、広くもなく、かといって狭くもなく。つまりちょうどいい感じの広さの店内は、小綺麗にした街の洋食屋、といった趣で、なんだか懐かしい感じもする。こういう肩肘張らない雰囲気っていいよね。
メニューがアレなので、悩むことなく先ほどの可愛い子ちゃん店員を呼んだ。
「えっと……飯1〜3っていうのは?」
このまま「飯1お願いします!」と注文するのもギャンブルっぽいので、情報収集も兼ねて可愛子ちゃん店員に訊ねてみる。
「1っていうのはお肉系で、2が魚系、3っていうのがその他、ですね。特にウチのお昼は決まったメニューを出していないので、つまり日替わりが三種類、ということです!」
「そうなんですね、では飯1をお願いしたいのですが」
「はい、承知いたしました。ちなみに今日の飯1は鹿肉の香草焼、野菜スープ、それとパンですね。パンは白か黒を選べますよ」
なるほどなるほど、前世でいうところの『ジビエ』ってやつか。クセはあるけどハマると美味しいってことね。
「……では、白パンにしていただけますか?」
ここは無難に白パンにしておくのが正解、のような気がする。あくまでイメージだけど、黒パンって固いよねきっと。せめてこの世界での最初の食事は、前世で食べていたものに近いものがいいな。
「かしこまりました。追加でお飲み物はいかがなさいますか? コーヒー・紅茶がございますが」
さっきから聞いていると、さほど前世との料理の差っていうのはないように感じる。でも、こればかりは食べてみないことにはなんとも、ね。
飲み物にしても、どれも普通に前世にあったものだし、少なくとも『食』に関しては困らない予感。
「そうですね……、では紅茶を追加してください」
「はい、かしこまりました。では少々お待ちください」
さあ、異世界料理、初体験!




