第10話 ー バルサの街
わずかに蛇行した一本道を歩く。
時折吹く穏やかな風が頬を撫で、髪を揺らす。
天気もいいし気温も丁度いい。実に贅沢な散歩。気持ちは逸るばかりだよ。
30分ほど経っただろうか、ようやく街へ入る門が見えてきた。
石積みの防壁に囲まれてはいるけど、いわゆる城壁みたいに高いものではない。この世界は平和なのかな? 戦争とか魔物とかいないのかしら?
異世界転生モノのセオリーだと、門番に入街料をいくらか払って入るよね。とはいえ異世界生活一日目、正直どうしたらいいのかわからない。
こんな時こそのステータスボードだ。さっそくこめかみトントンでボードを呼び出す。ちなみにこのボード、自分以外には不可視らしく、ところどころでボードを見ているであろう仕草をする人を見ても、ボード自体は私には見えなかった。確かに個人情報満載のものを見られるのは、ね。
「ふむふむ……、ここは『バルサの街』っていうのね。人口約2,500人、この一帯では三番目に大きな街、か」
そういえばこのステータスボード、マップと個人情報以外のアイコンのチェックがまだだった。どれどれ……。
「これは……?」
皮の袋が描かれた黄色いアイコンをタップしてみると。
「なるほど、これはアイテム袋なのね!」
これまた異世界あるある、アイテム袋。ここに色々入れて持ち運びできるんだね。あれ? なんかいくつか入ってるな。その中の「入街パス(ゴールド)」をタップしてみると解説文が表示された。
『街に出入りする際に使用するパス。入街時に門番に提示すると税を払うことなく通過できる。ゴールドパスはこの大陸全ての街・村で期限なく使用可能』
→取り出す
←しまう
ん? この『→取り出す』ボタンをタップすればいいのかな? 試しにポチッとしてみると。
唐突にそれは首にかかった状態で現れる。なにこれすごく便利じゃない!?
さすが(ゴールド)なだけあって、そのまんま金色だ。形状としては、転生前の世界で例えれば、兵士が首から提げる『ドッグタグ』に似ている。よく見てみると、なにやら文字らしきものが刻印されているものの、私には読めない。どうしたの読み書きスキル!?
街に入る人々の列に並びながら、引き続きボードを見る。まずは露店にでも行ってみるかな。ふむふむ、露店街っていうのが入ってすぐにあるんだね、で、そこを抜けるといろんな専門店があって……お、ここは……?
「はい、次の方ー」
いよいよ自分の番。いかにも門番、といった体躯の男に、首から下げたパスを見せて、さあ入ろうかという時に。
「っ! ちょ、ちょっと君、これは……?」
「え? パ、パスですけど何か?」
「少しここで待っていてもらえるかな」
なになに、どうしたのこれ。もしかして偽物なのこれ? 私から半ば奪うように門番がパスを持って詰所に戻っていく。大丈夫なのかな……?
一分ほど経ってさっきの門番が戻ってくる。
「君、これはどこで手に入れたんだい?」
さすがにこれは「アイテム袋に入ってました〜」じゃ済まなそうな気配だ。
「えっと……そう! 実家からのプレゼントです……?」
「うーん、そうか……。よし、わかった。すまないね、これはちゃんとした本物だから大丈夫。入ってよろしい」
「は、はい、ありがとうございます」
どうやら大丈夫なようだ。ふぅぅとひとつ安堵の息を漏らす。
「君くらいの年齢のお嬢さんが持っているのは珍しいからね。つい疑ってしまった、申し訳ない」
「そんなに高価なものなのですか?」
「まぁ高価といえばそうなんだが、ゴールドパスはどちらかというと商人や役人、つまり街への出入りが頻繁な人が持っているものだからね」
なるほど、そういうことね。でも毎回税を払うより手間がないのはありがたい。というかこんなのなんで持ってるんだろう? これも神様のサービスの一環なのかな。
色々と疑問は多いけど、まずは第一関門クリアってところかな、門だけに(えぇわかっていますよひどいダジャレだってことは)。




