第8話 ー 『と、いう設定です!』
まずは、これからどうしたらいいのかを思案すべく、ベッドに腰を降ろす。
「さてと……。どうしようかしら」
うむむ……女言葉慣れないぞ、正直男の娘な気分。いやいやもう少なくとも体は女性なんだからむしろ男言葉を捨てる気でいないとヤバいよなぁ。というか性別はいらないとは言ったけど、変えてくれとは言ってないんだが。ちゃんとはっきりさせとけばよかった。なにがサプライズだよ。こういうのはサプライズじゃなくて『驚愕』だろ。
そういえば自分の顔をじっくりと見ていなかった俺は、机の上にあった手鏡を今一度手に取って覗いてみる。
「お……おおぅ……これは……」
正直に言いますとめっちゃ好みです、はい。明るい栗毛色の肩にかかるくらいのセミロングのストレートヘアーに白い肌、パッチリとした二重瞼に利休鼠の虹彩、長い睫毛、スッと通った鼻筋、ほどよく肉付きのいい桜色の唇……。
なにより先生然とした知的な雰囲気。なんか気分も盛り上がってきたけど、まずはこの世界を知ることが最優先だ。見た目は後回しだ。手鏡を元の場所に置き、今度は隣にあった一冊のノートを手に取ってみた。
(これは……?)
表紙にはわざとらしくでかでかと『日記』と書かれている。この家にあるということは、俺が書いた日記なのか? もちろんこんなもの書いた覚えはないのだが、とにかく読んでみることにした。
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これは大きな収穫だ。俺のこれまでのことが詳細に書いてあるじゃないか。
どうやら俺ことエイミー・ライトウェルという女性は、半年前に両親を不慮の事故で亡くしたのだが、既に成人していたこともあり(この世界では15歳で成人扱いになることをあとで知った)、それまで両親と一緒に住んでいた家を売却し、最低限の荷物とお気に入りの数冊の本を持ち、旅に出た。そして今住んでいるこの村に二ヶ月ほど前に流れ着いた。村人の人柄の良さ、立地、快適さに心安らいだ。空き家を村長に紹介してもらったことが背中を押し、村に落ち着くことにした。元々裕福な家庭故にそれなりの教育を受けていたことが幸いして、この村に住む子供達に勉強を教えることで収入を得ることができた。教えていたものは主に読み書きと算数。子供達はもちろん、その親御さん達からもいつの間にか『先生』と親しみを込めて呼ばれるようになった。
おおまかにいうとこのようなことが書かれていた。まぁこれだけ自分のことがわかれば今は充分だろう。そしてさらにページを捲ると、勉強を教えている子供達の名前・性別・年齢・見た目の特徴・得意不得意な勉強などが詳細に書かれている。人数は10人で、男女比はちょうど半々。さっきの子、ミームと言ったか? その子のことも書かれているな。ミームは読み書きはほどほど、算数が苦手のようだ。年齢は9歳、か。
日記に記された内容を読み終えて、ハッと気づく。
「あぁ、なるほどな。この日記が神の言っていた『前世の記憶』ってわけだ」
もっと何か書かれていないのかとページを捲ってみたが、これ以上は何も書いてないらしく、捲れども白紙のページが続く……、のかと思ったらポツンと一言だけ書いてあるページを見つけた。
『と、いう設定です!』
……えー(棒)。これどう考えても神の仕業じゃん。
利休鼠とは、DICカラーガイド『日本の伝統色』N-953の色の名称で、少しグレーがかった緑です。DICカラーガイドの伝統色は他にも『フランス』『中国』があります。エイミーがなぜこの表現をしたかというと、学生時代にグラフィックデザインを勉強していた際にDICカラーガイド『日本の伝統色』を持っていたからで、いわば彼女なりにカッコつけた表現だと理解していただけば。ちなみにRGB値では、R:103 G:110 B:99(AdobeRGB)になります。




