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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

お姫様に憧れていた少女の末路~異世界転生したら人生のなにもかもが終わっていた件について~

作者: 雲母

『理想』


それは誰しもが求めてるもの。


クラスの中心になりたいとか、テストで満点を取るとか、可愛いあの娘になりたいとか、色々と様々な理想があるあろう。


私、白川真菜も理想を抱いている人間のうちの一人だ。


至って普通の女子高生で、お姫様を夢見る少女。


私が危ない時に早々に駆けつけてくれる騎士とか、格好良い王子様。そして、もし可能であれば私を導いてくれる勇者様なんてものもいてくれたらいいなぁ。


そんな妄想をするどこにでもいる平凡な人間。


だがしかし、運命とは残酷なもので、平凡な私から理想を奪い去っていくんだから――。


悲劇の始まりは、とある修学旅行の宿で寝ているときだった。


突然、黒い煙が視界に入ったのだ。


鳴らされる警報。近くで揺らめく炎。


どこぞの馬鹿がライターを布団に放火したのだ。


急いで逃げようとしても既に炎は館全体に広がっていた。


遠のく意識。


その日、とある学生達は生存を許さない黒い霧と赤く揺れる世界で命を絶った。


暗い意識の最中、私は二度目の死を覚悟された。


何故死んだ後にも意識があるのか、これはひとまず置いておく。


今、私と言う全体が途方もない何かに引き寄せられている感覚がした。


磨り減ってはいけない何かが私と言う全体から徐々に消えていく。


魂と言う言葉があるとするならば、これが該当するのだろうか。


その私の大事な魂は何かに引き寄せられながらもまるで摩擦によってすり減らされている。


怖い。助けて。


そう思いながらも永遠に終わりそうもない地獄の最中、意識は暗闇へと落ちていった。




気がつくと私は薄くらい倉庫の壁にもたれていた。


鼻を刺激する酷い匂いが充満しており、背中に冷気を感じる。


前を見ると、鉄格子が道を阻んでいた。


幸いにも、出入り口っぽいところがあったので、外に出ようと立ち上がった。


おかしいな。周りのものが全部大きく見える。


さらに、扉までの距離をも感じる。


呆然とする意識の最中、ふと視線を降ろす。すると、身体に異変が起きているのが分かり一気に意識は覚醒した。


驚くことに私は背が縮んでいたし、何よりも服を着ていなかった。


首には赤いわっかみたいなのが付けられていて、取り外すこともできなかった。


そのまま私は扉までいくと、背伸びしながらあけようと頑張った。


がしゃんがしゃん。


扉を明けようにもまるで鍵が掛かってるかのように空けてくれない。


「何よこれ……」


自分のあまりにも幼い声を聞いてはっとした。


まるで、身体自体が幼児退行していた。


「……ぅわ」


突拍子もなく一気に、脳の中で処理される恐ろしい出来事に私は戦慄を覚え、私はその場で座り込んだ。


牧場や畑が豊富な村。そして、一夜にして茶色い豚のような顔をした二足歩行の化け物オークが多勢で攻めてきて村が崩壊させられた。


男はその場で殺され、女子は掻っ攫って巣まで送られてきた。


さらに、最悪なことに村から攫われる前に無数のオークに服を引きちぎって――。


汚される純血。数々の暴力。身体はきっちりと押さえられており抵抗すらできない。


霞む視界。そこでぷつんと意識は遠のき気がついたら首に赤いわっかが付けられてここにいた。


「何よこれ……」


先ほどまでの鮮明なまでの映像が脳裏に焼きつき、臭いや身に覚えのない痛みが身体を支配していた。。


まるで、自分が体験したかのような感覚に戸惑い空ろな眼差しのまま下を向いた。


死んだ後の世界は、地獄のような何かだった。


すると、足音が聞こえてきた。


徐々に大きくなっていることからこちらに歩いてきているようだ。


コツコツ。コツコツ。


「まだ元気なガキがいたとはな」


その足音が止まりだすのと同時に頭上から声が聞こえた。


私は、その声が聞こえた方に振り向くと自分でも分かるかのように顔が引き攣った。


豚は不気味な笑顔で見下ろしていた。


私から見て大きい身体。右手には鞭を持ち、口元が少し浮いていて気味が悪かった。


「……」


私は無言のままだ。


「何だその反抗的な眼は」


「……」


心底気持ち悪い笑みを浮かべている野郎に私は無言のまま顔を逸らさない。


「どうやら、オシオキが必要みたいだな」


豚はそう言うと、鍵を開けてここに入ってきた。











夢なら覚めて欲しい。


そう何度も願っていたが、願うたびに身体は悲鳴を上げて豚共は嗤いながら私を玩具にしてくる。


どうやら私は生まれてくる世界が違っていたようだ。


いつしか、これが現実で高校生をしていたときが夢であたっと錯角するほどに長い間もてあそばれた。


どうして……。


なんで……。


いつしか言葉は出なくなり、玩具になった私。


ドス黒い感情が芽生えてくる。


どうして、私だけがこんな思いをしなければならないのか。


何で、私だけこんなに世界は理不尽なのか。


一体、私が何をしたんだと……。


心が蝕んでいくのが分かる。


ハハハ……。


ここにきてようやく私は理解してしまった。


理想とは空想でしかない。


私を守ってくれる騎士なんて存在しない。


私を助けてくれる王子様なんて存在しない。


私を導いてくれる勇者様なんてものは存在しない。


私は理想のお姫様になんてなれない。


現実的に考えても無理なことくらい分かる。

でも、ここにきてようやく身体がそれを理解してしまった。


この世の理不尽を……。

そして、理想に縋れるだけの余裕がないということも……。


夢や希望なんてありゃしない。


ならさ、こんな世界なくなってしまえば良いんだ。


あはは。


あはははははははは。


アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!


気がつくと私は行動を起こしていた。


この世界には魔法と言うものがある。


村にいたころに魔法を使っては近所のガキ共を懲らしめていたのだ。


しかし、その魔法ではどうあがいても豚共をやるには無理がある。


時間も掛かるし、何よりもそんな暇はない。


なら、手っ取り早くやれるものを作ってしまえば良い。


とあるブツを思い描きながら魔法で武器を生成し、私はにやりと笑みを零した。


「おら、出ろ」


いつもの豚が入ってきた。


私は後ろを向きながら反応しないままでいた。


「おい、コラ聞こえてるのか?」


豚が近づいてくる。


そして、掴みかかろうとした瞬間に私は勢いよく振り向いた。


「ん?」


豚は一瞬だけ驚いたが、もう遅い。


私はその隙に引き金を引いた。


パン! と言う音が響いた。


遅れてくるようにドサッって言う音も聞こえた。


「……」


やってしまった。


しかし、何故か恐怖心や達成感など特に何も感じなかった。


人間相手ではないからなのだろうか。


無心にぴちゃぴちゃと何かを踏みながら歩いていった。


「アハハハ……」


次なる獲物を探すために気配を辿りながら歩いた。










出会いがしら、撃って撃って撃ちまくった。


魔法を発動する前にブツを撃ち込む。


野郎どもが接近する前にブツを撃ち込む。


弾は魔力で生み出しているからリロードなどの時間ロスも考えなくても良い。


「ハハハハハハハハ!!!!」


撃つべし撃つべし撃つべし。


数がいっぱいなら手榴弾を放り込んでやった。


正確には手榴弾に似せたものの中に炎爆の魔法陣とたっぷり油やガスなど燃え広がるものがいっぱい詰め込んだものが内蔵した爆発兵器。


私から離れた瞬間に魔法陣が勝手に起動して爆発する仕組み。


ソレを放つ。


爆発で一気に木っ端微塵になったのは良いけど、他の箇所に燃え広がってしまった。


豚共の悲鳴が聞こえる最中、私は影に潜みながら銃と手榴弾を生成しながら殲滅作業に入った。


運良く炎から免れてる奴を銃で射殺しながら私は考えに耽る。


この行為が正しいのだろうかと


「……ハハ」


馬鹿らしい


ふざけたことを思ってる間に豚共は次々とこの世から消えていく。




歩いていくうちに、随分と奥まで歩いてきたようだ。


そこで初めて人とであった。


暗い部屋の奥底で椅子に腰掛けていた。


その人は黒いローブに身を包み込んでいる男がいた。


その何かは魔法を唱えようと呪文を詠唱している。


「二ィ」


私はそこに笑いながらブツを打ち込んだ。


「化け物め……」


心臓の位置を貫く弾丸。


男はそのまま前に倒れながらも私を下から睨み付けた。


口からは赤いものが流れており、最早呪文すら発せない様子。


心臓の位置からドボドボと血が円状に広がっていく。


私はゆっくりとあるいていき、頭に銃口を当てた。


「――そう、私は化け物」


そして、引き金を引いた。


頭を貫かれた男はそのまま意識を手放して今度こそ死んだ。


人を殺した。


しかし、そこには達成感や幸福感、罪悪感や恐怖と言ったものも無かった。


ただただ無心。自分でも驚くべきことに人を殺したという行為に何も感じないらしい。


私と言う存在は壊れたらしい。

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