一話「戸惑いの中」
月明かりが銀色に照る夜空の下、野原の真ん中で、剣と剣が触れ合い甲高い金属音を鳴らす。
白い鎧を装備した狼と青い鎧を装備した大きな犬が目の前に浮いている、眼鏡を掛けた中年男性と戦っている。同じ種族じゃないのか?女性兵士もちらほらいる。そして自分は白い方だ。
鎧はそんなに、ゴツくなく軽めで、白いベースに赤いラインが裾に入っている。
「ああんおおかみ?なに言ってんだ」
「よそ見は危ないですよ」
「殺っちゃうよぉ」
狼と犬が喋った。さすが異世界だ。
その、浮いている男性はこちらに拳銃らしきものを向けている。そして引き金を引く。銃声が野原に轟き、一弾の#弾__たま__#が狼に向けて放たれる。
「おお、あっぶねぇ」
「すごい瞬発力ですね。」
月光が銃弾に反射しそれを見て剣で間一髪で#弾__はじ__#く。
「ぼっ立ってないで戦え!」
「あっ、はい」
怒られた。だが元気よく返事はしたものの、剣技なんて習ったことないのでよく知らない。というか、いきなりここに来させられたのに戦えなんて可笑しなものだ。だから適当に剣を抜いて振りかざし、振り落とす。
「―――――っ!」
振った自分が一番驚いた。振った瞬間斬撃破が剣の先からものすごい光を放ち飛んで行ったからだ。#忽__たちま__#ち目の前にいた敵は真っ二つになった。
「おお、さすがだ…」
狼が感嘆する。現状を理解できずにいる。俺が強いのか、この剣が凄いのか。その答えはすぐに出た。
「流石、鬼の角でできた#剱__つるぎ__#…」
「鬼?角?」
「知らんのか?戦いが終わったら教えてやる。今は戦いに集中しろ」
よくわからないが、この剣の力があればきっと勝てる。そう思い、剣を的に向かって振りまくる。乱雑に斬撃が飛び交い、見事に敵を切り、二つにする。ーーーすると
「いやぁ、強いねぇ」
やってしまった。白装束の味方に斬撃の一部が当たってしまったようだ。
「痛てーよ、殺す気か!」「いきなりだったから避けれなかったわ」「あたったけど、なんか死んでない」
続々と立ち上がっていく。自分が仲間だと思っている人には効かないということか。
「まぁ、立ち上がるよねぇ。さっ、仲間割れでもして私の物語の一片になってみるぅ?」
そう、男が言った。
狼と背中合わせになり、お互いの背後を守り合う。また質問をする。
周りでは魔法が飛び交い、剣が触れ合う。
「ん?待って、この戦いってどうすれば勝ちなの?」
「敵の兵士の全滅か敵の降伏だ」
「なるほど、了解」
「ーーー」
「んー、あと何人ぐらいいるのかなぁ」
そう呟くと返事が返ってきた
「ざっと見るとあと五千くらいだな」
「そんなにいんのかよ」
剣頼みだが、やるしかない。運命の悪戯でこの狼の軍団に入ってしまった以上、この軍団の勝ちに貢献しなければならない。
「え?なんでさっき斬ったお前が生きてるの?」
嘲笑い、後に驚きの声をあげた方へ目を向け、問う。
「気づくの遅くなぁい?無視されたかと思っちゃたぁ。それはねぇ、わたしの『特技』ってやつ。陰属性系統の『身代わり』ってゆぅやつ」
「ーーー」
「死にそうになったら自然に仲間が身代わりになってくれる。楽だよねぇ」
前に倒れている人が変わっていて、左の方から聞こえた。
「なんだよスキル持ちかよ」「負け確じゃね」「スキル持ちに敵うわけないよ」
弱音を吐き出す味方。だが、諦めないやつがいた。―――児島爽太だ
「スキル持ちがなんですか。俺もスキル持ってません。ですが全滅させればいいのです。」
児島爽太は敵に向かって剣を向け言った。が、狙いは本人ではなく、その回りにいる身代わり。身代わりの胸元を剣で切る。
だが、ロッドは男性本人を狙っていた。
爽太は切りかかろうとすると、身代りたちは体を反らし攻撃を避ける。なぜか斬撃が出なかった。
クウェンは剣を振り下ろし身代わりを減らす。軽い長剣は、クウェンの力で振り下ろされたので敵の上半身は左側に吹き飛んだ。且つ折れてしまった。
ロッドは足に力を込め、飛躍した。一気に距離を詰める。剣を抜き、腹部に剣を突き刺す。だが、指した相手は全くの別人。
「そんなに簡単にはいかんよ。我々の種族の向かう道の果てがこんなのではないはずだ」
地に足をつけ、膝に手を置く。息継ぎ気味で言うと、剣を拾い構える。そこに足に力をこめ加速した狼が、剣で凪ぎ払う。剣で守ろうとする。が、
切った相手はまた別の人物、全滅させたと思ったが、まだいたということだ。
ロッドとクウェンは同時に地面を蹴り飛躍した。
同じ方向に切り、腹部で二つに別れた。だがそれもまた別人。すぐに後ろに蹴り退いた。
すると、男性は剣を取り出し、切りに掛かりに来た。ロッドは切りに来た男性の袈娑に切り上げ、袈裟に切り下ろす。
「ーーーっ!ふざ…けるな…身体を…私の新たな身体を…」
弱々しい声で、且つ不快な声で悪態をつく。
再び、倒れる。
敵の全滅だ。
―――そう言うと奥のほうから髪の長い人間らしい人がこっちに向かってくる。
「この戦い、詳細不明種族の全滅により、ヴァベル家、デリル家同盟の勝利」
『ーーーっ!』
という、コールのあと歓声があがった。
「このあとはどうしますか?」
「死んでしまった自陣その人たちは蘇生を、負傷者は治療をお願いします」
「承りました」
すると、地面に手で触れ、何かを唱えている。が、よく聞き取れなかった。
緑色した光が死んでいる者、負傷者に向かって地面を伝って伸びていく。
傷口は瞬く間に閉じ、死んでいたはずの者たちは蘇っている。だが完全に蘇った訳ではない、歩くことも#儘__まま__#ならないくらい回復はされていない。
ーーー始めの戦いは我らの勝利となった。