2/25
/0
――あなたの髪は、まるで黄金を梳いたみたい。
やせ細った指で頭を撫でながら、あのひとが言う。
――とっても綺麗よ。こんな醜い沼の底には似合わないぐらい……ああ、本当にもったいない。
それは口癖だった。子守歌でもあった。
――あなただけでも、真っ当な表の世界に出してあげられたらよかったのにね。ごめんなさいね、不甲斐ない母親で。
首を横に振る。そんなことはない。確かにどうしようもない毎日ではあるけれど、みんな一緒なら……たとえふたりぼっちになってしまっても、構わない。
けれどあのひとは決まって苦く微笑むだけで。
その顔のまま、迎えに手を引かれてゆく自分の背中を見送っていた。