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#57 オンリーだけどロンリーではない

薄暗い部屋の中で、チカチカと目を眩ませる、画面から放たれる光の強さは、部屋の大きさにしては強く、ひとりだけしかいない空間としても、少し強すぎる。


ふと萌那のSNSを覗いてみると、バイト先の人とかなり仲良くなっており、食いしん坊なりに食べ物も多く登場し、顔は写ってないが、何度かあなたの欠片も確認できた。


あの日のあなたのウーと唸るような声、クラシック音楽の唸り、そしてあのオーケストラの迫力たちを遥かに上回るような音量で、歌詞のない曲がボックスの中で響いていた。


母との用事のため、今日は隣にいないあなたを想いながら、右手の親指を上下左右に働かし続け、脳や心や親指、そして黒目の運動量は途轍もないものになっていた。


脳にいる、あなたの手首に痛々しく巻かれた包帯の白、そしてそれによく似た、SNSの中にいる萌那の小顔に映える白などが、私の心を様々な色へと変化させていく。


突然、思い付いたようにスマホのカメラを起動させ、慣れない自撮りをしてみたが、鼻の頭に赤みを見つけたり、自分という人物を客観的に見て少しダサく感じたり、いいことは特に何もなかった。


あなたがいない今、ツインテールを下ろしてあなたへのアンテナを休ませているが、時折、髪が私の肩を撫でることによって、あなたに触れられた感覚が僅かに現れ出す。


腹部には、ズキズキと蹴り上げる悪者たちがずっと居座り、根源だと思われる私がよく存じている同世代の女子が、瞼の裏に浮かんでは消え、チョコレートへの苦手は次第に加速していった。


「失礼します。お待たせいたしました、カレーライスです」


「あっ、ありがとうございます」


「このカレーライス人気なんですよ。私も好きで」


「ああっ、そうなんですか」


「あっ、その制服って海原くんがいる高校のヤツですよね。私、その制服に憧れてたんですよ」


「海原先輩のこと知ってるんですか?」


「はい、すごく有名ですよ。海原くんめっちゃ好きなんです。結局は他の可愛い制服の高校に決めちゃったんですけどね。入っていれば仲良くなっていたかも知れませんよね」


「ああ、そうですね」


「海原くんが出るテレビもうすぐですね。すごく楽しみですよね」


「はい」


「もしかして、海原くんと仲がいいんですか?」


「まあ、一応は」


「カッコいいですよね。うらやましいな。では、失礼します」


蟠りという名の鼻の詰まりは溶かされ、幅の広い道路に出たように、気兼ねなく息を吸い込めるようになり、この世界に少しだけ近づけた気がした。


カレーの食欲をそそる香りが鼻を突くなか、一口含んだカレーの辛さに唆され、不安そうで酸っぱそうなあなたの顔を縦長の画面に映しながら、口内に刺激と潤いを与えてくれるオレンジジュースを流し込んだ。


私に対するあなたの全ての気持ちが、花を咲かせる何段階も前であると知り、芽は出ているのか、葉は付いているのか、などなど色々と考えていたが、私はこれから、あなたの花を咲かせることだけをずっと考えていきたい。


スプーンが進んで、ブラウンの三日月がどんどん欠けていき、スプーンを持つ親指に貼り付けられた黄土色にはシミはなく、ガラスのコップに入ったオレンジ色は波打つことを止めなかった。


あなたを意識して、最近は鏡ばかり見ているが、自分が好きなわけではなく、心配などが視線を鏡へと向かわせる要因であり、凝視しなくても今の私の口元は、あなたに見せられないほど汚れていた。


タッチペンをギュッと握って、トントンと押し付けると、音楽がスッと溢れ、十八番のラブソングの精度を上げるために、マイクの硬さを右の手のひらの皮膚で受け止めながら、左の手のひらで空気を掴むように動かして、声を響かせた。


私の心臓は熱く燃え、ズキンズキンと痛む胃の中は、ブラウン掛かったオレンジジュースが染めていき、私の喉や声は遠くにいるあなただけを見つめていた。


文字たちの背景が激しく場面を変え、暗さと明るさを交互に繰り返し、音の優しさや、ゆっくりと染まりゆく歌詞との相違に、戸惑いが浮かんだ。


前髪の長い青年が、見つめる画面上で躍動していて、気持ちを込めて歌うことよりも、歌の内容を考えることよりも、最近のあなたの驚きの主犯である、あなたの長い髪を切りたい気持ちでいっぱいになった。


歌い終わった愛の言葉の余韻が、この空間にも、自分の鼓膜にもしばらく残っていて、あなたへの気持ちは、ラブソングでは伝わらないほどの成長をずっとずっと続けていた。


毎日、どこかしらに増えてゆくあなたの傷に、心配は留まるところを知らず、暇な時間が生まれれば、その度に気持ちを込めて親指を巧みに動かし、あなたに愛と心配のメッセージを紡いでいた。

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