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第四章 吸血鬼はうるう年に生まれる 11.爆発直後


「ねぇ、あの女の吸血鬼が坊やのところにいたのかくらい教えてよ」

 手っ取り早く片付けてくると剣未に言われ、我慢して待っていた篠田レミが運転席にいる屈強な男に不平をもらす。

 直後にドーンという重い爆発音。爆風で飛んできた建物のコンクリート片が当たり、車のフロントガラスがヒビ割れて蜘蛛の巣状に広がった。篠田レミは慌てて車から飛び出す。 それより先に出ていたのは屈強な男。視界ゼロの白い煙の中、突進していく。

 根こそぎもぎ取られた街路樹が路上駐車していた車のドアを破壊して防犯対策用のけたたましい警告音を鳴らしていた。地下にある瑠諏の棲家は土台を失い、八階建てのビルに押し潰されていた。

絶望的な状況の中、屈強な男が瑠諏の棲家の入口付近で瓦礫に埋もれていた剣未を早々と見つけた。着ている服に違和感があった。サイズが合ってない。瑠諏が着ていたものだった。訝る屈強な男。

「う、うぅ~」

 剣未が苦しそうに呻く姿を見て、屈強な男の行動から淀みが消えた。

「ボス!」

 篠田レミは屈強な男の声をはじめて聞いた気がした。

 骨が折れていないところを慎重に選びながら抱えると小走りで車に向かう。

「ちょっと、坊やも探してよ!」

 篠田レミの叫びは隣接するビルのプロパンガスの誘爆によってかき消された。

 ボロボロの剣未を後部座席に寝かせ、肘でフロントガラスを全部払い除け、車を走らせる。追いかけてくる篠田レミの姿など目に入っていないようだ。

 病院に連れていくと、医者には数時間安静にしていれば自然治癒で治りますと言われた。

 屈強な男は少しでも早く回復してもらおうと、血液バックを取りに車に戻った。病室に帰ってくると、ベッドに剣未はいなかった。

 風が吹き、真っ白いカーテンが寂しげに揺れていた。


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