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この想いは  作者: 細波
4/18

4.

「……あの、すみません」


蚊の鳴くような声とは、まさにこのことだろうか。

声をかけるために近付いたはいいが、いざとなると腰が引けてしまい、やっと絞り出した声はとても小さかった。

それでも、静かな図書室ではちゃんと聞こえたようで、目の前の彼が静かに顔を上げた。




――う、わぁ……。


とても綺麗な顔立ちの人だった。

肌は白く、瞳の色も薄茶色で透き通っていた。おそらく、全体的な色素が薄いのだろう。

金髪に近い明るめの髪色と相まって、男の人なのにまるで人形のような雰囲気があった。


その見た目から不良だと思い、怖じ気づいていたのも忘れしばらくボケッと見惚れていた私は、彼が首を傾げながら「何?」と声をかけてきたことで、我に返った。


「あ、す、すみません! もう閉室の時間なんです!」


少しどもってしまったが、何とか用件を伝えることができた。顔はおそらく真っ赤だろうが……。


「……五時までじゃなかったっけ?」


寝起きで少し掠れているが、低音でとても耳に馴染む声だ。

思わず聞き惚れそうになる自分を叱咤し、今日は終業式なのでいつもより早いことを告げる。

彼は「ふーん」と呟き、大きなあくびを一つこぼした。

その姿に何となく絆された私は、


「閉室作業をするので、終わるまではまだいてもらって大丈夫ですよ」


と声をかけ、いそいそと窓の鍵の確認を始めた。




その姿を、じっと見られていることにも気付かずに。







*


いつものように掃除機をかけ、カウンターの片付けをしていたところで、彼が立ち上がった。

帰るのかな? と思った私は挨拶でもしようかと顔を上げる。

すると、視界に真っ白いシャツが映り、それによってカウンター越しに彼が立っていることを知る。

目線を上げると、そこには予想通り彼の姿が。

しばらく無言で見つめ合う。


「……あの、……何か?」


気まずくなった私は、自分から声をかけた。


――もしかして、顔に何か付いてる!?


内心焦る私をよそに、彼は静かに問いかけた。


「……お前、俺が怖くないの?」


何を聞かれたのか一瞬わからなかったが、その質問が脳に届いたとき、私は思わず笑ってしまった。

こんな格好をしていて、そんなこと気にするんだ、この人。

クスクス笑いながら、先ほどの質問に答える。


「怖くはないですよ。そりゃあ、初めはそのピアスの数に少しびっくりしましたが、意外と普通に話してくれましたので」


もし、最初に声をかけたときに怒鳴られていたら、その後は怖くて話しかけられなかっただろう。

でも彼は、愛想はないが普通に会話をしてくれたし、何か乱暴なことをしたわけでもない。

怖がる必要はないと私は思ったのだ。


「私、相手はなるべく中身で判断するようにしているんです。外見は関係ないですよ」


そういうと、彼はまたも「ふーん」と呟き、小さく「変なヤツ……」と付け加えた。

その様子がまたおかしくて、私は手を動かしながらもクスクスと笑ってしまったのだった。



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