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この想いは  作者: 細波
17/18

17.

先輩と一緒にパーティー会場に戻る。

会場内はある程度落ち着いたようで、穏やかな歓談がそこかしこで繰り広げられていた。


私は隣にいる先輩を見上げた。

先輩はすぐに気付いてくれ、目を合わせてくれた。

そっと手を伸ばすと、力強く握ってくれる。

その温かさに勇気をもらい、私は震える脚に力を入れた。

そして、先輩の手をゆっくりと解き、静かに歩き出した。


兄に向かって――。









「将生くん」


兄は先生と分かれ、ひとりで友人の輪の中にいた。

私が声をかけると一言断り、私の方へ来てくれた。


「直生、どこに行ってたんだ? 姿が見えないから心配したよ」


少し困ったような表情で、「来てくれてよかった」と笑った。

最近の私の態度から、もしかしたら来ないかもしれないと思ったのだろう。


「うん、ごめんね。ちょっと人混みに酔っちゃって、外に出て休んでたの」


少しだけ嘘を混ぜて話す。

本当のことは言えないのだから仕方がない。


体調を気にする兄に大丈夫だと告げると、彼はホッとした表情になった。

そんな彼に、私は満面の笑顔を向ける。




周りの喧騒が遠くなる。

聞こえるのは、自分の息遣いと心臓の音だけ――。









「……将生くん、ずっと、ずっと、好きでした」











『直生と将生、どちらも"生"の字がつくんだね。まるで本当の兄妹みたいだ』


『こんな可愛い妹ができて、本当に幸せ』


『直生のご飯、本当に美味しい。直生のお兄さんになれて、俺、幸せ者だわぁ』










私の表情から、意味を正確に読み取ったのだろう。

兄は、将生くんは一瞬だけ顔を強張らせた。

しかし、すぐに泣きそうな顔になり、小さく小さく呟いた。






――……知ってたよ……。









私は、将生くんが私の想いに気付いていることを知っていた。

そして、彼がそれを否定することなく、あるがままに受け止めてくれていたことにも。

決して、同じ想いを返してはくれなかったけれど。


それに甘え続けたのは、私だ。

この関係を壊したくなくて。ずっと、このぬるま湯に浸かっていたくて。

告白することも、諦めることもないまま、ずっとこのまま――。






「……私を、否定しないでいてくれて、ありがとう。いままで、傍にいてくれて、ありがとう。……ずっと、ずっと、大好きだよ。結婚、おめでとう…………お兄ちゃん」








やっと言えた祝福の言葉。

そして、『お兄ちゃん』という呼び方。


きっと、私も依存だったのだ。

それでも、先輩も私も、真剣に、好きだった。

自分の『きょうだい』が、真剣に好きだったのだ。




――世界中のすべての人が否定しても、私たちだけはこの想いを肯定しよう。






その言葉を以て、私は自分の恋心に別れを告げたのだった――。




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