15.
パーティー当日。
レストランには新郎新婦の友人がたくさん駆けつけ、開始前の会場を賑やかにしていた。
両親たちは友人たちからお祝いの言葉をいただき、まだ姿を見せない二人に代わって招待客をもてなしている。
小規模にしたということで、本日は家族と友人という内輪だけのパーティーだ。
基本的に立食スタイル。飲み放題付き。
未成年の私はジュースだけだけどね。
会場に入ってしばらくは両親とともに挨拶をしていたが、明るい髪色が見えた途端、私は自由行動を開始した。
いま、私と先輩は新婦の控え室の前にいる。
この中には、先生がひとりで出番が来るのを待っている。
「……ひとりで、大丈夫ですか?」
緊張からか眉間にものすごいシワを寄せている先輩の腕をそっと引き、小声で尋ねる。
先輩は「……ん」と一つ頷き、深く息を吸い込むと、それを、静かに吐き出した。
そして、私の目を見つめ、「いってくる」と力強く言った。
ノックをすると、「はーい」と先生の声が聞こえた。
私は、ドアをくぐる先輩の後ろ姿を、少し離れた場所から見守ったのだった。
*
晃は静かにドアを閉めると、ウェディングドレスに身を包んだ姉に目をやった。
「晃! 今日は来てくれて本当にありがとう!」
灯は嬉しそうに笑う。
そんな姉の姿を、晃は眩しそうに見つめた。
「……姉さん。俺、ずっと言いたかったことがあるんだ」
「なぁに?」
可愛らしく首を傾げる灯に、一瞬言葉にするのを躊躇う。
しかし、腕に微かに残る指先の感触に勇気をもらい、意を決して口を開いた。
脳裏によぎるのは、あの日の姉の泣き顔と、悲鳴のような叫び声。
『私は晃を愛してる!お父さんもお母さんもおばあちゃんも!みんなみんな、晃をちゃんと愛してるんだから!』
想いのすべてを、そこに込める。
「…………俺、ずっと姉さんのことが、好きだった……」
*
私は部屋の曲がり角に隠れて腕で顔を隠すように座り、先輩が出てくるのを待っていた。
まだ数分のはずなのに、もう何時間もこうしているみたいだった。
――……私、先輩に対してひどいことしてるのかな?先輩だけじゃない、先生にも…… 。
先輩は、触れられたくなかったはずだ。
もしかしたら、一生心の中に抱えているつもりだったのかもしれない。
それをつつき、ほじくったのは私だ。
私が、無理矢理先輩を突き動かした。
自己嫌悪で吐きそうになる。自分が嫌でたまらなくなった。
「……こんなとこにいたのか」
顔を上げると、私と目線を合わせるように先輩がしゃがんでいた。
表情は相変わらずの無愛想だが、その瞳には穏やかな光が灯っていた。
「とりあえず、行くぞ。ここだとスタッフの邪魔だ」
先輩に言われて慌てて周りを見渡すと、確かに何人かのスタッフさんがバタバタと動き回っていた。
私は先輩に手を引かれて立ち上がる。
先輩は手を繋いだまま玄関へ向かって歩き出した。




