表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この想いは  作者: 細波
1/18

1.

よろしくお願いいたします。

――どうして声をかけたのか、いまでもその理由はわからない。


けど、あの日。


誰もいない図書室の、微かに日が差す窓際の席で。


腕で顔を隠すように伏せている彼を見て――。






無性に、声をかけたくなった――。









*


期末試験が今日で終わり、明日の終業式をもって待望の夏休みに入るが、私、瀬崎直生は図書委員のため、夏休みの間も当番の日は学校に来なければならない。

当番表は先日の委員会で配られている。

今年は夏休みが五週間。第四週にあるお盆の三日間は学校が閉まるため、図書室も当然閉まる。

その週を三年生の担当とし、第一・第三週を一年生が、第二・第五週を二年生が担当する。

そして各学年五名ずついる図書委員が一名ずつ、日曜日以外の曜日に振り分けられる。

三年生は凄絶なくじ引きによって免除者が決められていた。受験生は大変だ。


私は二年生なので、第二・第五週に学校に来ることになる。曜日は水曜日と土曜日。

土曜日の当番を決める際、三年生同様にみんなでくじ引きをし、見事私が当たりを引いたのだ。

まあ、図書室は好きなので文句はない。特に予定もないし。


今日は通常の当番の日だ。ホームルームを終え、早歩きで図書室へ向かう。

早い人はホームルームが終わった直後に図書室に来る。

図書委員が来るまでは司書の先生がいてくれたりするが、今日は先生達の会議があるので私が行かなければ図書室は鍵がかかったままで入れない。

鍵は司書の先生が持っているが、職員室にもスペアキーがあるので、今日はそれを昼休みのときに借りている。

私は焦る気持ちを押さえつつ、廊下を走らないように、でも急いで図書室へ向かった。




*


図書委員の仕事は主に図書の貸出や返却の手続き、本棚の整理、図書カードの管理である。

その他に先生から頼まれる作業をコツコツするのみだ。

楽しい作業は新しく入荷した本の紹介コーナー作り。高校名が入った判を押したりラベルを張ったり。

読んだ感想カードを紹介文とともに作ったりと、これはなかなか楽しい。

少し苦痛なのが図書一覧をパソコンに打ち込む作業。

自慢じゃないが、私はアナログ派だ。キーボードも指一本でひとつずつ打つので、時間はかかるし目は疲れるし肩は凝るし……。

このご時世、これではいけないので、大学に行ったらパソコン教室に通おうかと考えている。


今日は夏休み中から夏休み明けにかけての特設コーナー作りだったため、楽しすぎて気付けば下校の時刻になっていた。

最近は試験勉強で賑わっていた図書室も、通常通り三年生が数人受験勉強しているだけで、貸出・返却の人もほとんどいなかった。


――そのせいで作業に没頭してしまったわけだけど……。


頭を切り替えて閉室作業に取りかかる。

窓の鍵を確認しカーテンを引く。

棚から飛び出ていたり横向きに入っている本を元に戻す。

机の上の消しくずなどを払い、軽く掃除機をかける。

本格的な掃除は明日の朝に先生がしてくれるので、あくまで机の周りだけだ。

カウンター周りを整理して、空調や照明などの電気を消して鍵をかけ、隣の図書準備室にいる先生に挨拶をしに行く。

スペアキーは先生が返してくれるとのことだったので、ありがたくお願いすることにした。


外に出るとむわっとした熱気に包まれる。

夏至は過ぎたがまだ日は長い。夕方と夜の境目のような空を見上げながら、私は自転車に乗って家路についた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ