諦めた話
どうも、星野紗奈です(*^-^*)
ずっと考えていたものをようやく文章にできたので、あげたいと思います。一時間くらいで書き上げたので、誤字などあったらすみません。
それでは、どうぞ↓
「夢なんて、とっくのとうに捨てちまったよ」
俺は昔、親友にこんな言葉を吐き捨てた。十年以上も前の話だが、あの時のあいつの顔を今も鮮明に思い出すことができる。
駅の改札を抜けると、そこは喧噪。人の波の間をぬって、俺はよろめきながらも前へ進む。目に入るのは、大きなスーツケースをひく外国人やら、合コン後の若者やら、酒に酔ったジジイやら。まったく、どいつもこいつも騒がしいことこの上ない。俺はようやく仕事を終えて帰宅できるというのに。まあ確かに、この時間に帰宅できる俺の会社なんか優しいほうで、もっとブラックな企業もあるんだろうが、誰も働いたことを褒めてくれないというのはなかなか辛い社会だなと思う。
そんなくだらないことを考えていると、この辺で一番大きな交差点まで来た。家まではあと十数分と言ったところだろうか。ふと顔を挙げると、目に入ったのは大きなスクリーン。
『今日のヒーローインタビューは、牧野亮太選手です』
そういえば、ここは球場で、今日はナイトゲームがあるらしくて、―――――今日のヒーローは彼、って訳か。僕は思わずうなだれた。というのも、彼、牧野亮太こそが僕の親友だったからだ。
亮太とは小学校から高校までの付き合いで、ずっと一緒に野球をやっていた。小学校の時は、地元のクラブチーム。中学に上がってからは部活で。そうやってずっと一緒に野球ばっかりやって来た俺たちは、まさしく野球馬鹿で、親友と表すのがふさわしい関係であった、と俺は思っている。
それが崩れたのは、高校三年の春だった。原因は言わずもがな俺。俺は特別ダメなわけではなかったけれど、勉強ができる方ではなかったから、大学に進むなら受験勉強に専念しなければ駄目だとわかっていた。勿論、俺は野球は嫌いではなかったけれど、プロになれるような才能は持ち合わせていないと思ったから、進学の道を選んだ。結果、最後の甲子園に参加せずに引退した。
それを決めた時、真っ先に引き留めようとしてくれたのは亮太だった。甲子園が終わってからでもお前なら大丈夫だと、一緒に全国目指そうと、俺に語り掛けた。
「なあ、俺達ならできるって。去年も惜しいところまでいけたんだ。今年はさ」
「俺は!……もう決めたから」
「おい!本当にいいのかよ。後悔しねえのかよ。俺たちの夢は、どうなるんだよ……」
「夢なんて、とっくのとうに捨てちまったよ」
俺がそう言うと、亮太は目を見開いた。それから、悔しそうな顔をして、震える声で帰る、とだけ残して去ってしまった。
あれからあいつとまともに話していない。俺は部活をやめ、しっかりと受験勉強に励んだから、大学には無事合格した。だが亮太とは、高校を卒業してからぱったり顔を合わせなくなった。
俺は普通に高校を卒業して、普通に大学を卒業して、普通に就職した。おかげでこんな社畜生活を送っている。だが、あいつは違った。高校三年の夏、全国という大舞台に上がってたちまち注目を集めた。そうして、プロにスカウトされ、夢を叶えた。あいつは、ヒーローになったんだ。
見知らぬ誰かに背中を押され、体がよろめく。信号は既に青に変わっていた。仕方がなく、俺は家へ向かってまた歩き始めた。
しばらくして、俺の家が見えてきた。二階の灯りがカーテンの隙間からこぼれていて、まだ誰かが起きているのだと悟る。きっと、嫁だ。俺を待っていてくれたのかと思うと、胸にじんと熱いものが染み渡った。
俺には家族がいる。大事な妻がいる。可愛い子供もいる。帰る家がある。玄関のドアを開ければ妻がいて、ただいまと言えばおかえりと笑顔で返してくれる。決して金持ちではないけれど、十分すぎる幸せがある。
それでいいじゃないか。ヒーローにはなれないけれど、俺は俺なんだから。それで、いいじゃないか。
最後までお読みいただき、ありがとうございました( *´艸`)




