第一話 奴隷転生
初めまして、でってりゅーと申します。
これが初投稿の新人です。
一話の毎の文字数は読みやすさから大体三千から四千ぐらいで構成します。
作品を書くのなんて初めてなもので、作品の面白さや読みやすさとか結構色んな不安があります。
投稿もかなりゆったりなペースになってしまいますがよろしくお願いいたします。
「あんのクソ神ィィィィ!!」
「うるせぇ!静かにしろ!」
「アッハイ」
もう一度力の限り叫んだら怒られてしまった。
叫ぶのを止めるとふらっと体が揺れる。貧血だ。
空腹に加え脱水までしてるのに叫んだせいだ。
どうやらこの身体には最低限必要な栄養が足りていないらしい。
「だ、大丈……夫……?」
鉄格子に掴まりながらずるずると座り込むと、隣にいた美少年が弱々しく声をかけてくれる。
紅い瞳に紺の短い髪でまだ幼い顔立ちだった。
何とも可愛らしい少年だ。
「うん。大丈夫……ちょっと、立ち眩みがしただけだから」
何とか笑顔を作って誤魔化してみせる。
美少年は小さく笑うとまた下を向いてしまった。
彼が横顔を向けて気づいたのだが、その耳は長く尖っている。
この子、もしかしてエルフか?
もう一度檻の中を見渡すと、頭の上に大きな耳と尻に尻尾が付いていたり、褐色肌の小さな子や、腰から下が魚のヒレの子があちこちにいる。
これはもしや異種族と言う奴ではないだろうか。
本当に別世界に転生したんだな俺。
でも状況は最悪だ。人攫いに攫われ、檻に入れられてどこかもわからない場所へと連れて行かれようとしているのだ。
檻の外を見るとこの馬車は全部で五つが列となって進んでいるのがわかる。
今俺たちがいるのはその最後尾だ。
移動しているのは山中の崖の上。
下は暗闇で見えないが落ちたら絶対助からないだろう。
しかしどうしたものか。
まさか転生した直後にこんなハードな展開が始まるとは思っていなかった。
漫画で見たことある展開だが、この後俺たちは間違いなく奴隷として売り飛ばされるのだろう。
そこで一生奴隷として飼われる人生が待っているのだろうが……。
あれ、ちょっと待って?もしかしてこの人生──詰んでる!?
「嫌だァァァァ!死にたくない!死にたくなァァァァい!!」
「うるせぇつってんだろ!大人しくしてろクソガキ!」
もう一度鉄格子を掴み天に向かって叫ぶと馬車を操っている盗賊風の男が怒鳴りながら拳で檻を叩く。
甲高い音が鳴り響き子供たちが怯えて小さな悲鳴をあげる。
「もう一度騒いだら、ここから突き落とすぞ!」
「スイマセン」
俺は再び謝ると大人しくその場に座ることにした。
せっかく転生できたのに、なんでいきなりこんな目に合わなくてはいけないんだ。
「何が新しき良き人生だ。あいつ……!」
あの爽やか神様の顔を思い出すとだんだん腹が立ってくる。
次会ったら一、二回小突いてやろいか。
いや、だが今はそんなことを考えてる場合じゃない。
何としてでもここから脱出しなければ。奴隷としての人生なんて真っ平御免だ。
にしても情報が少なすぎる。まずここはどこなんだろうか。
「ねぇ君」
先程の美少年に声をかける。
俯いていた顔を上げると美少年は俺をじっと見てきた。
「この馬車、どこに向かうかわかる?」
「……ううん。ボクも知らない」
「そっか。じゃあ今走ってる場所も」
「ごめん」
「いや、怒ってないから。ごめんね」
やっぱり知らないか。
参ったなぁ。
いきなり奴隷商人に売り飛ばされたりしたらもう逃げられる自信がない。
「もしかして……逃げようとしてるの?」
「うん。これって、人攫いに捕まって奴隷として売られるんでしょ?俺はそんなの嫌だから」
「や、やめたほうが……いいよ。前に立ち寄った町で逃げた子がいたんだけど、その……」
美少年の方が小刻みに震え始める。
その顔は血の気が引き顔面蒼白になりながら何か伝えようとしている。
それだけで何が起こったのか想像がついた。
おそらくその子供は何か恐ろしい目にあったのだろう。正直聞くのも躊躇う。
「でも、君だって家に帰りたいでしょ?」
「か、帰り……たいよ。も、森に……お父さんとお母さんのいる森に、帰りたい!」
涙ぐみながら必死に答える。
その言葉を聞いてか、周りの子たちからも鼻をすする音や涙を浮かべている。
「俺もだよ。俺もこんな所から出て、家に帰りたい」
「ぐすっ、そう言えば……君、いつから捕まってるの?さっきはいなかったのに」
「俺……?さぁ、わからない。神様にでも聞いて」
両手を上げ首を振る。
何故ここにいるのかは、神のみぞ知るってやつだ。
「でも、俺は絶対諦めない。必ずここから出てみせる」
せっかく転生した人生。
それを他人に縛られるなんて絶対に嫌だ。
童貞を捨てるなら好きな子に捧げたいもの!
「君、強いんだね」
「夢があるんだ。それを叶える為に、こんな所で終わりたくない」
くだらない夢だと思う奴もいるだろうけど、俺にとっては転生した最大の目的だ。
その為にもまずは、この状況から脱する!
「そう言えば、まだ名前聞いてなかった。美少年君、名前は?」
「美しょ?え、と……レ、レイリス。ボクの名前は、レイリス」
「レイリスか。いい名前だね。よろしくレイリス」
「う、うん。君の名前は?」
「あぁ、俺は……」
俺の、名前?
そう言えば、転生したこの姿の俺の名前って何だろう?
これだけ成長してるんだから名前があるはずだけどわからない。
せめて名札ぐらい付けておいて欲しいわ、あの神様め……。
あれ?そもそも、俺の前の名前ってなんだっけ?
「どうしたの?」
言葉に詰まっているとレイリスが不思議そうな目で見てくる。
ええい、もう適当に名乗ってしまえ!
「お、俺の名前は──クロノス!クロでいいよ」
昔どっかで聞いた名前を名乗っておく。
何だったか忘れたけど、仮の名前として名乗っておこう。
「よろしく、クロ」
レイリスが嬉しそうに笑顔を浮かべる。
可愛い顔して笑うな〜チクショウ。
男の俺でも胸がキュンってしたぞ。
あ、俺にそっちの趣味はないぞ。
ないからな。
しかしこれぐらい可愛い顔なら成長してからモテそうだ。
そう言えば、俺は転生したはずだから姿も生前と違うんだろうけど、一体どんな姿をしてるんだろうか。
俺もレイリスみたいに美少年だといいな〜。
「着いたぞガキども」
馬車が止まり声がする。
どうやら目的地は山の麓だったようだ。
朽ち果てながらも、高く聳え立つ立派な塔が俺たちを見下ろしている。
子供たちが塔を見上げていると、リーダー格っぽい坊主で右目に眼帯を付けた傷だらけの男が姿を見せる。
「さぁガキども、さっさと降りな!ここが今日のお前たちのお家だ!」
その声と威圧的な態度が子供たちを震え上がらせる。
隣のレイリスも酷く震えているのに気づき俺は彼の手を握る。
小さく冷たい手から彼の恐怖が伝わってくる気がした。
「言っとくが逃げようなんて思うなよ!悪いことした奴には、このゲイル様がたっぷりと!おしおきしてやるからなぁ!」
ゲイルと名乗った眼帯のハゲが腰に備えた鞭を地面に振るう。
鞭の空を切る音と地面を叩く音が響き渡った。
檻の鍵が開けられ次々と子供たちが降ろされ、俺たちは塔の中に連れていかる。
他の馬車からも降ろされた子供もたちも異種族で、背中に羽や翼が生えた子たちが多くいる。
ざっと見ても三十人ぐらいの子供たちが連れてこられてるようだ。
歩きながら塔を見上げる。
何とも不気味な雰囲気の場所だった。
こうして俺の第二の人生は、ハードモードで始まった。




