抗う弱小企業
「~という訳だ。よろしく頼むよ? 徳島君」
代表が、その日の間に訪れたのは都ツアーコンサルタントの下請け会社。
従業員は十数名、内ツアーガイド等の外回りのメンバーは5人程である
「しかし…我々には大規模なツアーを組む資金がないのは存じていますよね?」
徳島と呼ばれたのは、この下請け会社の部長である。従業員からも信頼はあるものの、近年の不況には勝てないのが実像である
「心配はいらない。これは[国家の重要事態]、移動手段のチケット代やガソリン代にいたるまで、こちらが保障しよう」
「だ・か・ら、君たちは[彼らが満足するようなツアー]を組みたまえ。仮に失敗した場合は………然るべき対処をする、以上だ」
代表が出ていくと、会社内には不穏な空気が流れる
「すまない皆、私が不甲斐ないばかry…」
「異世界の人を案内できるんですね!! ワクワクします!」
部長の謝罪を無視して叫んだのは、やや赤みがかかった黒髪の女従業員 [山口楓] まだ入社2年目だが元アナウンサー志望で声がよくツアーガイドを担当している。
「わ、ワクワク?山口君は怖くないのかね?魔法だよ?」
「はい! だってそういう人達の文化レベルって中世のヨーロッパくらいですから」
「詳しいな」
「だって小説とか漫画とかたくさんあるんですよ?」
社員達の視線が山口に注がれている中、彼女はカバンから本を一冊取り出した
「これなんかも、そうですね。」
挿し絵が可愛らしい小説を一人の男性従業員がパラッとめくる
「しかしだね。どこを案内させるんだね?普通のツアーでは上も納得はしないだろうし…」
「彼らは我々の文化を学び、その知識をアチラで生かしたいのでは?」
「「「源さん!?」」」
従業員達がライトノベルを軽く読んだ男性の名前を呼ぶ。
長崎源 この会社の古参社員でありベテランだ。
「それに食事も随分と質素のようだ。そんな彼らが[侵略]したいと言ってきたんです」
「この世界一安全で優しい、観光大国日本を」
〈それって、かなりすげぇよな!
〈おもてなしの力見せてやりましょ!
〈な、なんかやる気でてきました!
源の言葉に決起される従業員達
「ピンチこそチャンス、か」
「よし、皆! 絶体に満足させようじゃないか?」
部長の提案に一同頷く。まるで魔物を断つ勇者のような姿
しかし、数分後 代表より[明日の昼12時に迎えに行って下さい]との連絡に一同が てんやわんやすることとなる
作者は頑張っている中小企業を影ながら応援してます
次回いよいよツアーが始まります