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2 愛ちゃんの家へ

昼休みの終了を告げるチャイムが鳴り響く。

もう、恐らく授業が始まるのであろう。


しかし俺たち2人は屋上で、誰にも気づかず逃げ出す手段を模索していた。


しかし、俺たちの学校は一般の高校より狭く正門からでる道しかない。

正門を通るためには運動場に出る必要があるので、必然的に体育をしているクラスに遭遇する事になる。


「どうすればいいんだ…」


正門しか逃げ場がない以上、どうする事もできない。


「私に……いい案があるよ。……ついてきて」


愛ちゃんは、不思議と落ち着いた表情で告げる。


……不思議と俺もなんとかなりそうな気になった。


「うん……わかった。」



俺たちは、屋上を出ると愛ちゃんに続いてゆっくりと音を立てないで歩き始めた。


「なんだか……こうしてると愛の逃避行みたいだよね…」


「……うっ...!!そうだね……」


愛ちゃんに、耳元から囁かれたせいで一瞬声をあげそうになったがなんとか堪えた。


しかし……愛ちゃんに自覚はないのかもしれんが、女の子に耳元から囁かれるのは童貞的にはかなりくるものがあるんだよ…


俺たちがゆっくり階段を下りると、ついに正門がある1階まで降りてきた。


ここから、正門を出れば確かに学校は出られるが教師にバレてしまう。


だが、愛ちゃんは正門がある方角と反対向きに歩き始めた。


俺は、廊下をなるべく音を立てて歩いていると愛ちゃんはある部屋で止まった。


「ここだよ……」


その教室は、まるで現代に忘れられた異物の様な違和感を感じた。

こんな教室を、今まで2年間通い続けて俺は、見たことがない。



他の教室とは違い、ドアが木で出来ている。

ドアには至る所に傷がついていて年代を感じさせる。


俺は、試しにドアを引いてみたが鍵がついているのであろうかビクともしなかった。


「ちょっと…離れといて。」


そう言って、愛ちゃんはスカートのポケットから女子高生らしくない物体を取り出した。


…………鉄の、棒?


ただの鉄の棒だと思っていたがよく見れば先端だけ綺麗に曲がっている。


まさか……これって……


愛ちゃんは、一度深く深呼吸をした後、慣れた手つきで鍵がかかったドアノブに鉄の棒を突っ込み動かし始めた。


間違いない、ピッキングだ。


TVや漫画でしか、見たことがない様な光景が今、目の前で繰り広げられている。


俺は、何故愛ちゃんがピッキングなんて出来るのか聞こうとしたが、踏みとどまった。


今ここでその事を聞いたら、愛ちゃんが本当の事を言っても言わなくても今の関係が変わってしまう。


そんな気がしたからだ……


5分ほど、たった頃であろうか。


「じゃあ……あけるよ?」


「…………うん。」


解錠に成功した愛ちゃんは、ゆっくりと扉を開ける。

ギギィ…と、木のドア独特の音が響いて教室が明らかになった。


そこには……何もなかった。


机や、イスどころか棚一つすらない空間。教室と言える最低限の備品すらない。

一歩踏み出すと、木が嫌な音を立て始める。

……このままジャンプでもしたら、間違いなく床の底が抜けてしまうであろう。


「ここから、抜け出す道があるの……」


愛ちゃんが指差した方角には、窓が開いていた。

愛ちゃんは、意を決して窓から飛び降りた。


……少し怖いが、女の子に出来て男に出来ないことはない。


俺も後につづいて、窓から飛び降りた。


「ここは……??」


窓から飛び降りると、そこはまさに知らない場所。学校の近くは一通り散歩してみたことがあるが、この光景は生まれて初めて見る光景だった。


森の様に、木が生い茂っていて道かどうかわからない道が続いている。

学校の近くに森があるなんて聞いたこともない。



愛ちゃんは、草を掻き分けながら道を突き進んでいく。

こんなところで迷子になったら一貫の終わりだ。



俺は、目の前の愛ちゃんだけを頼りに進んでいった。


その道を、10分ほど歩いた頃であろうか。


目の前に光が見えた。恐らくあれが出口であろう。


「……ついたよ。」


愛ちゃんに、続いて道を抜けて光の方へ進むといかにもよくある住宅街に抜けた。


その中でも、一つ周りと比べ物にならない程大きな豪邸が目の前に見える。


「ここが……私の家だよ。ちなみに今は、親はいないから2人っきりだね!」


ふ……2人っきり!!友達の家に遊びに行く事もろくになかった俺が、いきなり彼女の家に遊びに行くなんてハードルをダッシュで駆け上がってる様な気もするが、ここで引きかえしたら据え膳食わぬはなんとやらだ。


それに、ここまで来たらあわよくば一線超えてしまうかも知れないという期待感で胸がはりさけてしまいそうだ。


「よしっ……じゃあ入ろっか。」


「お……おう……」


俺は、自分の身長よりも遥かに高い門から入るのであった。


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